ヘッドホンとともに33年・2007 legend of ATH headphones audio-technica
introduction contents now&future history roots interview 座談会
高井  ちょうどその頃、サマリウムコバルトという強力な磁石がオーディオ製品に使えるようになりました。ヘッドホンステレオで使われていた小型モーターや、高品位小型スピーカーもサマリウムコバルトが実用化されたことによって実現したものです。ソニーさんのウォークマンが登場して以後、ヘッドホンは小型・高音質タイプが主流になってきました。そこでアウトドアでも使い勝手と音質が良く、しかももっと小さなものを作ろうということで、サマリウムコバルトを使ってドライバーユニットを劇的に小型化したATH-0.5、0.3を開発しました。それがポイントシリーズです。
米ノ井  ポイントシリーズでは、スイングアジャストという新しい手法を取り入れました。これほど小さなドライバーユニットを使ったヘッドホンはこの時が初めてだったので、100枚くらい絵を描いてプレゼンテーションをおこない、いったんデザイン方向を決定しました。ところが、決めた1〜2日後にふっとひらめいたのです。ハウジングを回転させれば高さが変わる。それですぐに絵を描き直し、「こっちでいこう」と、再提案しました。

高井  ポイントシリーズのATH-0.3とATH-0.5は両出しコードですが、そのあとのATH-0.4、ATH-0.6は片出しコードです。片出しコードが可能になった背景に、フィルム基板の実用化があります。これによって、コードを使わなくても、反対側のヘッドホンに信号を渡せるようになりました。
米ノ井 時代時代で新しい技術が出てきます。それをいかに早く取り上げてつなげるかが重要です。
高井 ポイントシリーズは多くの会社にOEM供給をさせていただきました。オーディオテクニカはカートリッジではOEMを大々的に展開していましたが、ヘッドホンの本格的なOEM供給はポイントシリーズのATH-0.4、ATH-0.6がスタートでした。これらが、インナーイヤータイプその他のアウトドア向き小型ヘッドホンの技術を育てる出発点にもなったわけです。
小澤  インナーイヤータイプは古くからあり、当社も1980年代からいろいろ発売していたわけですが、音のよい高級機はほとんどなかったと思います。そこに着目してATH-CM7ではチタンを使いました。もともとの理由は金属アレルギーへの対策でした。それに加えて当社は、軽くて丈夫なチタンのイメージでいこうということもありました。チタンは高価な素材なので製品価格は高くなってしまいましたが、好評で非常によく売れました。

米ノ井 ATH-EC7では耳掛けでスイングアジャストというテーマに取り組みました。耳掛けタイプではスイング部が小さいので、そこでいかにいい感じのフリクションができるかで苦労しました。
斉藤  インナーイヤーの仲間にカナル型があります。カナル型はデザインできる要素があまりないのでデザイナーにとっては大変です。何とかオーディオテクニカの独自性を出そうということで、ループサポートを考えました。音質を考えるとユニットを小さくするには限度があります。ATH-CK5で使われているユニットも耳の穴より大きなもので、そのままでは耳の穴に入りません。じゃあ、ずらせばいいかというと、単純にやったのでは音響的にうまくありません。随分と考えているうちに、耳の穴の周りにサポート部を回せばいいということに気付きました。

小澤 あと、ポータブルでは耳かけ式のイヤフィットシリーズがあります。耳かけについて当社は後発でした。それで、テクニカらしいヘッドホンを作らないとだめだよという話が出てきました。ハウジングに金属を使ったらどうかと。

斉藤 ATH-EM7ですね。とにかく薄くしたいので樹脂じゃなく金属、アルミということだったように思います。ねじもきちんと止めて見せるデザインでした。

小澤 当時、耳かけタイプで一番高かったのが3000円くらい。ところがEM7は8000円になってしまいました。

宮田 一気に8000円は圧倒的に高い値段で、本当に売れるのか心配でしたが非常に評判がよく、思ったよりずっと数がでました。これが高級耳かけの始まりで、耳かけであってもそれなりの音質とテイストがあれば買っていただけるという証明になりました。ただし実は、凝りすぎてあまり利益がでなかった商品なのですが。

米ノ井 それが2002年ですか。ポータブルも高級機をという流れがここから始まったのです。  Next→
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