ヘッドホンとともに33年・2007 legend of ATH headphones audio-technica
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宮田 ウッドのWシリーズ1号機、ATH-W10VTGは、小澤さんと私で一緒に開発しました。当時すでに他社のウッド・ヘッドホンがあったのですが、30万円と非常に高価でした。そこで、もう少し手頃なものを作れないかということで、まずATH-911をウイングサポートにしてウッドを貼り付けたモックアップを作りました。

小澤 私は1990年に入社し、6年ほどOEM向けヘッドホンの設計を担当していました。市販製品はATH-W10VTGが初めてでした。
宮田 試作サンプルを販売店に見てもらったところ非常に評判が良かったので、米ノ井さんにデザインをお願いしました。当初は2万円くらいで提案しましたが、リサーチの結果、オーディオテクニカの最高機種にしようということで3万円強になりました。ところが実際にやってみるとそれでも採算が全然あわず、最終的に定価を3.8万円にしました。ウッドの材質は何種類も検討した結果、最終的に飛騨高山産のミズメ桜を使うことにしました。理由は音質的に優れていて、加工しやすく、しかも入手が容易と、すべての条件にマッチしたのが桜だったからです。木工屋さんがたくさんストックを持っていたことも重要な要素でした。木は切ってから半年以上寝かさないと使えません。ゼロから手当てをしたのでは間に合わなかったからです。
製品化を進める際に、木工屋さんから月に50〜60個くらいしか作れないと言われていました。高いものだからそれでいいかなと思っていましたが、蓋をあけてみたら月に1000本近くも売れました。木工屋さんからは話が違うと叱られましたが、何とかお願いして作っていただきました。この製品は雑誌社からも様々な賞をいただきました。この商品の開発では音質でも大変苦労しました。ウッドを使う以外は基本的にATH-A10と同じということで軽く考えていましたが、やってみるとなかなかうまくまとまりませんでした。こまかい内部構造や振動板などいろいろなことを検討して、最終的に低域の豊かなピラミッドバランスだけれど繊細な、満足できるものに仕上げられました。

宮田 限定品ということで、お酒で言えば大吟醸のようなもの。それがATH-W10LTDです。ウッドの材質はミズメ桜からアサダ桜に変更しました。価格は5万円で限定2000台という企画を立てましたが、商品を10月から出荷を始めたところ年内に完売してしまいました。

宮田 ATH-W11JPNでは、日本の伝統工芸の漆を使いました。松下相談役のご自宅にうかがった時に漆の越前塗りのスピーカーがあって、ヘッドホンでも漆を使ってみたらどうかというアドバイス を受けたことがきっかけでした。早速福井の漆塗り業者のもとに飛んでWシリーズのウッドに塗ってもらったところ、非常にいい感じになりました。せっかく漆を使ったのに普通のモデルネームでは面白くありません。そこで漆を辞書で調べるとジャパンとなっていました。これは面白いということで、W11JPN(ジャパン)に決めました。

小澤 そのつぎのATH-W100は、私にとって非常に感慨深い製品です。バックキャビティーを大きくすれば共振周波数が下がって低域が出るというスピーカー理論に則って作りましたが、実際にやってみるとキャビティーを大きくした分だけレベルが低下し、逆に低音が出ない感じになってしまいました。個人的にはむしろ好みの音にまとまったのですが、Wシリーズのコンセプトからちょっと外れてしまったのですね。このことは私にとってヘッドホン作りを考える上でのターニングポイントになって、たとえばその後、大きな部屋と小さな部屋の2つを設けるWチャンバー方式、D.A.D.S構造の考案につながりました。
宮田 創立40周年記念モデルとして最高のものを作ろう、ということで非常に力を入れて開発した製品がATH-W2002です。10万円という価格をまず設定して、それにマッチした内容にするため、考えられるすべてのものを注ぎ込みました。フィニッシュはアサダ桜に漆塗りを施したもので、同じ仕上げのヘッドホンアンプAT-HA2002も発売しましたが、こちらも大変ご好評をいただきました。

小澤 木の魅力とは別に、革には触っていると徐々に馴染んでくるような独特の風合いがあります。そこで革を使った製品も出そうということになりました。どうせ革を使うなら一流の革をということで、英国皇室御用達で当時の英国の高級車のシートにも使われていたコノリー社のものに決めました。さらに革の風合いの良さを引き出すために加工まで英国でしました。それがATH-L3000です。木に革を直接張ってもそれらしい手触りにならないので、あいだにクッション材を入れてあります。
小澤 ATH-W5000では、桜に代えて黒檀を使いました。黒檀を使いたいという構想はウッドを始めた当初からありましたが、当時、黒檀はあまりに硬くて削ることができませんでした。ウッドを商品化して10年目で、ついに黒檀を使った商品を送り出すことができました。  Next→
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