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渡辺香津美さんのフル・アコースティック・ライブで
AT4051とAT4073も、ひときわ輝いた!

—渡辺香津美:“Guitar Renaissance”発売記念特別公演—
2003/5/8 in STB139スイートベイジル(六本木)
ABOUT THE ARTIST


 10代でデビューし、その後30年もの間、日本のギタリストの頂点に立ち続けてきた渡辺香津美さんが、ニューアルバム“Guitar Renaissance”(ギター・ルネッサンス)の発売を記念して、5月8日、東京・六本木のライブハウス「STB139スイートベイジル」でソロ・コンサートを行ないました。渡辺さんは4月にも銀座の王子ホールでほぼ同じスタイルのコンサートを開いていますが、そのチケットがたちまちソールドアウトしてしまったため、ファンの声援に応えて、この日のコンサートが開かれたのでした。
 これに先立ち、渡辺さんは御茶ノ水のテクニカハウス(住所は文京区湯島)をお訪ねになり、アストロスタジオでオーディオテクニカのマイクをお試しになって、今後アコースティックのライブでお使いになるのにふさわしいマイクとして、AT4051aとAT4073aの2本をお選びいただきました。この日のコンサートは、この2本のマイクの“お披露目”でもあったわけです。ちなみに、AT4073aは超指向性のショットガンタイプのマイクですが、サイズはコンパクトで、低音から高音部までかなり広い帯域をカバーしており、客席のざわめきなどの周辺音をカットする必要がある場合に使ってみたいとしてチョイスされたものです。
 さて、あいにく小雨の降る天気でしたが、入念なゲネプロも済み、夕方の8時、いよいよ開演です。このライブの特色は、ゲスト・ミュージシャンが一人もいない渡辺さんの完全なソロ・コンサートであり、しかも、ニューアルバムの“Guitar Renaissance”そのままに、全曲がアコースティック・ギターで演奏されるということです。そのため、全部が演奏に使われたわけではないのですが、ステージの上にはガット弦やスチール弦、さらに12弦のものなど、合計10本のアコースティック・ギターが並べられ、それだけでも壮観で、スイートベイジルのインテリアの落ち着いた雰囲気とも相まって、「ソロ」という言葉から連想されるような物さみしい感じは、まったくありませんでした。


ATW-M73aカスタム


AT4051a、AT4073a

 そうして始まった1曲目は、ビートルズの「ACROSS THE UNIVERS」。これはスチール弦のギターによる演奏ですが、その最初の1音から、音がまろやかで響きが柔らかいことに驚かされます。あくまでもスチール弦らしく、高音部が伸びたサラリとした音なのですが、1音1音の粒立ちがよく、瑞々しくて、ゆっくりと胸にしみ込むように聴こえるのです。音楽の悦びでいっぱいの“KAZUMI WORLD”への導きに、これほどふさわしい曲と演奏はないだろうと思えるような、素敵な出だしでした。
 続く2曲目は、ギターをガットギターに替えて、ジャズ・ピアノの巨匠だったジョン・ルイスがジャズ・ギターの巨人ジャンゴ・ラインハルトに捧げた名曲「DJANGO」と、そのジャンゴの代表曲である「MINOR SWING」のメドレー。これは音に何とも言えない甘さと深みがあり、スリルとガッツに満ちた見事な演奏で、これで、満場のファンの心は早くも“KAZUMI MAGIC”のとりこになってしまったようでした。

 ——この日、これに続いて演奏されたのは、ボサノバの名曲「ワン・ノート・サンバ」、ビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビー」、チック・コリアの名曲「SPAIN」、小休止の後にバッハの「プレリュード」、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」、マイルス・デイヴィスの「MILESTONES」、そして渡辺さんのオリジナル曲「ペーパー・ブルース」や「パッシー・ホーム」などでしたが、渡辺さんの温かな人柄が伝わってくるトークもまじえながら、1曲ごとに、その曲にふさわしい音が出るギターを選んで演奏されたこの日のステージは、「ソロ」とは言うものの、音楽そのものの質や密度という点では、これ以上は望みようがないと思えるほどにゴージャスなものでした。
 ある曲では歯切れよく軽快なリズムが刻まれるかと思えば、他の曲では、光と影が交錯するようなほのかな音の重なり合いの中からくっきりとした様式が浮かび上がってくるようにも聴こえ、夢見るような甘い音色にうっとりさせられたかと思うと、伸びのある低音が心地よく響き、熱いアドリブでブレイクしては、また走り出す——という風で、明るい輝きをたたえたナチュラルな音のニュアンスの豊かさは、実際に自分の耳で聴いてみなければ想像することも難しいだろうとしか思えないものでした。

 この日のステージは、琵琶やシタールを思わせるような12弦ギターの複雑な響きをたっぷりと味わわせてくれた「パッシー・ホーム」でいったん締めくくられましたが、アンコールで同じくオリジナルの「サヨナラ」とジャズのスタンダードナンバー「いつか王子様が」の2曲が演奏され、満場のファンのみなさんの温かい拍手に包まれながら幕を閉じました。
 これまで、渡辺香津美さんといえば、どうしても素晴らしい技巧の持ち主ということだけで話題にされがちでした。しかし、バッハからビートルズまで、多種多様な曲で構成された約2時間のステージをゴマカシが一切きかないアコースティック・ギターだけで演奏し通すということは、単に才能に恵まれているというだけでできるものではありません。——そんな渡辺さんの音楽家としての強い意思と熱いハートをストレートに感じることができたこの日のステージが、大きな賞賛に値するものであったことは疑いないでしょう。そして、オーディオテクニカの2本のマイク、AT4051aとAT4073aも、存分にその役目を果たすことができたといってよさそうです。



*渡辺香津美さんのマイクについてのお考えやご感想は、ご本人へのインタビューをお読みください。

◎渡辺香津美さんへのインタビュー:
“自分の回りの環境を極楽にしておいて、後は、それをそのままお客さんに伝えればいいんじゃないか”

☆今日のライブはニューアルバム“Guitar Renaissance”の発売を記念するものということですが、全曲アコースティック・ギターだけでというアルバムはこれが始めてでいらっしゃいます。こんなスタイルのアルバムを作ってみようとお考えになったのはいつごろからだったのでしょうか。
香津美〔以下、K〕:アコギをフィーチャーしたものは、90年代の半ばぐらいまでいくつか作っていたんですが、それはゲストが入ったりしているので、純粋なソロにはなりづらかったんですね。それで今回ですが、フルアコ*を弾いたりもしていますし、アコースティックだけにこだわらず、とにかく「ひずまさないぞ」ということが一番頭にありましたので、ソロで、一人だけでやるということを考えたわけです。具体的に、どんな曲をやろうとかホールの選定は、去年の春ぐらいからポツポツ考え始めたんですが、その前にも、東京以外のところでソロでライブをやるときにはアコギを弾くチャンスが結構あって、「一人だけのアルバムも出してほしい」というファンの方からのリクエストもありましたので、“節目”というのも変ですけれども、ずっとギターをやってきて、30周年も過ぎて、かなり大きなプロジェクトのアルバムを作ったりもしたので、今度はミニマムでというか、「一人でギターと対話する」ということを集中してやってみようかなと思ったわけです。
*「フル・アコースティック」の略で、いわゆるジャズギターのこと。
 「エレクトリック・アコースティックギター」(=エレアコ)と呼ばれることも多い。

☆ライブでアコースティック・ギターを演奏されるという場合は、音がピュアに伝わるということがとても大事になってくると思います。今回は、テクニカハウスまでお越しいただいてマイクをチョイスしていただいたわけですが、演奏とマイクの接点なり関係についての香津美さんの考えをお聞かせいただますか。

K:そもそも、ライブでアコギなりエレアコのギターを弾くということは、バンドのコンサートの中でも1、2曲はやるとか、かなりコンスタントに続けていたんです。ところが、94、95年ぐらいからソロでコンサートをやることが増えてきて、ホールによってはPAなしで純粋にアコースティックでやるケースもあるわけですが、ジャズのように即興性の強い音楽の場合には、でき上がった曲をそのまま再現するということとは違うので、ある程度PAの力も借りて“今起きていること”を伝えてゆくということがないと、お客さんに非常に届きにくいということがあるんですね。——「おい、何かやってるぞ?」「終わっちゃったぞ!」とかね(笑)。
 それをある程度フォーカスしてあげて、クローズアップして聴かせてあげるには、やっぱり機械の力というのはすごく大きくて……幸いなことにぼくは、レコーディングとか、マイクロフォンを使うチャンスが多くて、いろいろなマイクに出会ってきたわけですが、ライブでの使い具合とか、随分前からいろいろと考えて、たとえばエレアコでも、表に出す音はピックアップからではなくてマイクでとることにしようと、PAの人と話し合って決めたりしていました。
 ただ、自分一人で、自分のPAチームを連れて行くことができないようなときには、いわゆる著名なマイクというのか、ぼくの方から型番を指定して現地で用意してもらうということをやり始めたんですが、これは、モノが来ても「本当かな?」と思うようなことが多くて、あまりうまく行かなかったんですね。たしかにそのメーカーのマイクなんだけれども、「何だか、レコーディングしたときと全然音が違うぞ?」とかね。——それは、メンテナンスの問題だったり、エンジニアの人のクセとかで、どうしても変わってくるんですね。それで、自分たちで最低レベルの音は作って、それを渡すようにした方が、こちらの納得が行くようになるなと考えるようになったんです。

☆最初にオーディオテクニカのマイクをお使いいただいたきっかけはどんなことだったのでしょうか。
K:自分で持ち歩けるようなマイクということで、セッティングのことも考えて、小型のいいマイクはないかと探していたところ、オーディオテクニカにいいのがあると聞いて、最初は全指向性のATM14をしばらく使ってみて、次にギター用のアダプター付きのATM15を試してみたら、データで見ると特性的にはレンジは狭めなんですけれども、実際にライブで使ってみると非常にいい結果が出て、ニューヨークで「ONE for ALL」というアルバムをレコーディングしたときにもガットギターを録るのに持って行ったら、向こうのエンジニアからも「そのちっちゃなマイク、イイな」と言われたりしました。これは99年です。それに、一昨年、新宿のオペラシティでコンサートをやったときに、スカイパーフェクTV用の番組を収録するのにもATM15を使っています。
 ですから、ATM15は気に入っていまして、ずっと使ってきたんですが、ギターを何本も持ち替えて演奏するライブが増えてくると、そのたびにマイクをつけたり外したりするのはちょっと大変だな、ということになってきたわけです。それに、クオリティのしっかりしたマイクをいいポジションにセッティングして使えば、アンビエントの音も含めて、自分が思ったようなニュアンスの音が出やすいんじゃないかなと考えてみたんです。
 それでまたいろいろと試してみると、一般のスタジオ録音用のコンデンサー・マイクですと、ギターの音もよく拾うけれども、どうしてもほかの音も拾ってしまって、「何だろう?」ということになって(笑)、マイクを使いこなすのは思っていた以上に難しいと自覚させられました。——そうして模索しているときに、オーディオテクニカのマイクを試してみてはどうかというお話があって、それであのスタジオにうかがったわけですね。随分いろいろマイクを用意してもらって——。あそこで、何本ぐらい試しましたっけ?

☆7、8種類、お試しいただきましたね。
K:それも、マイクそのものだけじゃなく、まず自分のシステムを通した形で聴いてみたり、完全にコンソールにつないでみたり、それから、ある程度ライブを想定した形と、レコーディングにもそのまま行けるような形とか、いろいろな条件で試させていただいて……どれもよかったんですけれども、あれだけ較べてみると、それぞれのマイクに非常に個性があるんだなということが、面白いぐらいによくわかりました(笑)。

☆今回は、まずライブでお使いいただくということで、しかもステージのスタイルもかなり変化するということでしたので、どうしてもカブリの問題が出てきますから、それを考慮していろいろ試してみていただいた結果、音に押し出し感があってギター独特の音がよく出ているということでAT4051を、また、とくにカブリが出やすいようなときにはAT4073をお使いいただくということで、2本を選んでいただきました。
K:ホールで難しいのは、ほかの楽器の音を拾ってしまうということもありますが、自分のサイドから出てくる音が回って、あまり定位感がなくなってしまうということもあるので、そのへんもクリアできるようなマイクということで選ばせてもらったわけですね。……最初はAT4060でしたか、「これは温かくていいよ!」と思ったんですが(笑)、ライブだとあまり大きなマイクが前にあるのはよくないので、ステージでの見栄えの問題も含めて、AT4051とAT4073を組み合せて使ってみようということに落ち着いたわけですね。

☆最初、エンジニアの方からのお話では、ショックマウントを使わずに細いグースネックの先につけて使えないかというリクエストもあったんですが、マウントをつけた場合とつけない場合ではかなり音色が違ってくるということがわかりましたので、ショックマウントをつけてお使いいただく方がいいだろうことになりました。
K:レコーディング・スタジオでは、「この曲を録るぞ」ということで、3分なり5分の間、息をころして集中して弾いて、それが終わればオフになるわけですが、ステージはオンもオフも含めてずっと続きますので、椅子のノイズとか、意外な音が出てしまうということがあるので、やっぱり、ショックマウントがあった方が弾いていて楽ですね。そうしたリスクも避けられますから。そんなことも含めて、今回はぼくにも随分勉強になりました。

☆こちらこそ、ありがとうございました。
K:それから、今日もソロですが、先日は王子ホールというクラシックのホールで試すこともできましたし、大阪ではピアノとパーカッションとのトリオでやってみて、パーカッションが入らないデュオならば、多少はかぶっても、今のようなセッティングで充分対応できると思いましたし、パーカッションが入ってきた時にはATM15を使って、自分のモニターにも多めに返してやると随分やりやすいということもわかって、いろいろ工夫をするとそれなりの成果が上がってくるんですね。

☆ところで、今日のリハーサルをお聴きしても、アコースティック・ギターを何本もお使いいただくと、1本1本の響きなり音色の違いがよくわかって、とてもリッチだというか、すごく得をしたような気持になりましたが。
K:今日のライブでは、スチール弦のギターが2本、ナイロン弦のギターだけでも3本ありますから、目の前のマイクで音を拾っているということが自分の安心感にもなりますし、会場の鳴りも聴きながら弾いていて、「カブっているかな?」と思ったらちょっと(身体を)引けばいいし、足りないと思ったら近づけばいいんじゃないかと気がついた(笑)、ということもあるんですよ。そのへんは、ボーカリストがマイクをコントロールするのと同じように、ギタリストもマイクをうまく使って、マイクと仲良くなっていけばいいのかな、と。いずれにしても、自分の弾いている演奏を、非常にいい解像度で伝えてくれるということが一番重要で、その点、今回はとても気持のいい状態になれたなと思っています。
 それと、よく思うことで、どうもエンジニアの人たちは音をいじりすぎるんじゃないかということがあるんですが、今回のようにフラットな状態で音をしっかり作ることができて、ギターの音色の差を大事にしたいんだというような場合は、現場でPAの人にマイクを渡して、後はホールの音場に合わせて補正してもらうだけでよくなるので、仕事の流れがシンプルになって、それだけ演奏しやすくなるということもありますね。別に、それほど頑なに、このマイクで音作りをしたから、これ以上いじらないでくれということでもなくて、あくまでも自分の回りの環境を極楽にしておいて、後は、それをそのままお客さんに伝えればいいんじゃないか、というのがぼくの考えなんです(笑)。

☆私たちは“アーティストのみなさんが最大限によさを発揮できるように”ということを目標に製品の開発にも取り組んでいますので、そうおっしゃっていただけると本当にうれしいですね。最後に、今後の見通しなりご要望がありましたらお聞かせください。
K:これまでのマイクとのつき合い方をふり返ってみると、どうも自分の側の思い込みだけでやっていたということもあるでしょうから、そのへんは、ライブをやりながら、違っているところは改めて行きたいということもありますし、とにかく、その日その日はやりながら満足がゆくようにしていって、それでも、会場によってはどうにもならないことが必ず出てくるでしょうから、そのたびに一つずつご相談してグレードアップして行くことができればいいですね。そのためにも、今回は非常によいスタートラインに立てたなと思っています。

☆どうもありがとうございます。


PROFILE

渡辺香津美 Kazumi Watanabe
1953年東京生まれ。少年時代からギター教室に通い始め、高校時代にジャズギタリスト中牟礼貞則氏の教えを受けて一気に才能を開花させ、まだ17歳だった71年に初アルバム「インフィニット」をリリース。79年に坂本龍一・矢野顕子らと伝説のオールスター・バンド「KYLYN」を結成し、YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)のワールドツアーにも参加して、ジャズ=フュージョンの世界のトップギタリストという評価を確実なものにした。その当時から現在まで、ジャズ専門誌「Swing Journal」の国内ジャズメン人気投票でも連続29回、2位以下を大きく引き離してギター部門のトップの座に立っている。ニューヨークをはじめ海外でのライヴ歴も多く、世界のトップミュージシャンたちとの共演も数知れない。97年にはフランスのジャンゴ・ラインハルト・フェスティヴァルに招待され、2002年にはNHKの「アコースティック・ギター入門」の講師も勤めるなど、近年ますます多彩な活動を展開中。この2月に発売された全曲アコースティック・ギターによる最新作「Guitar Renaissance」('03)のほか、「KYLYN」('79)、「MOBO」('83)、「おやつ」('94)、「エスプリ」('96)、「Dandyism」('98)、「ONE for ALL」('99)など多数のアルバムを発表している。〔2003年5月記〕

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