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2007年世界女子カーリング選手権青森大会
ピーター・ウガルター氏(WCTVオーディオ・ミキサー)インタビュー
木村(国際営業部・以下K): 今回、当社ワイヤレスシステム他マイクロホンを多数使用していますが。
ピーター(以下P): 基本的に10本のマルチケーブルがあり、全てのワイヤレスのマイク、エクストラのNHK用ワイヤレスマイクをカバーしています。これらのケーブルで全ての音声を代表していて、日本フィード用の中継用・WCTV用の中継用・CBC(カナダ)の中継用など、全てのワイヤレスの信号は私がいる中継車に一旦入って来て、そこから各中継車に音声信号を供給するのです。またこのワイヤレスのセットの中には、現場から直接日本フィード用の中継車に行くものもあります。
K: これは全てあなたが設計されたのでしょうか?
P: そうです。このシステム設計は全て私が行ないました。また、私がメインの番組をこの中継車でミックスしますが、それとは別に編集用の部屋があり、それぞれのシート(カーリングの競技を行なうシート)にマイクロホンをセットアップしてあります。私は主に中継作業を行なうメインのシートの音声をミックスしていますが、それとは別のシートの効果音用のマイクロホンとワイヤレスマイクの音声もミックスしています。編集用の部屋では、必要なシートの音声がルーターで選べ、エクストラのカメラ映像も選べるので、一度に何本かのTV番組を作業できます。というのも、たとえばデンマークの放送局が、ある試合のハイライトを欲しいという依頼をしてきた場合、その試合のダイジェストを編集することができるのです。私は永年カーリングをやっていますが、こうすることによって権利所有者の問題をクリアにして、同時に行なわれているどの試合に対しても対処が可能なのです。スイスやカナダ、NHK、そしてアメリカのNBCからの依頼に対処しています。例えばNBCは現場には来ていませんが、デジタルベータカムでの収録をリクエストしていて、素材を全てパッケージ用に編集してアメリカで放送する2時間スペシャルなどで放送しようとしています。
K: あなたは普段からCBCのために仕事をしているのですか?
P: カナダにはCBC、CTV、Global TVなどのテレビ局があり、私は主にGlobal TVとの仕事をメインに行なっていますが、フリーランサーとしてWCTVの仕事も行なっています。ここではWCTVのための仕事をしています。さらに、私はメインのカーリング用のミックスをトリノとソルトレークのオリンピックでやりました。
K: それでは、あなたは随分長い間カーリングに関わってこられたのですね。
P: ええ、そうです。
K : 当社のマイクロホンを最初に使い出したのはどのようなきっかけだったのでしょうか?
P: (ドミニカ共和国の)サント・ドミンゴで行なわれたパンアメリカン競技大会(2003年)でデニス・バクスター氏が、メインで使用していた機材と、そしてオリンピックで使用していたマイクロホンがATでしたので彼を通して使うようになりました。私とここにいるもう一人のエンジニアがアテネの開会式で5.1CHのミックスを手掛けましたが、この音声はNHKで放送されました。使われていたマイクロホンが全てオーディオテクニカでした。
K: それが今回、当社のマイクロホンをリクエストされた理由でしょうか?
P: 正直に言うと、私がリクエストしたわけではありません。私は最初にトリノで仕事をするまではATのマイクロホンはあまり使っていませんでしたが、トリノでは40本のマイクロホンを使う必要があり、オーディオテクニカの技術者が来ていて、全てのセットアップをしてくれて、ずっとそばについていてくれましたので非常に助かりました。全てのシートにフルでセットアップされたマイクロホンがあったので、ケーブルのワイヤリングを行なうチーム、中継車で調整を行なうチームなどのオーディオ・エンジニアの集団がシートごとに作業をしていました。それに加えて、オーディオテクニカの技術チームが全てのワイヤレスのセットアップを行ない、面倒を見てくれたので、全く問題がありませんでした。40本のマイクロホンを毎日10-12時間可動させっぱなしで作業をしていましたが、何の問題もありませんでした。これは全く普通では考えられないことで、これほど多くのマイクロホンを使用する場合は決まってチェックしている間に周波数の問題や、予測しないことが起きるのものなのですが、オリンピックは完璧でなければなりません。
K: 多くのマイクロホン、多くの音声信号、多くの周波数などが入り混じっていますからね。
P: その通りです。その時がオーディオテクニカの方々と仕事をした最初でした。全く問題が起きなかったので、非常にオーディオテクニカを気に入りました。そして今回ここに来るということが決まり何を使うかという段階になっておそらくこれがうまくいくのでは、ということでオーディオテクニカを使うことにしたのです。
K: 今回はワイヤレス以外でもマイクロホンをお使いいただいているのでしょうか?
P: そうです。観客の音声を収録するマイクロホンやテレビカメラに付けているマイクロホンなどを使用していますが、大変気に入っています。
K: 当社のマイクロホンで特にお気に入りのものはありますか?
P: (カタログを見ながら)そうですね、全てのモデル名とかラインアップを把握している訳ではないのですが...
K: あなたはスポーツ中継だけでなく、他の仕事もされていると思うのですが。
P: ほとんどがスポーツですね。音楽ものはほとんどやりません。
(日本人スタッフの方が、今回使用しているオーディオテクニカのマイクロホンの写真リストを差し出してくれました)
P: そうです、これらのマイクロホンを今回使っています。
K: “AT4071”をテレビカメラに取り付けてあるのを見ました。
P: そうです。とても満足しています。あと“AT4050”を観客用に使っていて、とてもいい音です。“AT898”を氷の上で使っています。これが私のお気に入りですね。いつも問題が起きるのは、ラベリアマイクはいつもスポンジの中に仕込んでいるのですが、(競技の合間にシートに)水をまくので、スポンジに滲みこんだ水分がマイクロホンに入り込み使い物にならなくなってしまいます。ですが、これらのマイクロホン“AT898”を使っているかぎりそのような問題は起こっていません。
K: この方法はあなたが考え出したものですか?
P: いいえ、特に私が考え出したものではなく、カーリングを担当しているカナダのサウンドエンジニア達が発展させてきたものです。後ほど現場でお見せしますが、スポンジを切ってそこにマイクロホンを仕込みます。ですので、そこにマイクロホンがあることはわかりません。
K: 私もそこにマイクロホンが仕込んであると聞いてはいたのですが、見つけることができませんでした。今回は何本のマイクロホンを使用されているのでしょうか?
P: 全部で12本です。各シートに3本ずつ使っていて、いちばん端に1本、中央に1本、そして反対側の端に1本ずつ使っています。基本的にストーンが滑る時の低音と、ストーン同士がぶつかる音を収録します。基本的には8本のワイヤレスマイクが各選手に装着されているので、それらで収録しきれない音を拾います。試合が終わればみんなマイクロホンをひっぱったり、取り違えたりするのでそういう問題は毎日ありますが。
私達はカナダで20年来カーリングを放送してきましたが、この方法は誰が始めた、というものではありませんね。ショットガンマイクを使えば画面に映りこんでしまうので、ラベリアマイクをスポンジに埋め込んで使えばいいのではないか、ということで使い始めたのでしょう。
P: カーリングというスポーツが放送される上で面白いことは、例えばあなたが好きなスポーツを想像してみてください。カーリングでは、どの選手もマイクロホンを付けているのです。ですので、もしあなたが家でテレビを見ているとすると、次に何をどうするか、サッカーだとボールをどこに蹴ってどこにやるか、といったようなことが全部聞こえるのです。カーリングではその場に入り込んでいるような感じで見ることができるのです。サウンドエンジニアにとってはショットガンマイクで選手たちを追いかけなくてすむため、素晴らしいことなのです。
K: 現場で試合を見るよりも、家で座ってテレビを見ているほうがもっと楽しいのではないかと思いましたね。遠くから試合を観戦してスコアがどうなっているのかを見分けるのは少々難しいものがあります。
P: その通りですね。カーリングというのは、テレビ向けの素晴らしいスポーツなんですよ。例えばチェスの試合を見ているようなもので、戦略を練り、カメラが上からのアングルを映し出し、選手が何をどうするかをしゃべっているのが聞こえるので、とても素晴らしいものなのです。
K: 今回間近でカーリングを観戦するのは初めてだったので、とても興奮しましたが、会場では試合中に選手達が何をしゃべっているのかを聞き取れなかったのが残念でした。
P: テレビでは全ての音が聞き取れます。選手達がマイクロホンを付けているのですから、ほとんどの音はそこから聞こえてきます。音声担当者がずっと選手の後を追いかけているようなものです。これらのラベリアマイクはそれらで聞き取りにくい音を拾うものです。
K: 選手達はマイクロホンを付けているということを意識しているのでしょうか?時々あまり好ましくない言葉を言ってしまうこともあると思うのですが。
P: 確かにそういうこともありますが、それは選手達が気を付けなければならないことです。実際に選手達はマイクロホンを付ける義務はないのです。これは彼らの選択です。マイクロホンを付けない選手もいますし。スキップというポジションはそのチームのボスのような存在で、スキップの選手達はそういったことを意識をしている人が多いのですが、ほとんどの選手はマイクロホンを付けます。
K: 試合前に選手達がワイヤレスの送信機とマイクロホンを取り付けているのを見ましたが、おそらくほとんどの選手がマイクロホンを装着することを選んでいるようでした。
P: 私が気付いた(オーディオテクニカ マイクロホンの)良いポイントで、オリンピックの時と今回、私達が感じていることは、本番中に事故を起こす確立が非常に低いのでオーディオテクニカのシステムを使うことで安心感が高まるということです。競技中にもし周波数などで何か問題が起こったときにそこに行ってマイクロホンを取り換えることはできません。何か問題が起こってしまった時は、第5エンドが終わって休憩に入ったときにしか問題の機材を取り換えることができません。その点オーディオテクニカのマイクロホンは素晴らしい性能です。オーディオテクニカのシステムはヘッドルーム(無歪限界)が大きく、試合中にとても静かになるときと、選手が叫んだりするときの差が大きいので、他のシステムでは歪んでしまいます。その上、電池の寿命も長いので助かります。通常、試合が始まれば3時間から3時間半は続くので安定したシステムが必要なのです。例えば今日の試合でも延長戦になりましたが、そういった時に選手たちが戦略を練ったりして3時間半以上もかかる場合があります。もし電池が切れても選手のところに行って電池を交換することはできませんからね。こういった場合の最後の戦略はとても大事なので、競技中に誰かの電池が切れたとしても交換ができません。私達が一番気にすることはこういったことなのです。電池がどれだけもつか、選手が1分間大声で叫び続けたあとに急に静かになった時の音のバランス、送信機の軽さ、とても軽いですね。もう一つ気に入っているのは液晶表示です。このように沢山のシステムを使用する場合には誰がどの送信機を使っているかを短時間で把握しなければならないので、助かります。テレビに映ってしまうので白いガムテープを送信機に貼り付けて区別することはできません。ですので、液晶表示で誰がどの送信機を付けているかがわかり、それが受信機ではすぐわかるということは重要なことなのです。
一つだけ言うとすれば、送信機に電池のフタを閉めるときの留め具がありますが、実際に使用している送信機を見てもらえば分かると思うのですが、フタが開いて電池が飛び出ないようにテープで留めてあります。通常の用途では選手達は動き回ったり、送信機を激しく動かしたりするので、この留め具が外れてしまうと電池も飛び出してしまいます。
K: 現在私達はその点を改善しようと心がけています。
P: それ以外では全く問題はありません。とても満足しています。
K: 今回の大会において、何かユニークな方法でマイクロホンを使用しているのであれば教えていただけますでしょうか?
P: 先ほどのラベリアマイクをスポンジに埋め込むこと以外は通常の使いかたをしていますね。“AT4050”を観客ノイズ用に使用して、会場は一つの大きなホールのようになっているので、とてもうまく収音できています。またショットガンマイク“AT4071”も気に入っていますね。テレビカメラにぴったりです。
K: 今のところ特に辛口のコメントはありませんが、何か感じていることはありますでしょうか?
P: ワイヤレスは今までとてもいい感じですね。私は特にどのブランドも支持しているわけではありませんが、ゼンハイザーは非常に小さなシステムを作っています。そのサイズゆえにカーリングにおいてポピュラーなタイプのマイクロホンですが、こういったことは昔は問題だったのですが、今のところオーディオテクニカのシステムのサイズと重さで誰も苦情を言ってくる選手はいません。オーディオテクニカの送信機はゼンハイザーよりも少し大きめですが、軽量です。現在のところ大きすぎるから付けるのが嫌だとかいった問題は全くありません。
K: それは今後の製品開発の上での課題となるでしょう。より小さく、より軽く。
P: いえ、実際はとても軽いですね。小さくなるならそのほうが良いでしょう。あとは先ほどのフタの留め具の保持力ですね。付ける方向が逆になればフタが開いて電池が飛び出してしまいます。しかし、これは大きな問題ではなく、マイナーなものです。クオリティーについては非常に安定していて音声も明瞭です。私にとってはこれがワイヤレスなのかワイヤードなのかの区別ができないくらいです。満足していますね。
K: 本日はお話を聞かせていただきありがとうございました。
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