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AIハウスエンジニア 安藤清氏 インタビュー

今回は「バンドなし、歌とDJとトラックのみ」という編成、さらに「デビュー当時からのバラード曲をしっかり聴かせる」ことにも力点を置いたセットリストで臨んだAIの全国ツアー《AI LIVE TOUR 2011「FOR MUSIC FOR LIFE」》。それだけに、AIの使用マイク=「AEW-T4100」のポテンシャルが際立つライブでもあった。チーフエンジニアとして彼女のパワフルな歌を支えるのは、これまで美空ひばりや高橋真梨子など数多くのアーティストの音響を手掛けてきた重鎮・安藤清氏。2005年から続くaudio-technicaとの協力体制を通して、改めて「AEW-T4100」に辿り着いた理由を、安藤氏は以下のように語ってくれた。

— AIさんは当初、同じ「ARTIST ELITE 5000」シリーズの中でも「AEW-T3300」を使用してらっしゃいましたね。

そもそも2005年のサマソニで、イベンターのクリエイティブマンさんから「こういうマイクがある」とご紹介いただいたのが最初ですね。もちろんこちらもテクニカさんのことはよく存じ上げていたのと、まだ彼女がどういうヴォーカル・マイクが必要かということを調整している時期だったんですね。その前に「AEW-T5400」を明治座の杉良太郎さんの公演で使用していましたので、その存在と音色は知ってたんですけど、残りの3つ(3300/4100/6100)は未知数だったんですね。
サマソニの時にはAIさんと一緒にDELIさんが出られていたんですが、ヒップホップのスタイルというのはどうしてもマイクのヘッドを囲んで持つパターンが多いので、大型ヘッドは難しいだろうと。「4100」がどちらかと言えばオーソドックスなマイクの部類に入るんですけど、ヘッドを囲われた時にハイ落ちするのをなんとか回避したいということで、当時発売直前だった「3300」を使用したんですね。もちろんAIさん本人も「3300」をすぐに気に入ったということもありました。

— 現在の「AEW-T4100」に移行したのはいつ頃ですか?

スイッチしたのは昨年(2010年)の夏以降ですね。彼女は彼女なりに、僕と一緒に仕事をする中で、彼女なりにマイクの感覚が養われてきて。昨年11月に武道館公演(『伝説NIGHT』)があったんですけど、そのリハーサルの時に、彼女からポツリと「ちょっとまた、新たなマイクに挑戦したい」という話が出まして。急遽、テクニカさんに「6100」「5400」「4100」「3300」の有線マイクを一度全部ラインナップで揃えていただいたんですけど……僕はいちばん最初に「4100」を渡したんですね。そうしたら「いいじゃん、これ」と、他を試すことなく「4100」に落ち着いたんです。
エンジニアの立場からウォッチするとですね、マイクが変われば確実に歌い方が変わるんですね。美空ひばりさんも、高橋真梨子さんも、みなさんやはりそうなんですね。マイクの持っている指向性が、その人の歌の人生を変えてしまう可能性もあるので。だからこそ、「相談したい」と言われた時に、最初に渡したのが「4100」だったんですね。

個人的にも当時、楽器用として双指向性マイクに非常に興味を持っていろいろポーラパターン(指向性)を追っていたんですけど、その結果、やはり通常の単一指向性マイクじゃないと、表現が乏しくなる可能性があると思ったんですね。直進性の音に対してマイクを近づけて録る場合は、「6100」のようなハイパーカーディオイドが有効なんですけど、歌い手にとってはそれは大事なことではない——ということに、指向性の勉強をしている時にうっすらと気がつき始めて。それでAIさんに、いちばんオーソドックスな「4100」を渡したんですね。もちろん「3300」もオーソドックスな指向性のマイクなんですけど、その時はコンデンサータイプではないもので選びたかったというのがあったので。

— そうしたら一発で決まったわけですね。

そうなんです(笑)。当時、テクニカさんにご相談している時にもお話していたんですけど……歌い手にとって、マイクを選ぶというのはお見合いみたいなもので。最初にバシッと決まれば、それはもう揺れ動くことはないんですけど。やはり時代とともに歌い手自身の感性が変わっていくんで、時代ごとに新たなものを投入しないといけない。でも、その投入を間違えると——木にたとえると、幹の真ん中の太いところ一本で進んでいけばいいんですけど、一度枝に進んでしまうと厄介で、そこからすぐ修正できないんですね。またもう一度、幹に戻ってこなければならない。「選ぶ」ということは、エンジニアが歌い手の将来を決める非常に重要なことなのです。
PA技術が変わっていく過程に追従したのが「3300」だと捉えるとしたら、木の幹の根幹にあたるのが「4100」ですね。マイク作りの王道の芯に近いポジションにあるのが「4100」だと考えていいと思うんですね。長い音楽の歴史の中で、シーンが変わっていこうが、マイク本来の姿を持っているのは「4100」であるがゆえに……EQを浮気心とするのであれば、あまり浮気をしなくても(笑)、歌い手の表現を引き出してくれるのは「4100」であると、僕は思ってるんです。

コンサート写真

— 今回のステージを拝見していても、AIさんの声がとてもパワフルに、かつ耳に自然に飛び込んでくるようなサウンドを見事に構築していらっしゃいましたし、その根底にはやはり、「AEW-T4100」への強い信頼感があったのだろう、ということがリアルに窺えました。

我々も長い経験の中で、SONYの400MHz帯が電波法的に終わった段階で、「ここから先、ワイヤレスマイクの革新はないだろう」とずっと思っていたんですね。リニアの音声信号が、電波を通して何の変化もなく伝達されて、リニアの音声信号として伝えられる——というシステムが、電波法の改正によって難しくなったので、これからはワイヤレスマイクは「仕方なく」使うしかないなと。
オーディオテクニカの「ARTIST ELITE 5000」シリーズは後に出てきたコンパンダー方式ではあるんですが、違和感のないコンパンダー方式で。ただ、リニアとは違うんですね。それで、ハイの落ち具合とか低音の戻り具合を、直接お話ししたりデータを見たりしながら使いこなしてきた経験がありますから。結局、最終的にチョイスしていくと、このダブルコンパンダー方式がちょうどよかった、ということがわかってくるわけですね。「3300」のデータを見ても、有線とワイヤレスとでは若干違う。でも、それは歌い手にとっていい方向になっている、というのが、手に取るようにわかるわけです。そんな中で——「3300」でずっといこうと思っていたところに、AIさんが「違うマイクを試したい」と。じゃあ「4100」を、というわけです。

それでも、高音と低音に若干のクセはあるんですが、それを知っているがゆえに、そんなに大幅にフィルターを入れる必要がない、というのもわかるわけです。電波に置き換えたダブルコンパンダーの低音のオフ加減が頭に入っているので、普通なら80Hz以上のハイパス・フィルターを入れて低音を切るところを、40何Hzで大丈夫だと。これはもう確実に、テクニカさんのデータを信頼しての方式なんです。これが他のメーカーさんの、データの明かされないマイクだと、経験を積み重ねていくしかない。しかも、長引けば長引くほど、新しい機材が入ってきますから、習熟する前に違う機械に移行してしまうと、積み重ねができないんですね。

2005年から、テクニカさんと「3300」「4100」以外にもいろんな積み重ねがあった上に、実際にデータを取っている現場とか工場を拝見させていただいたりとかもしているので。「ここは全部お任せして、データで判断しよう」っていうことができるわけです。「これでもうOKだ」という状態のところに、神が降りてきたような歌い方をする彼女が存在した時に、初めて「これで正解だった」ということがわかるわけです。そうすると、さらにリバーブを減らしたりしていくわけで。その結果、パワフルなものはよりパワフルに、バラードも非常に情緒ある形で聴けるわけです。

— そういう協力体制があるからこそ、あの圧巻のステージが実現できたわけですね。

そうですね。本当に疑いのないデータがあって、マイクを信頼することができれば、オーバーEQもないんです。長い付き合いの中で、テクニカさんの技術の方が最終的に決めたマイクは、最高に自信のあるものだと僕は思っているので。他のマイクよりもポテンシャルは高いし、何よりワイヤレスマイクで言えば電波が途切れたことが1回もない。だからもう、悩む必要は何もなくて。あとはエンジニアを選べばいい、という話になってくるんです(笑)。

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