Artist Elite
interview02
――まずは自己紹介からお願いします。

佐藤正則氏(以下佐藤) ええと、いまは渋谷eggmanのPAエンジニアをメインに、デビュー前からMAN WITH A MISSIONのライヴエンジニアも担当しています。eggmanには11年在籍していまして、その前はフリーランスを5年間、さらにその前は恵比寿にあったGuiltyにお世話になっていました。他には……アナログコンソール派です。コンプなんかのアウトボードもできることならアナログでやりたいですね。もちろんデジタルも使いますが。

――ありがとうございます。どんなバンドのPAをされてきたんですか。

佐藤 小屋オペとしてでなく個人的には、Guiltyで仕事をしている時代に知り合ったCOKEHEAD HIPSTERSが最初ですね。他にもシャカゾンビやBRAHMANとも仕事をしていて、レコーディングにも関わりました。じつは専門学校ではレコーディング専攻なんですよ。でも、実習でその場にしかない音に集中できるPAの面白さを知って転向しました。自分が中高校生の頃に聴いていた音楽がメタルだったりパンクだったりするので、ポップスよりはロック色の強いバンドの方が得意ですね。

――佐藤さんはライヴでたくさんのオーディオテクニカマイクを使っていますが、今回はAE3000とAE5100を中心にお話を伺います。AEシリーズのマイクに出会ったのはいつですか。

佐藤 フリー時代にAT4040は使っていたんですが、他のマイクについてはあまりよく知らなかったんです。それが、数年前に飛び込み営業で「ぜひ一度使ってください」と新製品のAE3000を持ってきてくれて。使ってみたらこれは感触が良いぞ、という感じで使ったのがキッカケですね。

――AE3000は何に使われたんですか。

佐藤 メインはギターアンプですね。それまではよくある定番マイクを使っていたんだけど、それだと面白くないなと思っていた時にちょうどAE3000が来たんです。出会いは偶然でしたが、コンデンサーマイクで、この大きさで、さらに特性もフラットだったので凄く気に入ったんです。定番マイクだと、ギターアンプの音を再現するのにEQする必要があったんですが、あまりギターのマイクにEQを掛けることが好きではないんです。でも、AE3000は立てるだけで、アーティストの音が再現しやすいマイクです。逆に作りこむときもAE3000のほうが、録り音が素直なので調整しやすいんです。

 AE5100に関しては、最初はドラムのトップやハイハットに使ってみたんですが、ちょっと硬いなという印象を持ったんです。それがThe MirrazのライヴでAE3000と一緒にギターアンプに立てたらしっくりきた。その時のギターアンプはMATCHLESSとBadCat、ACE30で、AE3000だけだとヌケが足りないかなと感じていました。彼らが作っているアンプの音はミッド中心のヴィンテージ系アンプの温かいサウンドなので、EQなしでAE5100を組み合わせてみたら当てはまっちゃった。置き方はほぼ教科書通りのユニットの端、コアエンドを狙う感じです。


――AE5100とAE3000のバランスは?

佐藤 The Mirrazに関しては、ギタリストのアンプはAE3000とAE5100の2本立てでAE5100が6割、ヴォーカルのギターはAE3000が6割で使っていました。いまPAしているMAN WITH A MISSIONでは、Jean-Ken Johnnyのギターアンプ*communeにはAE5100だけです。その方がパンチがあるというか、レンジが広い感じに録れますね。MAN WITH A MISSIONのサポートギタリストはRoland JC-120なので、そこにはAE3000だけを立てています。*Marshall社製アンプのcommuneモディファイモデルを使用
――AE3000とAE5100のカプセル自体は同じものを使っているんですが、相当音色が違うと感じていらっしゃるんですね。

佐藤 え、今日まで別だと思っていました(笑)。形が違ったり、他にもいろんな理由があるんでしょうが、音はかなり違います。AE5100の方がソリッドで、AE3000の方が温かい感じです。他の言葉で言うとAE3000はレンジが広くて、AE5100は低音も入っているんだけどややハイ上がりと感じます。まあ、いわゆるペンタイプのコンデンサーマイクに共通する特徴ですね。なので、僕は完全に使い分けています。
 ギターアンプ以外では、eggmanでコンガとボンゴにAE3000をオーバーヘッド気味に2本で録りました。あとはロック色の強くない、例えばアコギと女性ヴォーカル、そこにトイドラムものみたいなものが来た時、オーバーヘッドの位置に立てた2本のAE3000をメインにして、ハット、キック、スネアの3点を足すという使い方もしたことがあります。

――ライヴハウスでAE3000のようなフラットなコンデンサーマイクをドラムのオーバートップに使う場合、いくら単一指向性と言ってもハウリング対策は大変じゃないですか。

佐藤 ステージが狭いので危険ですが、他のマイクに比べたら使い易いですね。カブりも不自然な感じはしないし、指向性についても良いマイクだと思います。AE5100はまだギターアンプにしか使っていない……あ! 前にカホンで使いました。ATM25をメインにして、スナッピーにAE5100を立てました。それも良かったですね。
 マイク選びは、ぜんぶ匂いと言うか……感覚で選んでいます。もう20年、この仕事をやっていても、周波数特性図やポーラパターンは参考にするくらい。特性図は無響室で測定したものなので、楽器や部屋の影響で特性図からイメージした通りの音は出ないんですよ。そこは経験と匂いで自分の出そうとしている音が、どうやったらシンプルに再現できるかを考えて機材は選びます。また、たとえピークを入れたことで歪んでいるとしても、それが良い音だと思えばそっちを選んでいます。そうやって選んだマイクですが、MAN WITH A MISSIONは全てオーディオテクニカのマイクを使っています。キックはATM25、タムとスネアのボトムはATM23です。オーバーヘッドとハイハットはATM450という状況です。ギターアンプは先ほども言ったようにAE3000とAE5100、ヴォーカルはATM98です。
――オーディオテクニカのマイクを使った佐藤さんサウンドが聴ける作品はありますか。

佐藤  MAN WITH A MISSIONの『狼大全集1』『狼大全集2』『狼大全集3』ですね。僕はPA担当なのでDVDのミックスは違う方がしていますが、マイクはオーディオテクニカです。あとはデビュー前のThe Mirrazの映像があるならギターアンプにAE3000とAE5100を使っています。それから「テスラは泣かない。」という若いバンドも、ライヴではギターアンプはAE3000とAE5100です。

――感覚でマイクを選んでいる佐藤さんとして、オーディオテクニカ製品について、率直にどういう意見を持っていますか。

佐藤 日本企業ですし、すごく好きなメーカーなので、もっと頑張ってほしいという意味で率直に言わせてもらいます。ライヴでは使いにくい印象を持っている人がいると思いますね。でも、AE3000や他のマイクを知って「なんだオーディオテクニカ、素直なマイク作るんじゃん」って考えを改めました。しかも、フットワークが良いので、不満を伝えると「これならどうですか?」って相談に乗ってくれる。しかも、彼らの言う通りに解消するんですよ。それで、どんどんオーディオテクニカのマイクが増えました。そういうアフターケアやサポートの良さは、日本のメーカーらしさでしょうね。それに個体差が全く無いほど品質が高いことですね。音質に関しては、人それぞれでしょうが、僕の感覚にピタっとくるマイクを作ってくれるメーカーだとハッキリ言えます。
 あとはデザイン。AE3000なんか、知らない人が見たら高そうじゃないですか。そういう高級感のあるデザインでもあるんですが、実は機能的。ライヴハウスはステージがあまり広くないので、ギターアンプの前に立てるにはAE3000はすごく良いんですよ。
――AE3000とAE5100もコンデンサーマイクロホンですが、ギターアンプにほとんど接触するくらいの距離に置いてトラブルはないですか?

佐藤  全くないですね。僕も心配していたんですが、ベースアンプに使っているところまでありますよ。Jean-Ken Johnnyのcommuneは爆音でユニットが動くのが目で見てわかるくらい。それに毎回AE5100を立てて、ツアー何本も回ってもトラブルはないですね。
 コンデンサーマイクというと丁寧に扱いなさいと習いますが、PAエンジニアはそんなことを言っていられないんです。いつ雨が降るかわからないし、ツアーでいろんな場所に運んでも、オーディオテクニカはトラブルがない。万が一何かあったとしても、フットワークが軽いので、すぐにケアしてくれる。そういう迅速な対応もあるので、安心して使っているところもありますね。MAN WITH A MISSIONのアメリカツアーにも持って行ったんですが、その時、飛行場で投げられたみたいでグリルが凹んでしまいましたが問題なく使えましたし、LAのエージェントの方には音をとても気に入っていただけました。
 もうひとつAE5100のイイところがあって、カプセルと本体が一体になってるんですよ。他のメーカーには、カプセルを変えて指向性が選べるようになっているマイクがありますよね。でも、ライヴでその接合部がトラブルの原因になることがあるんですよ。たった一つ接触部分が減るだけでも、安心感が全然違います。一分一秒が大切なので、耐久性や構造がとても重要なんです。ライヴハウスはマイクをそれほど丁寧に扱えないし、夏フェスの仮設のステージって結構揺れるんですね。その揺れやギターアンプ、キックの爆音でカプセルの接合部が動いたら終わりでしょ。
――AEシリーズはライヴサウンドに向けて設計していますから、その点も考慮された構造になっています。最後に若いエンジニアに向けてメッセージを。

佐藤 ライヴ業界には、スタンダードと言われている製品がいっぱいあります。もちろん、どこでもあるからという意味でスタンダードの音を知ることや使い方を覚えることも大切です。でも、それに囚われてしまうんじゃなくて、いろんなことを試してほしいですね。例えば「キックはこのマイクをここに置く」って自分がたくさん試して生み出したものならいいけれど、他の方法を試しもしないでこうしないとダメだと決めつけないでほしい。もちろん、正解はないので、さらに良い方法を見つけるためにその後も試行錯誤し続けてほしいですね。僕もこの世界で20年間仕事をしていますが、いまでも新しい機材が出たら、デモ機を借りたりして最新機材の音をチェックするように心掛けています。
 学校で習ってきたものは確かに間違いではないしスタンダードだけど、それだけが全てではない。やってはいけないことは、スピーカーを飛ばすこととマイクを壊すこと。ただし、どちらも壊してみないと、どうしたら壊れるかがわからないから、一度は飛ばすことも必要なんですけどね(笑)。ビビッて突っ込めないくらいなら突っ込めと。そこで機材の限界がわかりますから。そうしないと耐久性がどこまであるのかわからないまま、「エンジニアです」というのは違うと思います。もちろん、ケアレスミスで壊すのは話が違います。きちんと理由があって壊れたのならいい……でも、これも環境があるかもしれませんね。
 「歪み」という言葉もイコール「絶対悪」じゃないです。耳で聞いて本当に歪んでいるのかそうじゃないのか。許容範囲であればいいし、それがカッコ良かったりする。とにかく、その場の空気感が一番大切。ライヴは、演者、オーディエンス、そしてエンジニア。何が欠けてもダメで、オーディエンスのノリがすごく良いときもあるし、「今日はすごく良いテンションでやれた」と演者が言ってくれることもある。だから、自分のしたことで100にするんじゃなくて、そこにある空間全体が100になるように常に気を配ってほしいです。

――ライヴハウスにやってくるバンドマンに向けてメッセージはありますか。

佐藤 やっぱりマイクの使い方は知ってほしいですね。確かにライヴビデオを見て、カッコいいと思ったことを自分もやりたいと思う気持ちもわかるけれど、ビジュアルから入ってほしくないですね。例えばヴォーカルマイクのグリルを握って歌うとか(笑)。あれは声量がもの凄くあるプロが、彼のためだけにエンジニアがモニター等をチューニングしていたりするからこそできる。だから、なぜあれができるのか、というエンジニアの苦労もわかってほしいかなぁ。
 後は「○○っていうアーティストが使っているから自分も使う」とかいうけれど、自分と好きなアーティストの声や楽器が違うから、どうやっても同じにならないですよ。音楽が好きになった最初の頃は形から入る気持ちもわかるけれど、ライヴハウスでライヴをしたいと思うようになったら、やっぱり自分の音を探してほしいかな。
 それとエンジニア目線で言うなら、ライヴハウスによって全くPAシステムも違うから、あそこの箱であのマイクが使えても、他では使い辛いということもあります。だから、人が使って良かったという話はあまり当てにならないと僕は思うんですよ。自分で使ってみて、良いと思ってから手にすることです。って、まぁ僕も若いころは全然わかっていなかったですけどね(笑)。
 もうマイクの話から、相当ズレているけど、今は自分の家のDAWで音を作り上げて、そのままライヴで出す人がけっこういます。でも、「いやいや、スピーカーが違うからそのまま出したらヒドいことになるよ」って思いますね。ヘッドフォンじゃわからないことも多い。そこは、もう少し広い視野を持ってほしいですし、僕らも時間があったらアドバイスしますから。

――ありがとうございました。