未来のマイクロホン技術:
イオンマイクロホン
Chapter.1
イオンマイクロホンってなに?
イオンマイクロホンってなに?

マイナスイオンに癒される、なんていいますが、そのイオンは目に見えません。重さも感じませんね。かんたんにいえば、空気と一緒なのにふつうとはちょっと違う状態の気体です。そういう特殊な気体を、音波で直接動かして電気信号に変換することができたら、マイクロホンになります。それは振動板のない究極の高性能マイクロホン。そう、イオンマイクロホンです。振動板がなければその重さもゼロ。振動板の形状や寸法に加え、素材によってかならず発生するひずみや固有音をなくすことができるのです。夢のマイクロホンが実現するといってもよいでしょう。
前人未踏、究極へのチャレンジ

マイクロホンの振動板は、動いたあと元の位置へまた戻るようにバネで支えられ、一定の位置に静止しています。重さに加えてこのバネがあるので動かすのに一定の力が必要です。もしも振動板が存在しなければ振動板を動かす力が要らないことになります。その結果、音波を正確にキャッチできることになるはずです。また、重さとバネをもつ振動板は特定の周波数で共振します。そのためマイクロホンとして動作する周波数範囲が制限されてしまうのです。振動板のないマイクロホンは理想だけれど、実際につくれないものだろうか?そして、本当によい音が得られるだろうか?オーディオテクニカには、長年ずっとそう考えつづけてきた技術者がいました。マイクロホンひと筋の道を歩み、数多い製品開発にたずさわってきた秋野裕です。秋野はつぎのように述懐しています。
秋野:「学生時代からチャレンジしてみたいなぁと夢見てはいたのですが、イオンマイクロホンの先行研究例は今にいたるまで聞いたことがありません。イオンスピーカーなら数多くの実施例があるのにです。つまり、マイクロホンとスピーカーでは取り扱うエネルギーのケタが違うため、誰も成功しなかったのだと思います。私も50歳前までにマイクロホンの開発や設計に関してはひと通りの経験と実績を積みました。そこで、松下社長の承認をいただいてイオンマイクロホンの研究に本腰を入れることにしたのです。大学院で研究することによって世界初を目指しました。」