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歴史的考察「20世紀のマイクロホンスタンドとライブ表現法の変遷」 鷲巣 功
「ザ・マン・アンド・ヒズ・ミュージック」三具保夫 ジャズ批評 1988年10月発行フランク・シナトラ大特集号111ページより引用)
今やマイクロホンは手持ちで使うのが常識になっているが、かつてはどこでもスタンドで立てて置かれていた物だった。1930年代に初めてマイクロホンを使いこなし、クルーン唱法(ささやくような歌い方。この手の歌手をクルーナーと呼ぶ。対極にいるのが怒鳴るような大声のシャウター。クルーナーの活躍はマイクロホン登場以降)を確立させた歌手といわれるビング・クロスビーも、センタースタンドに取り付けられたマイクとの距離を計算して声をコントロールしたのであり、東海林太郎の直立不動唱法もハンドマイクでは成立しなかった。スタンダップ・シンガー(stand-up singer)という言葉は、このような歌い手に相応しい呼び名である。昔は司会者も歌手もマイクはホール備え付けの一本を共同で使っていたから、いつも舞台の中央に存在した。そのスタンドも奈落からせり上がって来る仕組みだったりして、今では考えられない事だらけだ。
そのように固定されていたマイクを最初にスタンドから外したのはフランク・シナトラだ、というのが定説になっている。「昔のことだけれど、マイクをスタンドから外して持ち歩きながら歌えることに気がついた。でも皆やらないネ。エラ・フィッツジェラルドでさえ、マイクスタンドの前で歌っている。これじゃ彼女の顔がお客から見えないよ」*これは 1965年のライフ誌インタビューでの発言だ。彼は1957年の映画「夜の豹」の中で既にハンドマイクで歌っており、1962年の初来日公演でもハンドマイクを使いこなすシナトラの姿があった。「お客に顔を見せなくちゃ」という稀代の芸人魂がマイクをスタンドから外させたようだが、当時まだ手持ち派が少なかった実状も伝わってくる。