40シリーズラインアップ

オーディオテクニカ初のリボンマイク

―― AT4060以降に40シリーズの主力に加わったのが、リボンマイクのAT4080とAT4081ですね。

秋野:そうです。そのリボンマイクに使った振動板が、"ダブル・ウェーブ・ダイアフラム"に発想を得て開発した"マイクロリニア"ダイアフラムです。これも大きい模様と小さい模様と組み合わせ、振動板であるアルミ箔の機械的性質を高めたものです。実は前からリボンマイクは作りたくて、定年前にリボンマイクを作って卒業で良いかなと思っていたら、「さっさと作れ」と言われて(笑)。開発に6年は掛っていますね。

―― 以前、雑誌のインタビューで、リボンマイクは特性が優れているから作ってみたかったとおっしゃっていますね。

秋野:コンデンサーマイクは、機械インピーダンスで振動板を動かないようにしてから、張力を高めたり、バッフルを付けたりしながら駆動力を稼いでF特を平らにしているんです。振動板が動かないから歪みにくいし、広い周波数応答も得られるんですけれど、「音」そのものを捉えるなら音を伝搬する空気と同じように振動板が動くことが一番良いと思うんです。そこを考えていくと、薄い膜が振動板なリボンマイクが一番機械インピーダンスが低い。それで、いつかは作ってみたいなと思っていて、少しずつ準備をしていました。

―― コンデンサーマイクよりも、音に対する追従性がはるかに高いわけですね。

秋野:そうですね。振動板は電気伝導度と質量の関係から一番良いアルミを使っています。厚さ2ミクロン。このアルミ箔を作ってくれるところを探すのも時間が掛りました。今は金箔屋さんに作ってもらっています。このアルミ箔が見つかったことで、リボンマイクを作れる可能性が出てきたんです。そのアルミ箔に我々の方で、2つの模様を付ける"マイクロリニア"の加工をしてマイクに載せています。"マイクロリニア"にしたことで、共振も抑えられましたし機械的強度が増したので、折り目を付ける機械加工やリボンを磁気回路に取り付けるときに横にずれることもなくなり、量産もしやすくなりました。"ダブル・ウェーブ・ダイアフラム"でも経験していたことだったんだけど、思いのほか上手く行きましたね。実はこの辺も自分で作りやすいように作っただけなんだよね(笑)。最初はリボンを磁気回路に付けるだけでも本当に大変だったから、どうやったら簡単に試作が出来るんだろうと考えて作ったんです。


―― もともとリボンマイクは感度が低いですよね。

秋野:ええ。少しでも感度を上げるために、振動板を向かい合わせで2枚付けまして、直列に繋いで2倍発電するようにしています。普通のリボンマイクはマグネットの磁極を絞って磁束密度を上げて、そこにリボンを置くことで感度を稼いでいるんですが、2枚の振動板をマグネットを挟み込むように両端に置きました。そして、振動板部分を基板化して、簡単にネジで付けられるようになっているので、メインテナンス性も高いリボンマイクになっています。

―― AT4080とAT4081は低域特性が違っていますね。

秋野:AT4080は、ユニットに私の好きなバッフルも付いているし、トランスも大きいので低域を伸ばせました。スティック型のAT4081は、ボディのサイズから小さなトランスを入れるしかなかったんですが、楽器に近接して置くマイクなので、あまり低域が膨れていない方がいいかなと思って特性を落とし込んでいます。

―― 今後はどんなマイクを作ろうと考えていますか。

秋野:今は大気圧プラズマを使ったイオンマイクを作っているんですよ。振動板がないマイクで、空気の粒子の動きを直接捉えるマイクなんです。


―― リボンよりもさらに上を行っているんですね。やはりエンジニアとして究極のマイクは振動板のないマイクですか?

秋野:だって痛い目に合っているからね(笑)。振動板を波形にしたり、苦労して苦労して商品にしてきたわけで、こいつさえなければどんなに楽だったか(笑)。マイクの究極はそこにあると思って、学生の時から一度は作ってみたかったんです。今はまだシャーッてノイズが大きいけれど、音を出してF特を発表したのはたぶん私が調べた限りでは初めて。おもしろくないですか? 俺だけか(笑)。

―― そこが秋野さんの究極だと言うのは面白いですね。今後、40シリーズではどんなものを作りたいですか。

秋野:ニーズがあればラインナップの拡充はしますが、もうだいたい求められたものは作りました。あとは、後進の沖田さんが、いま新しいマイクの試作を行なっています。もうかなり良いところまで進んでいますよ。

―― 新しい世代が作った新しいマイクがもうすぐ出てくるんですね。楽しみです。


page top