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「ARTIST ELITE5000シリーズ」の開発背景
製品化プロセスと各製品の特性
実績評価
3.エンジニアインタビュー
「ARTIST ELITE5000シリーズ」ワイヤレス・マイクロン・システム開発手記
オーディオ・テクニカ U.S., Inc.,
ワイヤレス及び回路製品プロダクト・マネージャー
Bob Green

「ARTIST ELITE5000シリーズ」の開発背景

"音質改善"をテーマに掲げたワイヤレス開発

  「オーディオテクニカ」がワイヤレスマイクロンシステムの生産を開始したのは15年以上前に遡ります。当時の市場ニーズおよびワイヤレスマイクに期待されるものは今日のそれとは全く異なるものでした。当時のワイヤレスマイク市場は小さく安定しており、また一般的に1~2本以上のワイヤレス・マイクが同時に使用されることはなかったので、設計回路もVHFの固定周波数を使用した単純なものが主流でした。
 そのような中、「オーディオテクニカ」の技術者と開発チームは「ワイヤレスの音質改善」というテーマに重点的に取り組み始めましたが、すぐに「これはワイヤレスマイクの開発にとって最も困難な領域である」と感じました。15年前という早期段階で、私たちは将来とても重要になるであろうワイヤレスマイクのオーディオ回路の設計と評価についての貴重な経験を得たのです。
 1974年に創業されたアメリカのオフィスは、当初コンシューマー・オーディオの市場に焦点を当てていました。1980年代にプロフェッショナル市場へ参入しましたが、フォノカートリッジやスピーカーの販売など補助的なものでした。そして1993年、アメリカ・オフィスの経営陣は企業経営の援助とともに、私たちの全体的な戦略を変更するという決断に至ったのです。その最初の取り組みとして、同年にスピーカー部門を売却、これによりプロフェッショナル市場におけるワイヤレスシステムの販売体制が強化できるようになり、同時に「40シリーズ」スタジオマイクと、設備音響用マイクである「ユニポイント」の製品開発に力を入れました。
 これら2つの対策は功を奏し、アメリカ・オフィスは、コンシューマー市場での損失を、新しいマイクの売り上げで完全に補うことができました。私たちは18カ月とかからずに会社の方向転換を実現したのです。この短くも大きな過渡期に「オーディオテクニカ」は設備音響とスタジオ用途で最も強いブランド・ネームの1つを築き上げました。この時期の素早い決断と行動は、間もなく訪れる新ワイヤレス時代に向けた正確な舵取りだったと言えるでしょう。

ワイヤレスの魅力を広く知らしめた出来事

 1990年代の中頃から終わりにかけて、ワイヤレスマイク市場が急速に変化し始めました。アメリカ市場におけるワイヤレスの周波数帯域は、マイクとテレビ放送とで共有されることになり、さらにテレビのデジタル放送の開始によって劇的に様変わりしました。その頃「オーディオテクニカ」を始めとするいくつかのメーカーがUHFワイヤレスマイクロンシステムの周波数アジャイル機能を発表しました。この新機能の登場によりライヴツアーに携わるプロデューサーたちは、「ワイヤレスマイクこそ、スターやショーの演者たちの動きを最も解放する方法である」ことを体感したようです。ブロードウェイのミュージカル・シアターも、より一層ワイヤレスマイクに頼るようになっていきました。10~20台のシステムを同時に使用する現場も当たり前のように増えていき、専門家が最大60チャンネルを使用した例も残っています。
 1990年代終わり頃までには、「オーディオテクニカ」の「40シリーズ」がハイ・パフォーマンスなスタジオ・マイクとして、すでにブランド化していたので、ライヴ・ツアー用のマイクとしても非常に好意的な評価を得ていました。ローリング・ストーンズのようなビッグ・ネームも「AT4050」スタジオ・コンデンサー・マイクをギターアンプに使っていました。これらのマイクがライヴ・ステージでも素晴らしいサウンドを提供したとしてもさほど驚くことではありませんが、スタジオ環境での使用を前提に設計されたマイクが、長期に渡るツアーで酷使されても壊れなかったことには本当に驚きました。ツアー音響設計のプロたちはスタジオ・クオリティのマイク・サウンドをライヴにもたらしたメーカーとして、「オーディオテクニカ」に信頼を傾けるようになりました。

複雑化するライヴ制作環境が要求するワイヤレスシステムのさらなる進化

  その後、日本の技術者たちはライヴ・サウンドのヴォーカルマイク用に「AT4033」と「AT4050」のエレメント設計を行なっており、これらの機種も多くの好意的評価を得ました。次のステップは、ヴォーカルマイクの「AT4033」バージョン「AT4054」を「7000シリーズ」UHFワイヤレス・システム用に改造することでした。私たちは1999年に市場テスト用のプロトタイプを作り始め、その結果、当時の市場で1番高価だったワイヤレスシステムよりも広いダイナミックレンジを持ったハイクオリティなコンデンサーワイヤレスシステムが完成したという手応えを感じました。このシステムを使用したほとんどのSRエンジニアたち(ビリー・ジョエル、クリード、エンリケ・イグレシアス、エアロスミス、バックストリート・ボーイズらのエンジニアを含む)からも、このコンデンサー・ユニットの素晴らしい音に関するコメントが寄せられました。
 しかし、「7000シリーズ」のプロトタイプのユニットをいざツアーで使用し始めると、このRFプラットフォームでは悪い電波環境下ならびに多くの電波数を必要とする大きな現場では充分な性能を発揮できないことを実感しました。私たちが最高に良い音のするマイクを作り出したことは確かですが、当時の市場が求めていたのは30台以上をトラブルなく同時に使用できるシステムだったのです。また、ワイヤレスマイクの本数が増えるのに加えて、インイヤー・モニター・システムやデジタル放送(テレビ)の送信機が周波数帯域の混雑に拍車をかけていました。この時点で「7000シリーズ」のRFプラットフォームの限界は明白でした。私たちはこの困難な市場で大規模な競争に打ち勝つために、ライヴ・サウンド・プロダクションで行動を起こさなければなりませんでした。

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