SPORTS FIELD + audio-technica
カーリング(その2)
カーリングはカナダの放送局が担当しており、彼らの指示のもとでワイヤレスシステムが運用されました。さすがにカーリングが盛んなカナダだけあって、放送局のクルーもベテラン揃い。各シート毎にそれぞれ8人の選手とコーチ2人に送信機を着ける担当、受信機のオペレート担当、各シート毎のミキサー担当と完璧な役割分担で効率の良いワイヤレスシステムの運用を実現していました。ワイヤレスシステム自体が問題なく動作することは大前提ですが、こうした運用の技術やノウハウが活かされることで放送が実現するのです。

ミキサー担当者に中継車でのミキシングの様子を見せてもらう機会がありました。ミキサーは4名で、1人が1試合を受け持ち、選手8人それぞれの音声を1人で調整していました。投げる瞬間だけ投げる人のマイクロホンの音量を上げ、ストーンが滑る音を大きくするなど、とても細かい調整を試合の映像を見ながらリアルタイムでこなしていました。当社のワイヤレスシステムについて聞くと、ダイナミックレンジ(小さい音から大きな音まで調整なしで使える性能のこと)が大きく、作戦タイムの小さな話し声や、時には叫び声まで問題なく使えるのでとても助かるとのコメントをいただきました。それを目指して設計されたものですから当然ですが、現場の技術者から直接言っていただけるチャンスは少ないので、うれしくなりました。
受信機設定の試験風景 "AEW-R5200"
シート(競技を行なう氷)の上に つり下げられているカメラ
受信機の本番用設置状況(4組の試合用にそれぞれ8チャンネル)
受信機裏
今回は日本代表チームの試合も含め、全ての試合のサポートを行ないました。試合は朝9時から夜の10時過ぎまで行なわれるため、準備や後かたづけを含めると早朝から深夜までの立ち会いを予選リーグの間毎日繰り返しました。この長時間に及ぶサポートのスケジュールを知ったとき、正直言って大変なことになったと思ったものです。しかし、日本代表の活躍によって私自身も力をもらったような気がしてずいぶん気持ちが楽になりました。

それにしても日本代表チームは大健闘でした。デンマーク戦で敗れたときの悔し涙は見ていて辛いものがありましたが、あの強豪カナダを破ったときの笑顔は素晴らしかったです。カナダのスタッフと一緒に仕事をしていましたが、カナダ戦に勝った後、私が彼らから祝福されました。「さっきの試合、日本は素晴らしかったね」と。自国のチームが負けたのに、そこまで言ってくれるとは。それ程に素晴らしい試合だったと言うことでしょう。

続くスウェーデン戦でも善戦し、惜しくも破れてしまいましたが表情は晴れ晴れとしていました。カナダ戦の勝利から気持ちの切りかえができたのがはっきりわかっていましたのでそれも当然です。その後イギリス、イタリアと連勝し、予選リーグ最終戦まで決勝トーナメント進出に望みを繋げることができたのは素晴らしいことでした。

ワイヤレスシステムは最後まで完全にその役目を果たし、選手達の声をリアルに送り出すことができました。カーリングが日本で大変な話題になっていると言う話を現地の放送関係者から聞き、より一層緊張したのは言うまでもありません。

主にワイヤレスシステムのサポートについてレポートしましたが、過去の大会と同様に多くのワイヤードタイプのマイクロホンも使われました。ジャンプ競技の着地音、高速で滑り降りるボブスレーの通過音、応援席の声援など競技に関するあらゆる音がオーディオテクニカのマイクロホンで収音され、映像と共に緊迫した試合の様子を世界中にお伝えすることができました。 私自身は現地にいる間、実際に日本向けの放送でどのように音声が流れていたのか知る事ができませんでしたが、帰国後録画を見て、改めて当時の感動がよみがえりました。同時に我々に課せられていた責任の大きさを思うと、今だに身が引き締まる思がします。 選手自身に送信機を取り着けるというカーリング競技ならではの手法は、スポーツイベントにおけるワイヤレスシステムの運用の中でも特殊なものだと思います。たくさんのチャンネル、低い気温、長い試合時間など、どれも厳しい条件ばかりでしたが、これらを解決して成功に導けたことは我々開発者にとっては大きな収穫であり、またシステムがそれに対応できる性能を発揮したことは、大きな自信にもつながりました。この経験を今後の製品開発に活かしていきたいと思います。 今回も機材の準備から輸送、現地でのフォローなど内外の多くのスタッフにご協力をいただきました。この場を借りてお礼申し上げます。[report/photo:技術一課 上村文雄]
シート脇の移動用カメラ (作戦タイムの画像など)
通称:Audio Guys(カーリングの音/声を世界に送り出していました)と上村(左前)