ジャズと映画の結びつきは深い。ハリウッドは早い段階からジャズをサウンドトラックに取り入れ、やがてモダン・ジャズが新しい時代を告げる音楽として登場すると、若い監督たちはいち早く劇中に持ち込んだ。映画音楽の作曲家たちもジャズを取り入れて名作を生み出したが、今回はジャズ・ミュージシャンがサウンドトラックを手掛けた映画を中心にセレクト。ミュージシャン、そして、俳優の名演に耳を傾けてほしい。

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邦楽編洋楽編

1. 『サン・ラーのスペース・イズ・プレイス』

唯一無二の音楽性でジャズ・シーンで異彩を放つサン・ラー。思想家としての顔も持つサン・ラーの頭の中を映画化。スペースシップに乗って宇宙を旅するサン・ラーと仲間たちは、地球で苦しい生活を送るブラザーたちを平和な惑星に移住する計画を立てる。ところが、サン・ラーが操る未知のエネルギー(その正体は音楽!)に興味を持ったCIAがサン・ラーをつけ狙う。『サン・ラーのスペース・イズ・プレイス』は、サン・ラーが主演して脚本とサウンドトラックも担当した幻の作品。SF仕立てのドラマには、アフリカ系アメリカ人のルーツは宇宙にある、というサン・ラーの思想=「アフロ・フューチャリズム」が反映されている。全編に渡ってサン・ラーの音楽が鳴り響き、絶頂期のサン・ラー&アーケストラの貴重な演奏シーンも収録。音楽と映像を通じてサン・ラーの世界をたっぷり体験できる。

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『サン・ラーのスペース・イズ・ザ・プレイス』


全国順次公開中!

サン・ラー脚本・音楽・主演
ジョン・コニー監督作品

監督:ジョン・コニー
脚本:ジョシュア・スミス、サン・ラー
製作:ジム・ニューマン
撮影:セス・ヒル、パット・ライリー
音楽:サン・ラー
音:ロバート・グレイヴノア、デヴィッド・マクミラン、アーサー・ロチェスター、ケン・ヘラー
編集:バーバラ・ポクラス、フランク・ナメイ
出演:サン・ラー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・サン・ラー
監視者(オーバーシーヤー)・・・・・・・ ・・・・・・・・・レイ・ジョンソン
ジミー・フェイ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・クリストファー・ブルックス
キャンディ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・バーバラ・デロニー
タニア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・エリカ・レダー
バブルズ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ジョン・ベイリー
バーナード・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・クラレンス・ブリュワー
THE INTERGALACTIC MYTH-SCIENCE SOLAR ARKESTRA
Sun Ra/John Gilmore/Danny Davis/Larry Northington/Kwame Hadi/Ken Moshesh
June Tyson/Marshall Allen/Eloe Omoe/Danny Thompson/Lex Humphries/Tommy Hunter

1974年|アメリカ映画|81分|スタンダードサイズ|モノラル|PG12|北アメリカ恒星系プロダクション作品
原題:SPACE IS THE PLACE(宇宙こそ我が故郷)
キングレコード提供
ビーズインターナショナル配給
© A North American Star System Production / Rapid Eye Movies
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2. 『ブルーに生まれついて』

50年代にトランペット奏者として脚光を浴び、中性的な歌声でシンガーとしても人気があったチェット・ベイカーの晩年をドラマ化。ドラッグまみれの自堕落な生活で、すっかり落ちぶれてしまったベイカー。ドラッグの売人に殴られて歯を折られ、以前のようにトランペットを吹くこともままならない。そんななかで、1人の女性との出会いが彼を変えていく。ベイカーを演じたイーサン・ホークは、スランプを乗り越えられずに自滅していくベイカーの弱さ、そして、どこか憎めない魅力を好演。6ヶ月間、トランペットや歌のトレーニングに打ち込んだそうだが(トランペットの音はトランペット奏者、ケヴィン・ターコットの演奏)、吹き替えなしで歌う“I’ve Never Been In Love Before”は、チェットのモノマネにおわらない味わい深いパフォーマンスが感動を呼ぶ。様々な賞を受賞してカナダのジャズ・シーンで注目を集めるピアニスト、デビッド・ブレイドがサウンドトラックを手掛けた。

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『ブルーに生まれついて』


監督:ロバート・バドロー
製作:ロバート・バドロー、ジェニファー・ジョナス、レナード・ファーリンジャー、ジェイク・シール
音楽:デビッド・ブレイド、トドール・カバコフ、スティーブ・ロンドン
出演:イーサン・ホーク、カルメン・イジョゴ、カラム・キース・レニー
2015年製作/97分/R15+/アメリカ・カナダ・イギリス合作

『ブルーに生まれついて』
デジタル配信中/ブルーレイ&DVD発売中
BD:¥5,170(本体¥4,700)
DVD:¥4,180(本体¥3,800)
発売元・販売元:ポニーキャニオン
(C)2015 BTB Blue Productions Ltd / BTBB Productions SPV Limited. ALL RIGHTS RESERVED

3. 『バード』

ジャズをこよなく愛するクリント・イーストウッド監督が初めて手掛けたジャズ・ムービー。サックス奏者、“バード”ことチャーリー・パーカーは自殺を図って病院に担ぎ込まれる。朦朧としたパーカーの頭をよぎる回想、そして、現在が交差するなかで、“ビ・バップ”というジャズの革命を起こしたバードの波乱に満ちた人生が浮かび上がっていく。バードをフォレスト・ウィテカーが熱演して話題を呼んだが、ジャズ・ファンを驚かせたのはサウンドトラックだ。イーストウッドのアイデアで、バードのレコーディング曲や未発表曲から細心の注意を払ってバードの演奏を抜き出して、ウィテカーの演奏に吹き替えた。それ以外の演奏は現代のジャズ・ミュージシャンたちで、バードとモンティ・アレキサンダーの時を超えた共演も楽しめる。

INFORMATION

『バード』


監督:クリント・イーストウッド
脚本:ジョエル・オリアンスキー
製作総指揮:デビッド・バルデス
音楽:レニー・ニーハウス
出演:フォレスト・ウィテカー、ダイアン・ベノーラ、マイケル・ゼルニカー
© 2010 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved.
『バード』
DVD:1,572円(税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント

4. 『ラウンド・ミッドナイト』

1959年、アメリカからパリに有名なサックス奏者のデイル・ターナーがやって来る。今やデイルは過去の人になりつつあったが、パリのジャズ・ミュージシャンは彼を温かく迎えた。しかし、アルコールに溺れるデイルは、酒が入ると行方をくらませてしまう。デイルの熱烈なファンだった貧しいグラフィック・デザイナー、フランシスはデイルと出会って意気投合。彼を自宅に引き取って献身的に面倒を見ることに。ジャズ・ピアニスト、バド・パウエルの生涯をモデルにした『ラウンド・ミッドナイト』はジャズ愛に満ちている。何しろ、デイルをサックス奏者のデクスター・ゴードンが演じるという驚きのキャスティング。さらにウェイン・ショーター、ロン・カーター、トニー・ウィリアムズなどジャズ・ミュージシャンが多数出演して演奏を披露。サウンドトラックを手掛けたハービー・ハンコックはアカデミー賞作曲賞を受賞した。

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『ラウンド・ミッドナイト』

監督:ベルトラン・タベルニエ
脚本:デビッド・レイフィール、ベルトラン・タベルニエ
製作:アーウィン・ウィンクラー
撮影:ブルーノ・ド・ケイゼル
音楽:ハービー・ハンコック
出演:デクスター・ゴードン、フランソワ・クリュゼ、ガブリエル・アケル
1986年製作/133分/アメリカ

5. 『ラスト・タンゴ・イン・パリ』

パリのアパートの空き部屋で偶然出会った中年男のポールと若い娘のジャンヌ。ポールは衝動的にマリアを襲って自分のものにしてしまう。そして、何事もなかった様に別れた2人は、その日以来、アパートで逢瀬を重ねて激しくお互いを求め合うようになる。『暗殺の森』(1970年)、『ラスト・エンペラー』(1987年)のベルナルド・ベルトリルッチ監督が、名優マーロン・ブランドとデビュー間もないマリア・シュナイダーをキャスティングして男女の性愛を真っ正面から描いて世界に衝撃を与えた問題作。サウンドトラックを手掛けたのはアルゼンチンのサックス奏者、ガトー・バルビエリ。バンドネオンがタンゴのリズムを刻み。ストリングスがドラマティックに高まるなか、バルビエリのエモーショナルなサックスがむせび泣く。

INFORMATION

『ラスト・タンゴ・イン・パリ』

監督:ベルナルド・ベルトルッチ
製作:アルベルト・グリマルディ
脚本:ベルナルド・ベルトルッチ、フランコ・アルカッリ
音楽:ガトー・バルビエリ
出演:マーロン・ブランド、マリア・シュナイダー、マリア・ミキ

1972年製作/129分/R18+/イタリア・フランス合作

6. 『水の中のナイフ』

『ローズマリーの赤ちゃん』(1968年)、『戦場のピアニスト』(2002年)などで知られる巨匠、ロマン・ポランスキー監督が、故郷のポーランドで撮った長編デビュー作。裕福な夫婦が偶然知り合った若者とボートで海に出る。そして、若者がナイフを持っていることがわかった時、3人の関係は少しずつ変化していくことに。海に浮かぶボートという密室を舞台にしたサスペンスフルな人間ドラマに、不穏な空気を生み出すサウンドトラックを手掛けているのは、ポーランドを代表するジャズ・ピアニスト、クシシュトフ・コメダだ。モダン・ジャズをベースに陰りを帯びた美しいメロディーが光る。コメダはイエジー・スコリモフスキ監督の『出発』(1967年)のサウンドトラックも手掛けるなど、60年代に登場したポーランド新世代の監督たちに支持された。

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『水の中のナイフ』


監督:ロマン・ポランスキー
脚本:イエジー・スコリモフスキ、ヤクブ・ゴールドベルク、ロマン・ポランスキー
音楽:クシシュトフ・コメダ
出演:レオン・ニェムチック、ヨランタ・ウメッカ、ジグムント・マラノウッツ

1962年製作/94分/ポーランド
KNIFE IN THE WATER © 1962 Zespol Filmowy “Kamera.”All Rights Reserved.

7. 『死刑台のエレベーター』

ジャズの帝王、マイルス・デイヴィスが初めてサウンドトラックに挑戦した『死刑台のエレベーター」は、ヌーヴェルヴァーグ時代の幕開けを告げた。社長夫人のフロランスと恋に落ちたジュリアンは、フロランスと一緒になるために社長を殺害する完全犯罪を実行。すべては計画通りに行われたが、殺害現場から立ち去ろうとした時、乗り込んだエレベーターに閉じ込められてしまう。監督は本作がデビュー作となった、若干25歳のルイ・マル。ジャズ・ファンだったルイは、フランスにツアーで来ていたマイルスにサウンドトラックを依頼。マイルスは映画を見ながら即興演奏でレコーディングする、という伝説を生み出した。強烈な存在感を放つマイルスのトランペットが、映画を貫くサスペンスフルな緊張感や揺れ動く男女の想いに深みを与えている。

INFORMATION

『死刑台のエレベーター』


監督:ルイ・マル(『恋人たち』『鬼火』)
原作:ノエル・カレフ(『追いつめられて・・・』)
脚色:ルイ・マル、ロジェ・ニミエ
撮影:アンリ・ドカ(『太陽が いっぱい』『15才の夏』)
音楽:マイルス・デイヴィス(『シエスタ』『ディンゴ』)
出演:ジャンヌ・モロー(『エヴァの匂い』『愛すべき女女たち』)、モーリス・ロネ(『太陽がいっぱい』『鬼火』)、ジョルジュ・プージュリー(『禁じられた遊び』『ひと夏の情事』)、ヨリ・ベルタン、リノ・ヴァンチュラ『モンパルナスの灯』『ローマに散る』
(c) 1958 Nouvelles Editions de Films

8. 『アメリカの影』

映画会社に頼らず自分たちで資金を集めて映画を作るインディペンデント映画の先駆者であり、俳優として活動しながら映画を撮り続けたジョン・カサヴェテス。その記念すべき監督デビュー作は、ブルックリンに住む3人兄妹の物語。3人にはアフリカ系アメリカ人の血が流れていて、ナイトクラブで歌っている長男のヒューは肌の色は黒いが、妹のレリアの肌は白く白人のグループと付き合っていた。そして、次男のベンは人種差別に苦しみながら非行の道に走っていく。そんな3人のドラマを、カサヴェテスは即興を重視しながら演出して、役者からリアルな演技を引き出した。サウンドトラックはカサヴェテスが演奏に惚れ込んだジャズ・べーシスト、チャールズ・ミンガスに依頼。ミンガスの骨太な演奏がNYのストリートの空気を醸し出す。のちにミンガスは、この映画のテーマをもとに“Self-Portrait in Three Colors”を作り上げた。

INFORMATION

『アメリカの影』


監督・脚本:ジョン・カサヴェテス
製作・編集:モーリス・マッケンドリー
撮影:エリック・コールマー
美術:ランディ・ライルズ、ボブ・リー
音楽:チャールズ・ミンガス
出演:レリア・ゴルドーニ、ヒュー・ハード、ベン・カルーザス、アンソニー・レイ
©1958 Gena Enterprises.

Worrds:村尾泰郎

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