今、世界的な再注目の最中にあるアナログ・レコード。デジタルで得られない音質や大きなジャケットなどその魅力は様々あるが、裏面にプロデューサーやバックミュージシャン、レーベル名を記した「クレジット」もその1つと言えるだろう。
「クレジット」――それは、レコードショップに並ぶ無数のレコードから自分が求める一枚を選ぶための重要な道標。「Credit5」と題した本連載では、蓄積した知識が偶然の出会いを必然へと変える「クレジット買い」体験について、アーティストやDJ、文化人たちが語っていく。
今回登場するのは、2024年3月に解散したCHAIの双子のフロントマン、マナとカナによるユニット「MANAKANA」。紹介された5枚のレコードを道標に、新しい音楽の旅を始めてみよう。
MANAKANAが考える「アナログ・レコードの魅力」
世の中に溢れる日本の建物、人間、自然とかほとんどが美しく綺麗になっていくなか、音楽もそれに比例するように整って綺麗になっていっとる気がする。でもレコードの音だけは、時代とか関係なしに、「音楽は綺麗な部分だけじゃないんだよ」っていつも教えてくれとる気がするんだ。
ジーって音が入ってたり、ザザザって音が入ってたり、ストリーミングで聴くときはそんな音入ってなかったなって音が入ってたりするのが、驚きとワクワクを与えてくれる。それはいろんな意味をもたらせてくれて、誰かの宝物になったりするよね。それくらいレコードは価値がある物だと思う!いいと思う!
MANAKANAが「クレジット買い」した5枚のアナログ・レコード
Tom Tom Club『Tom Tom Club』

これはすごい、まずジャケがいい! 私たちにとってのアイデンティティといっても過言ではない。初めて洋楽にはまったアーティストでもあるし、人生において刺激的な音楽の体験をしたアーティストでもあった。
ベースボーカルのティナ・ウェイマス(Tina Weymouth)がツインテールでライブしてた姿の映像は、なぜだか完璧じゃない美しさと魅力があった。その姿だけで一瞬で好きになった。ギターのカッティングもキーボードの音色も、歌い方もぜ〜んぶタイプ。
ヒップホップもレゲエのテイストも盛り込まれとる。レコードで聴くとなおさら音がちょっとザラっとしとってさらに良き!
CSS『Cansei De Ser Sexy』

すんげえパンク。ライブで絶対盛り上がるリズムとテンポで、結局ボーカルがもっていくんだろうなって思うくらいかわいくて強い歌。適当に歌ってんだろうなって思うんだけど、ボーカルのラヴフォックス(Lovefoxxx)を知るとその適当に聴こえるような歌もラップも、彼女の人生だからこその表現で、良いほうの「適当」なんだろうなって思う。
ってボーカルに頭もってかれるんやけど、ずっと聴いとると楽曲の良さがどんどん伝わってきて、このバンドやば!え、何!ってなって1日が終わるに。こんなバンド、そうそう現れん。
Carpenters『GOLDEN PRIZE Vol.2』

音楽のお母さん的存在は、いつの時代も変わらずカーペンターズ(Carpenters)だと思う。
兄妹でデュオといえばカーペンターズだよねって言われるくらいの世界的ミュージシャンだよね。誰もが聴いたことのある音楽だし、どこかの地域では小学校の給食の時間に流れる音楽だったりする。それくらい耳馴染みが本当に良くて、優しくて、全てを包み込んでくれる音楽を彼らはこの世界に作りだしてくれた。ありがとう!
今もきっと、これから先も、みんなにとっての心の「お母さん」はカーペンターズだと私たちは思う!
YMO『浮気なぼくら』

YMO(Yellow Magic Orchestra)といえば、「RYDEEN」ば。「RYDEEN」や「TECHNOPOLIS」が有名で、私たちもその曲たちからYMOを知った。そのときに、YMOってインストでテクノをやるクールなバンドなんだな〜って思ってたけど、『浮気なぼくら』を聴いたとき、歌も歌ってるし、ふざけてるし、かわいいし、なんだこの面白い人たちは〜ってワクワクしたんだよね。
私たちは、はっぴいえんどから入って細野晴臣さんがYMOのメンバーって知ってからYMOを聴き始めたから、てっきり、そういう音楽かなって予想したけど、全然違うから、わーーー天才って思った〜。
このアルバム=「君に、胸キュン。」だけど、2曲目の「希望の路」が結構好きで、月9のトレンディドラマの主題歌みたいな雰囲気で、ドラマチックでノスタルジックな曲なんだよね。さいこーーーにすき。憎さあまって可愛さ百倍!!!!!!!!!
HIPPO CAMPUS『BAMBI』

私たちはCHAIというバンドで活動していたときに、前座でアメリカツアーに参加させてもらったバンドの一つがヒッポ・キャンパス(Hippo Campus)。彼らのことはその前から大好きで、特に、このアルバムタイトルでもある「BAMBI」という曲がとにかく好きで好きでたまらんかったんだ〜。
だもんで彼らのアメリカツアーで前座させてもらえるなんて、ミュージシャン人生で自分たちの好きなアーティストと関われることが何よりも嬉しかったから、こんな嬉しいことはないってほど嬉しかったし、最高のツアーになったんだ。
ツアー中、「BAMBI」の歌を一緒に歌えたとき、泣くほど嬉しかった。ロマンチックでノスタルジックで、刺激もあって、優しくて、彼らの人間性が表現されてるこのアルバムが、すごく好き!
MANAKANA
2024年3月に解散したニュー・エキサイト・オンナバンド「CHAI」のマナ(Vo,Key)とカナ(Vo,Gt)による新たなユニット。2025年3月には1stアルバム『十二〜toni〜』を発表。マナは「おもちいず」という名のキャラクタープロジェクトを始動させ、カナはヨガインストラクターとしても活動している。
Edit:Shoichi Yamamoto