大事なレコードがいつの間にか曲がっていた! 歪んでいた! そんな経験はありませんか。 以前の記事でも書いた通り、レコードはデリケートなので保管には気をつけなければいけません。 しかしながら、うっかりやってしまうことがありますし、気をつけていても自然と少し歪んできてしまうこともあるでしょう。 そんな問題を解決すべく生まれたのが「ディスクフラッター」と呼ばれる機器です。 今回は音楽家/録音エンジニア/オーディオ評論家の生形三郎さんが実際に使い、その実力や使用感をレビューします。

個人ユーザーからレコードショップまで

ディスクフラッターとは、ディスクに適切な熱を加えて反りや歪みを直してくれる装置です。 その代表格とも言えるのが、ORBというメーカーが発売している「DFシリーズ」。 効果を調べてみると、ユーザーが実際に反りを直している模様が収録された動画がいくつも出てくるほか、レコードショップなどが実施している「レコードの反り修正サービス」にも使われているようです。

お店が使用してサービスを展開しているぐらいですから、大きな希望が持てますね。 口コミを調べてみると、旧モデルから改良を重ねてきた製品とのことで、最新バージョンでは、歪みの程度にもよるでしょうが、これまでカバー出来なかった反りに対しても、再生に支障のないレベルまで改善されるよう進化を遂げている、とのことです。 筆者はまだ試したことがなかったため、その実力を知るために、思い切って最新モデルの「DF-01iA」をメーカーからお借りして試してみました。

その効果はいかに?

業務用のスキャナーやプレス機のような佇まいで、プロ機然としたかっこいいデザイン

実機はこんな感じです。 業務用のスキャナーやプレス機のような佇まいで、プロ機然としたかっこいいデザインですね。 金属製の筐体で、表面には一眼レフカメラのボディなどにも採用される「シボ加工」がされており、頼もしさの中にも上品さがあります。 メタルの取手もスタジオ機器っぽい存在感があって、個人的にワクワクしてくる見た目です。

性能の良さは前評判から予測できますので、いきなり難しそうな盤から試してみました。 中古通販ショップで購入した盤なのですが、届いた時には歪んでおり返品しようとしましたが、忙しくて結局そのままになってしまったものです。

外周部に大きな歪みがあり、再生するとアームが大きく上下して、低音もゴリゴリとしてかなり危ない感じ

外周部に大きな歪みがあり、再生するとアームが大きく上下して、低音もゴリゴリとしてかなり危ない感じです。 こちらをプレスしてみましょう。 いきなりですが、強力モードの「H:120分」モードで試してみました。 なお、強力モードは希少盤などには使わないで下さいとの説明書きがありましたが、この盤は全然希少ではないので、迷わず強力モードでプレスします(笑)。

なお、加熱処理が終わったあとは、さらに加熱時間と同じだけの冷却時間も必要なようです。 気長に待つこと、合計4時間。

結果がこちら。 写真では分かりづらいと思いますが、歪みが少し修正されました!

写真では分かりづらいと思いますが、歪みが少し修正されました

実際にプレーヤーに載せて再生してみても、問題ないレベルまで修正されています。 これは嬉しいです。 完全に真っ平らとはいきませんが、アームの上下動が減り、低音のゴリゴリが改善されスッキリとした音になりました。 これならば、カートリッジへの負担も許容範囲内だと思います。 盤を捨てずにとっておいて良かったです。 (笑)

完全に真っ平らとはいきませんが、アームの上下動が減り、低音のゴリゴリが改善されスッキリとした音になりました

厚みのある重量盤の反りにも◎

もう一枚試してみます。 先ほどのレコードは、ごくごく一般的な12インチのLPでしたが、こちらは同じく12インチでも、重量盤と呼ばれる、少し重たく厚みのある盤です。 ただ、そこまで反ってはおらず、日常的な使用の中で生じやすい程度の歪みと言えるかもしれません。 こちらは標準の「M:90分」モードで試してみます。

結果、この盤は、もともとの歪みが少ないものだったので見た目ではあまり変わらないようにみえましたが、やはり再生してみるとアームの上下動が減り音の静けさも増しました。

これらの結果からするに、完全にフラットな状態に元通り、とまではいきませんが、「DF-01iA」はまさに歪んだレコードの「救世主」と言える存在でしょう。

特殊なレコード盤には使えないので要注意

注意点としては、対応できないレコードもあるということです。 詳しくはオフィシャルの製品紹介を読んでいただきたいのですが、SP盤やソノシートと呼ばれる盤のような特殊な材質のアナログディスクや、一部の高音質プレス盤と呼ばれるようなものです。 ごく一般的なレコードであればほぼ問題ないと思われますが、特殊な盤には使えないのでご注意ください。

気になるディスクフラッターのお値段は税抜きで¥107,000

気になる本機のお値段は税抜きで¥107,000。 数枚程度のレコードを直すには贅沢な買い物ですが、先ほど書いたようにこの機器を使ってレコードの歪みを直すサービスを行っている業者さんもちらほらあるようなので、レコードの反りに悩んでいる方は、まずはそういったサービスを利用するのも大変有効かと思います。

ちなみに筆者も1台欲しくなってしまい、現在絶賛購入検討中です(笑)。

Words:Saburo Ubukata