オーディオテクニカは、創業63年で初めて製品開発の舞台裏に迫るドキュメンタリー映像を制作した。現在、公式YouTubeチャンネルにて公開中だ。
映像では、ヘッドホン開発に携わるエンジニアの仕事に密着し、製品に込められたこだわりと情熱を描き出している。
エンジニア・塩飽乃野海が語る「音をつくる」ということ
ドキュメンタリーの主人公は、入社以来9年間にわたりヘッドホン開発に携わってきたエンジニア・塩飽乃野海(しわく ののみ)。現在は、オープンバックリファレンスヘッドホン「R」シリーズの開発に携わっている。


オープンバックヘッドホンにおける開発の歴史は、2015年に発売されたオープンバック・リファレンス・ヘッドホン『ATH-R70x』に遡る。このモデルは、オープンバックヘッドホンのトランスデューサー(変換器)設計における画期的な製品として高い評価を得た。
続く2017年には、開放型ヘッドホンのフラッグシップモデル『ATH-ADX5000』で、その設計技術をさらに進化。そして2024年、その技術を受け継ぎ、開放型ヘッドホンならではの純度の高い音体験を、より多くのリスナーに届ける最新モデル『ATH-ADX3000』が誕生した。
こうした系譜の中で、「トゥルー・オープンエアー・オーディオ」という理念を、プロフェッショナルユースにも応えるリファレンスモデルとして開発したのが『ATH-R70xa』だ。前モデルの設計思想を継承しながらもユーザーエクスペリエンスを向上させ、開放型ヘッドホンの可能性をさらに広げた一台となっている。
オーディオテクニカでは、担当エンジニアが試作から完成までのすべての工程に関わる。「R」シリーズは、長年培ってきたトランスデューサー技術を基盤に、開放型構造での空気流動を徹底的に最適化。その結果、自然で解像度の高い音場を実現している。

一つひとつの工程に携わることで、塩飽は自身が手掛けた製品に特別な想いを込めている。現場では、設計から音のチューニングに至るまで、細やかな手作業の積み重ねが続く。その中で、彼女はこう語る。
「自分が手掛けた製品が世界に届けられることに、大きな誇りを感じます。あるイベントでお客様に ”このシリーズ、私が開発にかかわったんです” と伝えた際、涙を流された方がいました。非常に感動的な瞬間でした。」

本作では、音響業界で働くことによる職業的な葛藤や、日本の職場文化も垣間見ることができる。社員食堂での日替わり定食、業務後に訪れるリスニングバーでのひとときなど、塩飽の日常を通じて、製品開発に携わるエンジニアのリアルな姿を描いている。
製品づくりに込められたこだわりと情熱を、映像を通して体感してほしい。
Edit:Tom Tanaka