アナログレコードの良いところは、音と向き合えること。 レコード再生するまでのちょっとした心構えで音楽はより一層味わい深いものになります。 そんなレコードの楽しみ方、癒され方について、オーディオライターの炭山アキラさんが解説します。

「普段はサブスクで音楽を聴いている、という人が多いのではないですか。 私も使っていますが、あれは本当に手間いらずで便利なものですね。 」

音楽と向き合う姿勢を整えましょう

その一方、音楽と向かい合う姿勢というものが問われなくなったな、という気もしています。 いや、それが悪いといっているわけでは決してありません。 何も気にせず音楽へ浸れるサブスクの魅力も、大いに楽しむのが正解だと思います。

それをご了解いただいた上で、提案したい音楽の聴き方があります。 音楽を聴く前に入念な準備を行って、少し音楽とじっくり向き合う姿勢で聴くのです。 もちろんサブスクやCDでも同じことはできますが、こういうある種の “お作法” って、レコードが向いているんですよ。

心構えで音は変わる

まずレコードを収めた棚へ向かい、「今日は何を聴こうかな」と狙いを定めるところが始まりです。 その日の気分にしっくりくる盤を見つけたら、引き抜いてプレーヤーの側へ戻りましょう。

レコードを慎重にジャケットから抜き、プラッターへ載せます。 その際、レコードの埃は少し丹念に払ってあげた方がいいですね。 これも音楽を聴く前に集中力を高めるポイントの一つです。 ついでにカートリッジの針先も磨いた方がいいでしょう。

盤をプラッターへ載せたら、フルオート機ならPLAYボタンを押し、マニュアル機ならご自分で盤面へ針を落とします。 たったこれだけのことですが、音楽へ向き合う姿勢が全然違ってくることがお分かりになると思います。

レコード盤の中心の穴からスピンドルの位置を確認すると載せやすい
レコード盤の中心の穴からスピンドルの位置を確認すると載せやすいですよ。

「へぇ、昔の人はこうやって音楽を聴いていたんだな」という感想になるかもしれません。 でもその時代を経験した者としては、この適度な緊張感がなかなかいい音楽の聴き心地をもたらしてくれたものです。

音楽に向き合うといっても、背筋を伸ばし全神経を集中して音楽と対峙しなきゃいけない、なんてことをいっているのではありません。 そういう聴き方は、私らのような業界人と一部オーディオマニアの人たちに任せておけばいいでしょう。

適度な緊張感を伴い、体へ音楽が入ってきやすくなったなら、たとえ聴き慣れた音楽だったとしても、聴こえ方が少し違ってくるのではないですか。 細部が明瞭になり、よりアーティストが曲へかけた情熱や思い入れが理解できるようになると思います。

そうなったら不思議なもので、聴覚だけでなく味覚や嗅覚、視覚も研ぎ澄まされてきます。 お気に入りのコーヒーや、夕刻以降なら適度なお酒でも一緒に楽しむと、また少し違った美味しさが味わえるかもしれませんし、恋人やパートナーとの会話も楽しくなるんじゃないでしょうか。

スピーカーで、正面から

ところで、もしあなたがBluetooth対応プレーヤーとイヤホンでレコードを聴いているなら、どうです、十分楽しめていますか?

Bluetooth対応機は、片付け物や掃除、台所仕事などのお供にはうってつけだろうと思います。 特にフルオートのプレーヤーが相棒だったら、片面が終わったら針が自動で上がってくれるし、本当に苦労なしですよね。

でも、ソファやヨギボーなどでゆっくりくつろいでいる時、イヤホンやヘッドホンをずっと装着していると、耳穴が痛くなったり耳たぶが圧迫されたりして、何となくくつろげなくなっちゃったりすることはありませんか?

それに、イヤホンは頭の後ろで音楽が展開するものが多いから、何となく違和感があるという人もおいでなのではないかと思います。

そういうあなたは、まずBluetooth対応のスピーカーを買ってみるというのはどうでしょう。 今はパソコンの両枠に置くような小さなものからちょっとビックリするような本格派まで、たくさん発売されています。

スピーカーなら前から音が飛んできますし、何よりパートナーと会話しながら音楽を楽しむことができます。 大好きな音楽のかかったお部屋で友達や恋人とおしゃべりを楽しむ。 いい時間の過ごし方じゃないですか。

ただし、スピーカーは置き方によって音が素晴らしくも全然ダメにもなります。 このあたりは、近いうちに少しじっくり解説しなきゃいけませんね。

Words:Akira Sumiyama