癒しとウェルネスをテーマに、Face Recordsからのおすすめレコードを毎月お届け。 6月のテーマは「Music For Rainy Day 〜雨の日に聴きたい音楽〜」。 雨の日や気圧変化が辛い時に気分を上げる手助けになる音楽をFace Recordsの佐野哲平さんがご紹介します。

「雨の日」と聞いてどんなイメージを受けるだろう。

推測に過ぎないが、かなりの割合で良いイメージを持たれることはない。

低気圧で体調が崩れてしまう方もいるだろう。 また、外出や通勤の際には衣服が濡れ、公共交通機関の乱れに繋がったり、最悪の場合は災害につながってしまうこともある。

毎年この時期になるとこのようなニュースを多く見かけるようになるが、自然災害に対抗するための効果的な方法を見つけることは困難であることが多い。 しかし、雨が降らないと田畑の作物が育たなかったり、雨にも良い点はあるはずである。

雨の日に対して、個人的な対策ができるとすれば「雨の良さに気付いて気分よくすごす」ことであり、音楽はその点に関して手段のひとつになるのではないかと考える。

かなり個人的なピックアップになってしまうと思うが、今回紹介させて頂く音楽を聴いて、少しでも雨の日を楽しんで気分よくすごせる手助けになれば幸いである。

雨の日や気圧変化が辛い日に聴きたい音楽たち

Neil Sedaka / Laughter in the Rain

Neil Sedaka / Laughter in the Rain

タイトルにもある通り、まさに雨を享受しプラスの方向に解釈した素晴らしい一曲。

1974年のビルボードシングル週間1位にも輝いたこちらの楽曲であるが、Neil Sedaka(ニール・セダカ)の演奏力や歌唱力の素晴らしさはもちろんのこと、雨の日を待ち望みたくなるような陽気で愛にあふれたその歌詞にこそ最大の魅力がある。 きっとこの歌詞に心を打たれた人は数え切れないはずだ。

歌詞の中に「There with the beat of the rain on the leaves(木の葉に注ぐ雨音のビート)」という言葉があるが、これは自然の小さな変化過程や面白みに気付けている証であり、成果主義な資本に生き急ぐ現代人にとって「過程を楽しむ」ことを再認識させる一節であろう。

Kevin McCormick & David Horridg / Light Patterns

Kevin McCormick & David Horridg / Light Patterns

本コラムの前置きで「雨の良さに気付いて気分よく過ごす」と申し上げたが、気づきを得るための決まった方法はなく、恐らく個人の感性によって決定づけられるのであろう。

しかし、心の持ち方として「自然体」でいることは、物事を受け止めることに重要な役割を持っていると考えている。 (その人にとっての自然体が個々人で違ってくるという意見もあると思うがここでは、その意見を一旦棚に上げて考えるとする。 )

そんな「自然体」を感じる作品がこちらのKevin McCormick & David Horridg(ケビン・マコーミック&デビッド・ホーリッジ)の「Light Patterns」である。

作品はオーガニックなギターとシンセサイザーの音を主軸に、時折物憂げなフレーズが入ってくるが基本的にはシンプルでミニマルな構成になっている。

2人の経歴としては、1970年頃イギリス・マンチェスターのハローワークで出会い、地元の店でセッションをするような仲であったようで、12年の歳月をかけ家で録音を繰り返し、1982年にこちらの作品を発表した。 しかし、Davidが引越ししたことで2人で制作することがなくなり、個々の活動へと移っていったようである。

決して音楽のエリートではなかった二人が生活を営みながら、仕事の合間を縫ってこの作品を完成させたことは簡単なことでは無かったであろう。 (実際に12年という年月もそれを物語っている。 )

しかし、そこには音楽に対して「自然体」で、かつ愛情を持って向き合っていたことが伺い知れ、現実を「享受」しながらその中で楽しみを見出す素晴らしさを教えてくれるような気がする。

Ian Hawgood / 朝

Ian Hawgood / 朝

時間帯によって聴きたい音楽が変わるという方は少なくないはずだ。

たとえば、目が覚めて間もない時間帯はゆったりとした音楽で、体が起きてきて仕事や活動を行う時間帯になれば徐々にアップテンポな音楽、帰り道や夕飯の支度をするくらいには楽しくなるような音楽を聴いて睡眠前には睡眠導入のようなヒーリング音楽を聴く、などである。

説明は不要かもしれないが、こちらの作品はタイトル通り「朝」に聴くことをお勧めしたい作品である。

Ian Hawgood(イアン・ハウグッド)自身の主催するレーベルHome Normal(ホーム・ノーマル)は、洗練されたアンビエント作品を多数リリースしており、個人的にも新譜が出たら必ずチェックするのだが、こちらの作品はリリースから2年たった今でも朝の通勤時などによく聴く作品の一つである。

また、Brian Eno(ブライアン・イーノ)のアンビエントの定義を正統に受け継いだような静けさと鳥のさえずりやフィールドレコーディングで構成されており、イヤホンやヘッドホンでこの作品を聴きながら雨の中を歩けば、雨の音さえも作品の一部として感じられるような、そんな作品である。

SND / Stdio

SND / Stdio

雨の音を包括的に捉えるとほぼノイズであるが、ミニマルに捉えるとひとつの雨粒が別の物質に打ち付けられたときに発生する音であり、その音自体は実はかなり多様な音色を持っている。 (雨粒が地面に落ちた時、傘に落ちた時、水面に落ちた時などでは発生する音は違ってくるように。 )

クリック・グリッチと呼ばれるジャンルは音の素材をできる限り最小化し、上記で述べたような音の根源的なカラーパレットの存在を提唱しようとしたジャンルなのではないかと個人的に考えている。

SND(エス・エヌ・ディー)もクリック・グリッチ・アーティストの中ではかなり著名なユニットで、特にメンバーのMark Fell(マーク・フェル)は、Raster-Noton(ラスター・ノートン)、Editions Mego(エディションズ・メゴ)、Line(ライン)など世界の名門実験音楽レーベルからリリースを重ねており、彼の作品を聴くたびに音への探求心とイデオロギーを感じる。

こちらの作品は2000年にリリースされた作品であるが、クリック・グリッチの提唱と90年代のダンスミュージックからの影響を思わせてくれる作品の中では頭一つ抜けている印象で、特に4つ打ち的なダンスミュージックのキックドラムから脱却し、変調パターンのキックドラムにアプローチしている部分もクリック・グリッチを追求したからこそのアイディアであり、単に聴いて楽しいだけではなく様々な気付きを与えてくれるのもこの作品の特徴である。

雨が降っている時にこんな頭でっかちな考察は不必要かもしれないが、「ひとつ考えに没頭したり思考を巡らせていたら、いつの間にか雨は止んでいた。 」なんてこともあるかもしれない。

捉え方は人それぞれ

雨の日をどう捉えるかは人それぞれだと思うが、今回はできるだけ「雨の良さに気付いて気分よく過ごす」ことを考えさせられるような視点でピックアップしたつもりである。

また、わたしのように雨の日に対してどうしてもマイナスに考えてしまうのであれば、音楽だけでなく読書や映画鑑賞、その他の方法で別の物事に意識を逸らしてみるのもひとつの手かもしれない。

いずれにせよ天候も音楽の捉え方も人それぞれなので、自分が捉えた物事や事象を「自然体」で享受していける感性を磨くことが重要であると考える。

Face Records

Face Records

1994年に横浜でメールオーダーのお店として始まり、1996年に渋谷区宇田川町に第1号店を開店した。中古盤中心のアナログレコード専門店。ヨーロッパやアメリカで買い付けたレコードと日本国内で集めたレコードを中心にセレクトしている。現在は東京都内に3店舗、札幌、名古屋に各1店舗、ニューヨークに1店舗を展開。廃棄レコードゼロを目指した買取サービスも行っている。

HP

Words: Teppei Sano