レコードをいい音で聴くために重要なこと、それはレコード盤をきれいな状態に保つこと。 前回のオーディオライターのレコード講座では、レコード再生前のクリーニングを日常的に行っていてもクリーニング液とクロスを用いたお手入れはしっかり行う必要があるということをご紹介しました。 そこでふと疑問に思ったのが、<どのくらいの頻度で行えばいいのか?>ということ。 その目安について、オーディオライターの炭山アキラさんにアドバイスをいただきました。

お手入れの方法についてはこちらの記事でご紹介しています:レコードをいい音で聴くためのお手入れ 〜オーディオライターのレコード講座〜

中古盤は、購入したらまずクリーニング

まず、店内にクリーニング・マシンを設置しているような高級店を除いて、中古レコードを購入したら、針を落とす前に必ずクリーニングしてあげましょう。 見た目ピカピカでも、油やヤニが付着したレコードは判別が難しいものですからね。

昔、英国盤ということでちょっと割高でしたが、Pink Floyd(ピンク・フロイド)の名盤『The Dark Side of the Moon』を中古レコード店で購入しました。 帰宅して、ワクワクしながら針を落としたら、片面の半分も行かないうちに音が濁り、音楽が正体不明になってしまいます。 一体何が起こったんだと調べたら、針先が茶色い粘液でべっとりと汚れているじゃないですか。

Pink Floyd『The Dark Side of the Moon』
Pink Floyd『The Dark Side of the Moon』

この盤は、よほど重症のヘビー・スモーカーが所有していたか、あるいは喫煙可の喫茶店ででも使われていたのでしょう。 見た目は埃もついておらず、きれいに見える盤面でしたが、とんだ食わせ物でした。

慌てて針先と盤面を徹底的にクリーニングしたら、もちろんかけても針先が汚れることはなくなり、音楽が生き生き活発に部屋中を飛び交うようになって感激しました。 盤面の汚れがレコードと再生する音質にどれほどの悪影響を与えるのか、私が痛感した最初の出来事です。

新品も、購入したらクリーニングするのがおすすめ

また、新品のレコードもクリーニング液とクロスで磨いてやると、明白に音質が向上します。 この理由は、実をいうとよく分かっていません。 ある人は「レコードをプレスする際、スタンパーからはがれやすくするために『離型剤』と呼ばれる薬剤を表面に付着させていて、それが音質を悪くしているんだ」とおっしゃいますが、老舗プレス工場の東洋化成に話を聞いたら「弊社ではそういう薬剤は使っていません」ということでした。

というわけで、新品レコードを磨いて音質が向上する理由は謎なのですが、現象として音質向上することは何度となく体験していますから、確かなことといってもよいでしょう。

新品も、購入したらクリーニングするのがおすすめ

お手入れの頻度は、自分のライフスタイルに合わせて

それでは、一度液とクロスでクリーニングしたレコードは、次にいつ頃磨き直せばよいでしょうか。 これはレコードの再生環境によって大きな違いがありますので、一概にはいえません。

例えば、炒め物や揚げ物調理をよくなさるご家庭で、LDKにオーディオ装置が置かれている場合は、空中に浮遊する油分が多いことが想像されますから、比較的こまめに磨かれることを薦めます。

ましてレコードを聴きながら紫煙をくゆらせる方の場合は、煙草のヤニがどんどん盤面へ付着しているものとお考えにならなくてはいけません。 私個人は喫煙そのものを排斥する者ではありませんが、喫煙者のレコードファンやオーディオマニアは、より一層レコードとオーディオ機器の接点をクリーニングされることを強く薦めます。

私自身は、油やヤニの比較的飛びにくいリスニングルームでレコードを聴いていますから、それほど短期間に磨き直すことはありませんが、それでも日常的に持ち歩き、試聴に使っているレコードは、20~30回かけるごとに1回くらいのインターバルで磨き直しています。 それくらいの回数では、実際はそれほど音が劣化したようには感じないのですが、まぁ仕事の道具ですから万全を期して、といったところです。

というような次第で、甚だ曖昧な基準しか提示できませんでしたが、少なくともレコードは「音が悪くなったから磨く」というよりは、少し早めに手当てしてあげてほしいものです。 正しい手順で行う限り、クリーニングはやりすぎて盤面を傷めることはありませんからね。

Words:Akira Sumiyama