ヘッドホン、イヤホンやレコードプレーヤーなど、オーディオ機器から音が出ない……そんなとき、修理に出す前に自分で確認できるチェックポイントがあります。本記事では、オーディオライターの炭山アキラさんが、よくある原因とその見極め方を具体的に解説。初心者からベテランまで役立つ、トラブル対処の基本を紹介します。

“音が出ない”トラブル、原因は本当に故障?

スマホとイヤホンを音楽再生のために必要な最小限のシステムとすると、そこにヘッドホンアンプが加わったり、ネットワークプレーヤーやCDプレーヤー、さらにレコードプレーヤーを追加していろいろな音源が聴けるようになったり、プリメインアンプとスピーカーにして家族と一緒に音楽を楽しめるようにしたり……。システムが複雑になっていくと、それだけ「音が出ない!」という緊急事態も、その確率が増えていくものです。

しかし、それらの多くは修理に出さなければならないほどの故障ではありません。確認事項がいろいろありますから、一つずつ追っていきましょう。

ヘッドホン、イヤホンのトラブル

ヘッドホン、イヤホンのトラブル

まず最小単位で、スマホへイヤホンを挿しても音楽が鳴らなくなったら、というか、これはどれほどシステムが複雑になっても、いや、なればなっただけ注意しなければならない項目ですが、プラグがジャックにしっかりと挿さっているかどうかをまず確認しましょう。しっかり挿したつもりでも、ちゃんと奥まで入っていないことがあるものです。

ヘッドホンやイヤホンの一般的なアンバランス端子、特にステレオミニタイプで接続が不完全だと、稀にボーカルと低音が全然聴こえず、不完全で不自然な伴奏のみが聴こえてくることがあります。もしそうなってしまったら、一度プラグを引き抜いて再びしっかりと挿し直すことを薦めます。

また、昨今はリケーブル可能なヘッドホンやイヤホンも増えましたから、どちらか片チャンネル、あるいは稀に両方の音が出なくなったら、そちらの端子もしっかり挿さっているか確認して下さい。

例えばスマホがDAPに変わる、またポタアンが加わるなどしても、確認項目は変わりません。もちろん、ポータブル機器は充電が不足していないか、確かめておく必要がありますけれどね。

Bluetoothでワイヤレス接続しているヘッドホンやイヤホンから音が出なくなったら、大半の場合でスマホやDAPを再起動すると問題なくつながります。再起動してもつながらなかったら、スマホのBluetoothがONになっているかどうかを調べ、それでも問題が解決しないようならイニシャライズ(初期化)を試してみましょう。

据え置き型のヘッドホンアンプと有線ヘッドホン・イヤホンで音楽を楽しむ場合は、スピーカーを使う場合とそれほど確認項目は変わりません。もしあなたの装置から音が出なくなったら、まず最初に電源がコンセントに、あるいは機器側にしっかり接続されているか確認しましょう。まさかとお思いになるかもしれませんが、意外と多い事例なのです。特に昨今はACアダプターを使用した機器が増え、電源が内蔵された機器でも電源ケーブルが抜き差し可能になったものが多くなりましたから、昔よりも事故の確率は大幅に増しています。

レコードプレーヤーのトラブル

レコードプレーヤーの音が片側、あるいは両方とも出なくなった。また左右で音量が全然違う。こういう場合に一番疑わねばならないのは、ヘッドシェルとトーンアームを結ぶコネクター部分です。簡易的には、デニムや裏革などでヘッドシェル側の4つの端子を磨いてやると、大半の問題は解決しますが、無水アルコールや市販の接点復活剤と綿棒で、アームの接点までしっかり磨いてやるのが正解です。

レコードプレーヤーのトラブル

特にレコードプレーヤーは音楽信号が微弱ですから、接点の汚れが音に大きく響きます。フォノケーブルも含め、こまめに掃除してあげましょう。

また、レコード再生では「音が飛ぶ」というタイプのトラブルもあります。しばらく聴いていなかったレコードを久しぶりにかけたら、あるいは中古レコードを買ってきたら、音が飛んで先に進まない、あるいは1周先に飛んでしまう。こんな時には、まず丹念にレコードを掃除しましょう。頑固な汚れが音溝にこびりつき、針先の進行を妨げている場合は、それで問題なく針が通るようになります。

一方、盤面の傷で音が飛ぶ場合は、1周前に戻るようならインサイドフォース・キャンセラーの値を適正より小さく、先へ飛ぶなら大きく設定すると、ある程度の確率で針が上手く通るようになります。傷で針の通らなくなった盤は、顕微鏡で音溝を見ながら自分で修正するという人もいますが、これは超上級者向けの対策というしかありませんね。

ネットワークプレーヤーやディスクプレーヤーなど、最近のデジタルオーディオ機器は「音楽再生に特化したコンピューター」という構成で、音が出なくなった時はとりあえず再起動、というのが一般的な道筋です。お恥ずかしい話ですが、私もその基本が分かっていなくて、音が出なくなったネットワークプレーヤーを修理に出したら、「異常なし」で戻ってきたことがあります。「音が出なくなったら、まず再起動してみて下さい」と案内があったので、それ以来再起動を励行していますが、それで問題が起こったことは今のところありません。

また、愛用のBDプレーヤーはディスクトレイが出てこなくなり、メーカーの修理窓口へ連絡したら「電源ケーブルをコンセントから抜いて、2~3分たったら挿し直してみて下さい」とのこと。それでトレイはとりあえず出てくるようになり、それから何年も問題なく使えています。ネットワーク機器のルーターなんかと同じ対応だな、と驚いたものでした。

トラブル発生箇所の特定方法

トラブル発生箇所の特定方法

わが家のように、セパレートアンプで1台のプリアンプから2系統のパワーアンプとスピーカーを鳴らしているようなシステムは、セレクターを音が出るように整えるだけでも大変です。ソース機器のセレクター、プリアンプの出力系統、パワーアンプの入力系統、それらをすべてきっちりそろえないと、全く音が出ないなんてまだいい方で、4ウェイのマルチアンプ・システムなど、どこか1系統の音が出なくてトラブルシュートに往生する、ということが珍しくありません。複雑なシステムも、考えものですね。

いろいろチェックして、なお音が片方出ないという場合は、以下の方法で問題が発生した個所を特定することができます。レコードプレーヤーでの再生時を一例として、解説しましょう。

まず、フォノケーブルを左右逆につないでみます。それで音の出る方が左右逆転したら、プレーヤー側に問題があることになります。最近のプレーヤーは、機器側もRCAプラグでフォノケーブルが接続できるようになっているものが多くなりました。もしあなたがお使いのプレーヤーがそうであるなら、プレーヤー側とアンプ側の両端を左右逆につないでみて下さい。それで音の出る方が逆になったら、フォノケーブルのトラブルという線が濃厚です。念のため接点をしっかりと磨き、それでも症状が好転しないならフォノケーブルを交換しましょう。

フォノケーブルを左右逆転させても症状が変化しないなら、それより上流で問題が発生しています。あなたのプレーヤーがヘッドシェルを着脱できるタイプなら、前述したように外して接点を磨きましょう。

それで解決しないなら、シェルリード線かカートリッジ本体のトラブルという線が濃厚です。シェルリード線を左右逆につないでみることで、カートリッジとシェルリードのどちらに問題があるのか診断できますが、とても繊細な箇所なので、できたらプレーヤー周りの作業を得意とする販売店や修理技術者に任せたいところです。ご自分でなさるなら、くれぐれも自己責任でお願いします。

もしあなたが「テスター」をお持ちなら、抵抗値を測るモードに合わせてシェルリード1本ずつの両端にプローブ(探針)を当ててやると、導通の有無が分かります。もちろんシェルリードだけではなく、他のケーブル類にも同じように使えます。

テスターというととてもマニアックなもののように聞こえるかもしれませんが、簡易なものなら5,000円もせずに購入できますから、こういうトラブルが起こった時のために、1台用意しておいて損はないのではないですか。

「テスター」をお持ちなら、抵抗値を測るモードに合わせてシェルリード1本ずつの両端にプローブ(探針)を当ててやると、導通の有無が分かります

さて、フォノケーブルの片側を左右つなぎ替えても音の出る方が変わらなかったら、問題はアンプ以降ということになります。お使いのアンプがプリメインだとすると、スピーカーケーブルの片端を左右入れ替えてみて下さい。それで音が鳴る方が逆転したら、問題はアンプかスピーカーケーブルということになります。試しにスピーカーケーブルの両端を左右逆につないでみて下さい。それで音の出る方が逆になったら、ケーブルの問題です。同じように接点を磨いてみて、なおダメなら新しいケーブルに交換しましょう。

スピーカーケーブルの片端を左右入れ替えたら音の出る方が変わり、両端を替えると元通りになったとしたら、アンプに障害が発生しているとみて間違いありません。念のため、レコードプレーヤー以外のソース機器から音を出して、それでも片方の音が出ないかを確かめておきましょう。それで両方とも音が出たら、おそらくはアンプ内のフォノイコライザーか入力端子に問題が発生しています。

レコードプレーヤー以外のソース機器から音を出しても、やはり片方音が出なければ、プリアンプのLINE段かパワーアンプに問題が生じていると考えるべきですね。どちらにしろ、速やかな修理が必要な案件です。

慌てて修理に出す前に、できることを確認しよう

こうやって問題を切り分けておくと、修理へ出す際に「PHONO入力のみ音が片方出ない」、あるいは「どのソース機器から音を出しても片方音が出ない」と、具体的な症状を伝えることが可能になりますから、励行をお薦めするものです。

オーディオ機器も長く使っていると、何かしら問題が発生するものです。具体的にどこがおかしいのか、それは接点掃除など自分で養生できるものなのかをしっかりと見定め、手に負えなくなったら適切な症状を申告して修理に出す。これが愛用のオーディオ機器と長く付き合い、修理費用・期間を抑えるための有効な方法につながります。ぜひ記憶しておいてほしいと思います。

Words:Akira Sumiyama

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