お気に入りのヘッドホンが少しずつ増えていくのは、オーディオを愛する者にとって大きな喜びのひとつです。しかし、その数が増えるにつれて、置き場所や保管方法に頭を悩ませることはありませんか?
棚にそのままヘッドホンを置くと埃が気になりますし、かといって購入時の箱にいちいち戻すのは少し面倒……。また、イベントや旅行へ持ち出す際も、大切なヘッドホンがバッグの中で他の荷物とぶつかって傷つかないか、つい心配になります。
そんな、「大切なヘッドホンだからこそ、美しく、そして安全に扱いたい」と願うすべての方の想いに応える、新しい選択肢がオーディオテクニカから登場しました。機能性と美しい佇まいを両立したヘッドホンハードケース『AT-HPC3』です。
これは単なる「箱」という言葉では片付けられない、あなたのヘッドホンライフをより豊かなものにしてくれる、新しいパートナーになるかもしれません。
スクエアなフォルムに宿る、静かな機能美
AT-HPC3は、シルバーで統一されたシンプルなスクエアフォルムが特徴。アタッシュケースのような外観で、クラシカルな佇まいをしています。
四隅はメタルパーツで保護され、底部の樹脂性フットが衝撃から守ります。実際に手に取ると、見た目の高級感だけでなく、そのカッチリとした作りから堅牢性の高さが伝わってきます。
スクエアな形状は、見た目の美しさだけが理由ではありません。複数を所有した際に、縦に積み重ねても、本棚のように横に並べても、すっきり収まるように計算されています。まさに、コレクションが増えることを見越した設計思想です。
細部にも、使いやすさを考慮した工夫が施されています。例えば、蓋は約100°の位置でぴたりと止まるストッパー付き。全開にならないため、壁際や棚の中など、限られたスペースでもヘッドホンの出し入れがスムーズです。
大切なコレクションだからこそ、管理もスマートに行いたいもの。そんな時に便利なのが、オリジナルのネームタグです。
柔らかなシリコン製で、着脱も簡単。複数のケースを並べたとき、どれにどのヘッドホンをしまったか、一目でわかるようになっています。
「合わせる」楽しさ。愛用ヘッドホンの専用ケースを作る時間
AT-HPC3の真骨頂は、ケースを開けた瞬間に現れます。中にあるのは、10mm四方の切れ目が入ったブロック状のプレカットスポンジ。このスポンジこそ、AT-HPC3の最大の特徴と言えます。
今回は、オーディオテクニカのヘッドホン『ATH-AWAS』を収納するためにカスタマイズすることにしました。ATH-AWASは、貴重なアサダ桜を削り出して作ったハウジングを持つ、特別な一台です。だからこそ、保管にも最大限の配慮が欠かせません。
早速カスタマイズをしてみましょう。スポンジは適度な硬さがありながらも、切れ目に沿って簡単に手でちぎることができます。ヘッドホンをスポンジの上に置き、輪郭を残すようにしながら、少しずつスポンジをくり抜いていくと、自分の大切なヘッドホンの形が、徐々にスポンジの中に現れてきます。
そうしてくり抜いた部分にヘッドホンを収めます。まるでオーダーメイドのようにピッタリとはまり、ケースを軽く揺らしても中でずれる気配は一切ありません。
作業は、想像以上に創造的です。愛用するヘッドホンのために、ひと手間かけて丁寧にカスタマイズしていく。こうしたヘッドホンと向き合う体験こそ、管理や出し入れのしやすさという実用的なメリット以上に、AT-HPC3の大きな魅力なのかもしれません。
ちなみに、スポンジはサービスパーツとして別途購入することも可能です。基本は一つのケースに一台のヘッドホンを想定していますが、もしメインで収納するヘッドホンが変わった時や、スポンジがへたってきた時も、新しいスポンジに交換すれば、再び最適なフィット感を作り出すことができます。そんな風に、AT-HPC3本体を長く使い続けられる工夫が施されていることも、魅力のひとつです。
「しまう」から「愛でる」へ。ヘッドホンとの新しい関係
ヘッドホンは、音楽を聴くための「道具」であると同時に、その造形美や背景にある開発ストーリー、購入するまでの高鳴る気持ちや、手にした際の喜びなどを含めて愛でる「コレクション」でもあります。しかし、その保管方法はこれまで、ヘッドホンスタンドに掛けるか、購入時の箱に戻すか、あるいは無造作に机の上に置くか、という選択肢がほとんどでした。
AT-HPC3が提案するのは、そのいずれとも違う「保管し、愛でる」という新しいスタイル。自分の手で作り上げた特別な空間にヘッドホンを収める行為は、一日の終わりに腕時計をケースに戻す時のような、穏やかで満たされた時間をもたらしてくれますし、美しいスクエアケースは、部屋の景色を少しだけ上質なものにしてくれます。
デザインの美しさ、確かな保護性能、そして何より自分で作り上げるフィット感。AT-HPC3は、ヘッドホンを愛するすべての人にとって、これからのスタンダードになり得る可能性を秘めた逸品です。
Words:Kosuke Kusano
Edit & Photo:Kokonoka Mitsuki