今、世界的な再注目の最中にあるアナログ・レコード。 デジタルで得られない音質や大きなジャケットなどその魅力は様々あるが、裏面にプロデューサーやバックミュージシャン、レーベル名を記した「クレジット」もその1つと言えるだろう。

「クレジット」――それは、レコードショップに並ぶ無数のレコードから自分が求める一枚を選ぶための重要な道標。 「Credit5」と題した本連載では、蓄積した知識が偶然の出会いを必然へと変える「クレジット買い」体験について、アーティストやDJ、文化人たちが語っていく。 あの人が選んだ5枚のレコードを道標に、新しい音楽の旅を始めてみよう。

社長 / SHACHOが考える「アナログ・レコードの魅力」

デジタルでもアナログでも、いい音楽はどんなフォーマットであろうと素晴らしい感動を届けてくれる。 なんて事を言いつつも、やっぱりレコードに魅かれて買い続けてしまうんです。
スリーブから出して、タンテに置いて、スプレーして黒板消しみたいなやつでほこりとって、針落として、フェーダー上げて、という作業というか作法みたいな手間があるのに。
でもそれが心地よくて、その手順を踏んでるうちに脳味噌の音楽モードがスタンバイされる。

なんなんでしょうね。 それが快楽ってやつなんでしょうか。
とにかく、好きな曲はアナログで持っておきたいんです。 30cm四方のアートピースとして。

社長 / SHACHOが「クレジット買い」した5枚のアナログ・レコード

The Jackson 5『Get It Together』

The Jackson 5『Get It Together』

いわゆる王道のディスコヒットはみんなプレイしてるし、自分のスタイルじゃない、なんていうくだらない思考でレコードを掘っていたんですよ。 20代前半は。
その頃はジャクソン5(The Jackson 5)にはなかなか手が伸びなかったのだが、ジャジスポの西田君が「でもこれノーマン・ホィットフィールド(Norman Whitfield)なんだよね」って勧めてくれたのがこのLP。

クレジットを見ると確かに「Hum Along and Dance」にノーマン・ホィットフィールドの名が。 ローズ・ロイス(Rose Royce)やアンディスピューテッド・トゥルース(The Undisputed Truth)の作品で、ノーマン・ホィットフィールドは間違いないって思ってたのを知ってか知らずか、西田くんのおかげで初めてのジャクソン5を買うに至ったわけです。

The Modern Jazz Quartet『The Modern Jazz Quartet』

The Modern Jazz Quartet『The Modern Jazz Quartet』

高校生の頃、DJに、というかU.F.O.に憧れてレコードを買い始めたのですが、何を買っていいか分からず、とりあえずレコ屋でエサ箱をただ「見て」いた時のこと。
目に飛び込んできた ”Modern Jazz” の文字。 今の数万倍カッコいいと思っていた文字。 しかも曲目を見ると「Night in Tunigia」の文字。 知ってる!
しかも限られたお小遣いでも買える値段。 ということで僕の ”Modern Jazz” のレコードの一枚目となったこのLPは、今でも大切にしてます。

Hal Galper『Now Hear This』

Hal Galper『Now Hear This』

正直、このハル・ギャルパー(Hal Galper)さんのことは全く知らないです。 しかしジャケットの、その名前の下に並ぶ3人の名前が凄かった。
日野皓正、トニー・ウィリアムス(Tony Williams)、セシル・マクビー(Cecil McBee)。 特にセシル・マクビーさんは最も好きなベーシストと言っても過言ではなく、彼の名がパーソネルにあるレコードに出会うと、ほぼ間違いなく買っちゃうんです。 そこにトニーと日野さんの名前が並んでいるもんだから試聴もせずにお持ち帰り。 内容は言うまでもなく素晴らしく、いまだに愛聴盤です。

The Whole Darn Family『Has Arrived』

The Whole Darn Family『Has Arrived』

「Seven Minutes Of Funk」こんなにもシンプルで、哲学的で、記憶に残るタイトルがあったでしょうか。 どこかのクラブで先輩たちの会話から漏れ聞こえてきたこのタイトルは、しっかりと僕の記憶に刻まれ、後にレコ屋で偶然にも発見するわけです。 タイトル通り7分間の地を這うようなファンクグルーヴ。 ちょっと長いなーと思ってたら、7インチはなんと「Half of Seven Minutes Of Funk」という3分半バージョン。 このシンプルな強さは見習わないとな、と思えるタイトルです。

Konstantin Petrosyan『Concerto For Voice And Orchestra』

Konstantin Petrosyan『Concerto For Voice And Orchestra』

クレジット買いとは、つまりその文字が読めることが大前提。 ロシアンジャズに興味はあるものの、残念ながらアーティスト名もアルバムタイトルも読めないから、ジャケで覚えるしかない。

タイファンクにも同じことが言えますね。 こちらもパッと見はロシア語の表記なのだが、よくよく見てみると、お!読める!英語表記もあるじゃん!となってお買い上げの一枚。
迫力の80’sロシアンビングバンドジャズです。 内容も、ジャケのデザインも、レーベルのロゴもカッコいい。

社長 / SHACHO

SOIL&”PIMP”SESSIONS Musician / DJ / Festival Organizer

SOIL&”PIMP”SESSIONSのアジテーター。 ジャズの枠組みを超えたパンキッシュでエネルギーに満ち溢れたパフォーマンスは世界中で高い評価を受け、GlastonburyやNorth Sea Jazz、Worldwide Festivalといったビッグフェスティバルに出演を続けている。
DJとしての活動のスタートは1996年に遡る。 ジャズやワールドミュージックをマシンミュージックとミックスすることで、スピリチュアルなダンスミュージックとして再定義し、非日常な高揚感に包まれたフロアを演出することをテーマにしている。
近年では様々なアーティストへの楽曲提供やリミックス、またテレビドラマの劇伴を担当するなど、作曲者・プロデューサーとしての能力も評価されている。 さらに福井にて開催されている「ONE PARK FESTIVAL」のCo-Founderであり音楽顧問を務める。

Edit:原 雅明 / Masaaki Hara