今、世界的な再注目の最中にあるアナログ・レコード。 デジタルで得られない音質や大きなジャケットなどその魅力は様々あるが、裏面にプロデューサーやバックミュージシャン、レーベル名を記した「クレジット」もその1つと言えるだろう。

「クレジット」――それは、レコードショップに並ぶ無数のレコードから自分が求める一枚を選ぶための重要な道標。 「Credit5」と題した本連載では、蓄積した知識が偶然の出会いを必然へと変える「クレジット買い」体験について、アーティストやDJ、文化人たちが語っていく。 あの人が選んだ5枚のレコードを道標に、新しい音楽の旅を始めてみよう。

松本素生が考える「アナログ・レコードの魅力」

自分にとってのレコードの魅力とは、やはりサウンドです。 年齢的にはCDど真ん中世代ですが、うちは父親が音楽好きなこともあり、割と立派なオーディオシステムがありました。 休日の朝などはジャズや60、70年代のロックが爆音で鳴っていて、例えばビートルズ(The Beatles)の青盤をCDとレコードで聴き比べて、何故か分からないがレコードで聴いた方がグッとくるなぁなどと、独り悦に入ったりしていたのがレコード原体験です。 レコードを自分で買い出したのは15歳くらいですが、購入基準は曲ありきで、そこは今も変わっていません。
レーベル、クレジット買いは、よっぽどでないとしません(笑)
物凄い1曲に出会い、そこからLPを買いクレジットを読み、なるほどと思うことは多々ありますが。 若い頃は、DJイベントを毎月のように開催していたこともあり、いわゆるフロア受けするようなレコードも買ったりしていましたが、最近は完全に家で感動するためだけにレコードを買っています。 なのでコンディションには滅茶苦茶シビアです(笑)

松本素生が「クレジット買い」した5枚のアナログ・レコード

JOE BATAAN『RIOT!』

JOE BATAAN『RIOT!』

先ず1枚目はニューヨーク出身でラテンソウルシンガーのジョー・バターン(JOE BATAAN)の3作目『RIOT!』です。 2000年代中頃に再発盤が出ていて、そっちはステレオ盤なんですが、このレコードはベネズエラ盤のMONOミックスです。 長いこと探していて、ようやく去年手に入れました。 ラテン音楽で括るには、一筋縄ではいかない作品で、ドゥーワップやスウィート・ソウル、当時スパニッシュハーレムの中で流行っていた音楽からの影響を感じさせつつ、不良の匂いがプンプンするルードでロマンチックなレコードです。

梅宮辰夫『夜遊びの帝王』

梅宮辰夫『夜遊びの帝王』

和ラダイスガラージの永田一直さんに頂いた、ミックスCDで知りました。
頂いた時がちょうどバンドのツアー中で、車内に収録されている「夜は俺のもの」が流れた瞬間、メンバー全員が「この曲やばいっ!!」と色めき立ったのを覚えています。 5小節目から咽び泣くサックスが入ってくるんですが、聞くたびに拳を握り昇天します。 盤質Cで600円で投げ売られてましたが、試聴するとB+くらいで小躍りしながら帰った記憶があります。

SKA and ROCKSTEADY『V.A』

SKA and ROCKSTEADY『V.A』

日本のスカバンド、mule train、 THE SIDEBURNSのドラマー、そして僧侶の顔も持つTOP DOCAさんが主宰するこだまレコードのコンピです。 このLPに収録されている曲は元々7インチでリリースされ、そのたびにsoldしてしまうのでいつも悔しい思いをしていました。 このコンピのリリースを知った時、即注文し、実際、現物が自分の手に届くまで、かなり前のめりに、そしてヤキモキしながら暮らしていました(笑)。 僕にとっては、そのぐらいスペシャルなレコードです。

ジャマイカンオールディーズの名曲の数々を、日本語でカバーするという、内容もさることながら、このレコードの価値をもうひとつ高めているのが、手作りのシルクスクリーンジャケットも白眉の出来です。 レコードが届き、部屋で開封した時のインクの匂いが忘れられません。

CLARENCE “BADBOY“ PALMER & THE JIVE BOMBERS『BADBOY』

CLARENCE “BADBOY“ PALMER & THE JIVE BOMBERS『BADBOY』

元々はドイツのコレクターDuke Jens Omaticが監修した40〜50年代の古いR&B、ジャンプ、ジャイヴの10インチのコンピで知り、あまりに卑猥なコブシとルーディーさにやられた曲です。 そのコンピは音圧が低めな事もあり、ずっと程度の良いシングル盤で探していましたが3年前に、ようやく我が家にお迎えすることができました。 僕的には、18禁音楽です(笑)この曲は。

LULi『LULi』

LULi『LULi』

クボタタケシさんの名作ミックステープ 『CLASSICS』シリーズの4本目で知った曲です。 収録されたいた「Missáo」の、この世の物とは思えない美しいメロディーと浮遊感のあるアレンジに打ちのめされ、すぐにレコードを探し始めるも、とんでもないレア盤であること、そしておいそれと購入出来る金額ではない事を知り、半ば諦めていましたが、川越にあるレコードショップ、芽瑠璃堂のインスタでSérie Teorema(セリエ・テオレマ)から世界初復刻される事を知り、嬉し泣きしながら芽瑠璃堂まで買いに走りました。 聞くたびに、ここではない何処かへ連れて行ってくれる魔法のレコードです。

松本素生

1978年12月22日生 埼玉県桶川市出身 ボーカリスト/ギタリスト GOING UNDER GROUNDのボーカル&ギター。 自身のバンドだけにとどまらず、幅広いアーティストに楽曲提供を行うなど精力的に活動し数多くの名曲を生み出している。

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Coordination:Yuki Tamai
Edit: Yusuke Ono