今、世界的な再注目の最中にあるアナログ・レコード。デジタルで得られない音質や大きなジャケットなどその魅力は様々あるが、裏面にプロデューサーやバックミュージシャン、レーベル名を記した「クレジット」もその1つと言えるだろう。

「クレジット」――それは、レコードショップに並ぶ無数のレコードから自分が求める一枚を選ぶための重要な道標。「Credit5」と題した本連載では、蓄積した知識が偶然の出会いを必然へと変える「クレジット買い」体験について、アーティストやDJ、文化人たちが語っていく。

今回登場するのは、オールジャンルミックスの先駆者にしてトップランナーであるDJのクボタタケシ。紹介された5枚のレコードを道標に、新しい音楽の旅を始めてみよう。

クボタタケシが考える「アナログ・レコードの魅力」

いまだにスリリングで、未知の道に導いてくれる重要な――というよりも、常にそばにあるものです。ありすぎるものです。その抜け出せないミゾが、今日までの自分を形成してきたのかもしれません。

限りなく10割に近い9割方アナログレコードでDJをしている身からすれば、魅力以外の何ものでもなく、それを文字にすることができないがゆえに、音を出し続けているのかもしれません。

Isis『Hail The Word(Deep State Dub)』

Isis『Hail The Word(Deep State Dub)』
B-2収録曲

X-Clan周辺、FEMALEラッパーの1991年作。問題はside twoのdub version。恐ろしくユルくもdubbyなキーボードがまとわりつき、良い塩梅のシンセベースと、down tempoな4つ打ちにシフトチェンジ。表題の面影はゼロ、つまり最高。

トミー・ムスト(Tommy Musto)のキーボードに、リミキサーにはダニー・テナグリア(Danny Tenaglia)というクレジットを見つけて納得。

エリアナ『サルサ・ボニータ』

エリアナ『サルサ・ボニータ』

例えばこんな感じ。1991年当時、出たばかりの『ジャズ批評別冊 アイドルPOPS 80-90』の中から、ラテン、サルサと名のつくタイトルを探してみる。エリアナ/サルサ・ボニータがヒット。メモって財布に忍ばせてレコードハンティング、dig。

入手して裏ジャケのクレジットに、演奏「オルケスタ246」の文字を発見。またメモって、そもそもレコードを出しているのかも分からないグループを探す。暫くしてシングル盤を発掘、歓喜の震え。さらに裏ジャケからアルバムのアナウンスも見つける。

――と、他ジャンルからクレジットを頼りに冒険して、今もそれは続いています。

Roxanne Shanté『Independent Woman(LP Version)』

Roxanne Shanté『Independent Woman(LP Version)』
B面収録曲

一般的にマーリー・マール(Marley Marl)プロデュース作の中では地味かもしれないが、ここ数年の自分のムードにはぴたりとハマる。質感、テンポ、音の鳴りはルーツロック、ダブそのもので痺れる。

言ってみれば、ニューヨークのマンホールから、ゆっくりと立ち上がる湯気みたいな感じ。

Miyuki Y Su Son Con Conjunto Espacio『Stranger in Midosuji』

Miyuki Y Su Son Con Conjunto Espacio『Stranger in Midosuji』

内海みゆきと、日本のラテンバンド、コンフント・エスパシオによるムード歌謡カバー集を、ソン、サルサでメイキング。「雨の御堂筋」のキューバ・ソンアレンジが、引くほどハマっている。

EPICソニーからリリースされた1991年という時代から、CDシングルとCDアルバムのみかと思いきや、1カ国のみでアナログあり。ベネズエラ盤。ベネズエラて。プロモオンリーで、コロンビアからは7インチも出ているみたいで、深すぎる。

Lee “Scratch” Perry and Terrorists『Guerrilla Priest』

Lee ”Scratch” Perry and Terrorists『Guerrilla Priest』
B面収録曲

白人のニューヨークbasedレゲエ・スカバンドによる、リー・ペリー(Lee “Scratch” Perry)をフィーチャリング&プロデュースに迎えた12インチシングル。US盤1981年。脱力レゲエソングで、初期ダンスホールにも相性良き。

問題は裏ジャケのメンバーと、リー・ペリーのフォト。ジム・フィータス(Jim Foetus)似の白人メンバーが、グランドマスター・フラッシュ(Grandmaster Flash)のTシャツを着ている。時代的にも映画『Wild Style』以前で、経緯を考えるだけで早すぎてスリリング。

クボタタケシ

主に毎週末、都内各所や全国各地でDJ。ジャンルレス、タイムレス、かつボーダーレス、もっと言えばホームレスな何にも属さない印象的な選曲と個性的なミックスを収録した幾つかの魅力的なタイトルを公式、非公式にリリース。異色のヒップホップグループキミドリでの活動も知られている。また、サウンドクリエイターとして数多くのリミックスやプロダクションも手掛けた。これらの活動を90年代初頭から現在まで一定のスタンスを崩すことなく継続中

HP

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Edit:Kunihiro Miki

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