「僕はアプリを説明する時はこう言うんです。これは集中力を向上させ、リラックスを促し、睡眠を助けるテクノロジーなんです、って」

ストレスの多い現代社会に、パンデミックのダブルパンチ。リラクゼーションへの需要が高まっているいま、なかなかなさそうなマインドフルネスアプリを紹介したい。毎日変わる“自分の状態”に適した最高の癒しのサウンドをリアルタイムで作りあたえてくれる。

Endel Official Website
(出典:Endel Official Website)

聞くだけ。集中力が6.3倍向上、不安が3.6倍軽減する音

ただのヒーリング音生成のアプリではない。「Endel」は個人の体調に合わせ、パーソナライズされたヒーリング音を自動で作ってくれるマインドフルネスアプリだ。開発したのは、ドイツ・ベルリンのスタートアップ「Endel Sound GmbH」。共同創立者には、モスクワ出身の若き天才と呼び声が高い作曲家のDmitry Evgrafovと、モスクワを拠点にするビジュアルアーティストのProtey Temenなどがいる。Dmitryはアプリのサウンドデザインを、Proteyはアートディレクターを務める。制作や運営チームが世界的に活躍するクリエイターたちというのもおもしろい。

制作・運営チーム。

さて、どうやって個人に合わせたヒーリング音を作るのか。ユーザーはまず、アプリに天気、時間、心拍数などをインプット。それらの情報をもとに、体内時計をベースとした独自アルゴリズムが、シーンに合わせて心身が没頭できるヒーリング音を自動で作り出してくれる。
柔らかく優しい音で深い睡眠に誘う「Sleep(睡眠モード)」、心を落ち着かせる「Relax(リラックスモード)」、生産性を向上させる「Focus(集中モード)」、外出時のテンポに適応する「On-the-Go(外出モード))」と、シーンに合わせた4つのモードがあるので、その時々の状況に合わせて選ぶことができる。

まず重要となるのが「体内時計」。人間が意識せずとも太陽の昇りと沈みでエネルギーレベルと体と心の状態が変化していく「24時間周期のリズム」のこと。アプリにはこの体内時計をベースに開発された独自のアルゴリズムが組み込まれている。しかし「体内時計」は、現代生活のなかでは狂いがち。それを調整するために、その日の天気、時間、心拍数、自然光などをインプット。それらの“いま現在の”自然や環境、人体の状況にあわせて心身をほぐすヒーリング音を自動で作り出してくれるのだ。

アプリ内には、やわらかくやさしい音で深い睡眠に誘う「Sleep(睡眠モード)」、心を落ち着かせる「Relax(リラックスモード)」、生産性を向上させる「Focus(集中モード)」、外出時のテンポに適応する「On-the-Go(外出モード)」と、シーンに合わせた4つのモードがあるので、その時々の状況に合わせ選べる。ヒーリング音は、その時の状況とアルゴリズムによりシーンに合わせてリアルタイムで作られるため、同じ音が2度流れることはない。

Endelがヒーリング音を作るプロセス。

「Focus(集中モード)」のヒーリング音はこんな感じ。

でもやっぱり気になるのが「本当にヒーリング音を聞くだけで効果はあるのか?」。どうやら答えは、イエス。同アプリがおこなった検証では、集中力が6.3倍向上し、さらに不安が3.6倍軽減したという結果も出ている。

実際のユーザーの声も聞いてみよう。「これは神からの贈り物。気分に合わせて選ばれた音とリズムは非の打ちどころなし」「教室でヒーリング音を流しています。流していないと自閉症の生徒に『流して』と要求されるほど」「不安や大きな音でストレスを感じてしまう愛犬にヒーリング音を流すと、子守唄を聴く赤ん坊のように眠ってくれる」など、説得力のあるフィードバックが並ぶ。2020年時点で約200万回ダウンロード済みという人気ぶりだ。

無料のアプリが作ってくれるヒーリング音でリラックスした日々を過ごせ、生産性が向上し、さらに睡眠の質をも高めてくれるなんて。

Eyecatch Illustration: YOHAKU YOKAI ART
Words: Yu Takamichi(HEAPS)