ソウルミュージックの新たな接点を生む「ESP」

英国、ケニア、ウガンダより、全く異なるバックグラウンドを持つアーティストたちがナイロビ(ケニア)に集まり、オープンマインドなアプローチで、さまざまなサウンドやテクニック、伝統を調和させ「ソウルミュージック」を共に創るプロジェクト「Extra Soul Perception(エクストラ・ソウル・パーセプション/以下ESP)」。British Council、Arts Council England、そしてAnalogue Foundationがサポートを行い、参加アーティスト達はオーディオテクニカのプロ用機材を使用して、レコーディングスタジオSupersonic Africaでアルバム制作のために1週間を共にし、その後、英国でのライブツアーを行い、EP、アルバムをリリースする。

そのビジョンは、異なる国のアーティストに分け隔てない深い文化交流の機会を与えること、参加者同士で強い繋がりの共同体を築き上げること、そして新しい芸術の創造を通して、異なる文化間で知識や経験を共有すること。

参加アーティストたちは、以下の8人。伝統的なウガンダサウンドを知るものがいれば、ケニアより“もっとも祝福されたソウルボイス”の持ち主が、また東アフリカで唯一の女性オルトゥ奏者も参加する等、まさにそれぞれの伝統と領域を習熟した才能が集まった。

Faizal Mostrixx

カンパラにて、今もっとも注目されるコンテンポラリーダンサー。電子音楽を使用した伝統的なウガンダサウンドを継承するプロデューサー。RA(Resident Advisor)による「今聴くべき15の東アフリカアーティスト」に選出されたほか、アディダス・オリジナルスのキャンペーンにも楽曲を提供している。

Hibotep

ウガンダのカウンターカルチャー界におけるビジョナリー。DJ、映像監督、ファッションデザイナー、インスタレーションアーティスト、ラッパー、プロデューサー等の顔をもつ。Nyege Nyege FestivalのBoiler Roomで2回出演を経験し、RAによる「East Africa’s New Wave」でも主要アーティストとして名を連ねている。

Karun

ケニアで“もっとも祝福されたソウルボイス”をもつ一人。BETアワードでノミネートされたCamp Mullaの元メンバーで、最近ではColorsでのフィーチャー、Forbesの2019年度「30アンダー30アフリカ」での選出が話題に。

Labdi

東アフリカで唯一の女性オルトゥ奏者。「女性は一弦のフィドルを弾いてはいけない」というルオ族に伝わる伝統を破り、シンガーソングライターとしてケニア土着サウンドを吹き込む。Dazedの「今聴くべき5人の東アフリカアーティスト」に選出。

K15

ロンドンを拠点にするミュージシャン、作曲家、プロデューサー、DJ。ジャズとソウルのサウンドをハウスミュージックの構造に融合するのが特徴で、これまでWild OatsやEglo、WotNotとリリースをしてきた。ジャズグループCulross CloseやソウルデュオProfusionとしても活動する。

Lex Amor

ノースロンドンのラッパー、DJ、ミュージシャン、プロデューサー、ラジオ局「Reprazent」のホスト、Touching Bassの一員で、23人から成るコレクティブSix Weeksのメンバーでもある。

Lynda Dawn

ロンドンのシンガー。Gilles Petersonのアルバム『Brownswood Bubblers Vol.13』でフィーチャーされたほか、2019年にはAl Dobson JrプロデュースのもとAkashik RecordsからデビューEPをリリース、BBC Radio 1XtraにてJamz Supernovaが厳選する「世界のEPトップ5」にて1位に輝いた。

Maxwell Owin

ロンドンを拠点にするプロデューサー、ミュージシャン、DJ。ロンドンのジャズ・ニュー・ウェーブシーンの中心的存在。Joe Armon-JonesやOscar Jerome、Nubya Garciaとコラボレーションをするほか、影響力の強いロンドンのパーティー/ジャムセッション「Steez」のレギュラーも務める。

それぞれが新たにチームを組み協働する。ライティングキャンプの毎日は、ひたすらその繰り返しであった。日々、即興性とコラボレーションスキルが試される。そこから生まれた作品には、メンバーそれぞれの幅広いバックグラウンドからくる趣向や個性が活き活きと散りばめられ——アカペラのハーモニーや、ささやくような話し声、カミソリの刃のように鋭いスワヒリ語のラップ、ぶつかり合うブロークンビーツ、魅惑的なR&B——唯一無二なものへと仕上がっていった。もう二度と再現することはできないその場その瞬間のスピリット、アーティストそれぞれの柔軟性と驚異的な才能で醸成された熱量と空気感が、1曲1曲に捉えられている。

2019年11月のライティングキャンプから3ヶ月後となる2020年2月、8人のアーティストはロンドンに再び集結し、3日間のUK公演を遂行。ソロセット、そして初となる『New Tangents in Kampala,London&Nairobi Vol.1 (略:New Tangents Vol.1)』のコラボセットを演奏した。ロンドンの老舗The Jazz Cafeでの満員御礼のデビュー公演からはじまり、マンチェスターやリバプールでの公演へと続く。

その後もNataalやTash LCとのパネルディスカッションや、CDRとの制作ワークショップ、Worldwide FM出演、BBC World Serviceでのアーティスト主導の番組制作、Just Jamの放送、ロンドンのSouthbank Centre for Africanでのライブセット等、多忙なスケジュールをこなし、現在、引き続きアルバムの制作を行っている。

ファーストシングル『In My Soul』は、カンパラのプロデューサーFaizal MostrixxとナイロビのシンガーKarunのコラボレーションで、Karunが初のスワヒリ語ラップを披露している。

Bandcamp
『In My Soul』

『New Tangents Vol 1 EP』は6月にリリース。

Bandcamp
『New Tangents Vol 1 EP』

『ESP-The Album』は、現在製作中。2021年リリース予定。

一度も見落とされた瞬間がなかった。自分の存在が、大事にされていると感じた。

「ESPプロジェクトの一員として、充実した経験と解放的な気分を味わうことができたよ。自分たちの才能や表現を惜しみなく作品づくりに役立ててくれるミュージシャンやディレクターたちと音楽制作を共にできたことが、最高だった。音源を世界にリリースするだけでも素晴らしいことだけど、演奏をすることで、聴き手に自分たちの作品を“見せる”ことができた。僕自身アーティストとしてまた一つ殻を破り、新しい能力に気づき、チームと新しい関係性を気づくことができたんだ。ありがとう、ESP!」-K15
「大切な、またとない体験。チームのみんなが文字通り、ひとつひとつ互いが必要なものを補いながら支え合っていたと思う(私が欲しかったサプリを誰も持っていなかったときを除いて!笑)。私たちチームは、互いを支えあっていて、忍耐強くもあった。多数のアーティストと仕事をするときに重要なファクターだと思う。本当に多くのアーティストがいたけれど、一度も見落とされた瞬間はなかった。それぞれの音楽に対する決意のようなものにはすごく感化されたし、感服した。そんな気持ちがあいまって、素晴らしい公演になったと思う。本当に、素敵だった。30人のチームがバックにいたけれど、すべてのことがまるで一つの動きのようにスムーズだった。いままでで一番意味のあるプロジェクトの一つだったと思う」-Labdi
「協働と実験の機会を得ることができて、感謝している。同じ業界で活動する、同じ考えや感覚をもった新しいアーティストたちと国を超えて出会えたことは楽しかったし、最初から最後までプロジェクトがスムーズに進行したことには感動すらしている。いろいろな経験をすることができたことも嬉しく思っているし、自分の存在が大事にされていると感じた。ここは私のセーフスペースだ、と感じたりもしたんだ」-Karun

Photos by Dan Medhurst
Martin Eito