クラシック音楽には楽器編成ごとに多様なジャンルがあります。 ジャズで言うところの、ソロ、トリオ、コンボやビッグバンドといったジャンル分けにも例えられるでしょうか。 そのジャンルは実に多様で、それぞれジャンルごとに深掘りしていけるのもクラシックの醍醐味の一つです。 今回は、代表的なジャンルについて簡単にご紹介します。

クラシックにはジャンルがある

クラシックにおける代表的なジャンルをご紹介します。 ジャンルごとに見ていくと、音楽の構成や傾向もだいたい把握できるほか、作曲家の得意ジャンルが見えてくるので、好みの作曲家を見つけやすくなるでしょう。

前回ご紹介した時代と併せて、この時代の作曲家のこのジャンルが好き、ということが分かれば、そこを掘り下げていくことができます。 例えば、前回ご紹介したドビュッシー(1862-1918)のピアノ曲が気になったのならば、モーリス・ラヴェル(1875-1937)やエリック・サティ(1866-1925)のピアノ曲、といったように広げていくことができます。

器楽曲

いわゆる楽器だけで演奏される曲です。 よって、ピアノやヴァイオリンやチェロの独奏などから、交響曲や室内楽なども声を使っていない編成は全て器楽曲です。

室内楽曲

それぞれのパートを一人ずつの奏者が担当して、何名かで演奏する曲です。 弦楽四重奏や木管五重奏といった典型的な編成から、作曲家によって任意の編成が組まれたりもします。

協奏曲

「コンチェルト」とも呼ばれるものです。 主役となる楽器があり、その楽器に対してオーケストラが協奏します。 主役がピアノの場合ピアノ協奏曲、ファゴットであればファゴット協奏曲といったようになります。 主役楽器のソロパートがあるのも特長で、比較的聴きやすいものが多く人気ジャンルの一つです。

交響曲

あらゆる楽器がフル稼働する「オーケストラ」が演奏する曲で、多楽章形式を採ります。 時代を追うごとに曲が長くなり、ベートーヴェン以降は一時間超えは普通です。 同時に、楽器の編成もどんどん増えていきます。 作曲家にとっては、技術的には最高難度の編成とも言え、腕の見せ所となります。

管弦楽曲

オーケストラが演奏するのは交響曲と同じですが、交響曲のようなルールやフォーマットがなく、長さも短く、もっと気軽に聴ける題材や内容の楽曲が多いのが特徴です。

声楽曲

その名の通り「声」で演奏する楽曲です。 ソロは独唱、二人以上が同じ旋律を歌うのが斉唱でそれぞれ異なるパートを歌うのが重唱、その両者が混在するのが合唱です。

オペラ

演技を伴う舞台作品として、歌と音楽で物語が進行するのがオペラです。 おもに、セリフを話すように歌う「レチタティーヴォ」と、登場人物が気持ちを歌い上げる「アリア」とで進行します。

バレエ音楽

こちらも人気の形態ですが、文字通り「バレエ(踊り)」のために作曲された音楽です。 チャイコフスキーやストラヴィンスキーなどロシア人作曲家の作品が特に有名で、音楽単体でも楽しまれることが多いです。

吹奏楽

管楽器と打楽器で構成される形態で、原則として弦楽器が入らない編成です。 クラシックというより、ポップスやジャズ、映画音楽などまでを含む現代の楽曲が中心となるジャンルです。

とにかく聴いてほしい1枚

今回は気軽に聴ける作品も織り交ぜてご紹介します。 編曲(アレンジ)による妙や、楽器編成による音楽の違いを是非ともご体感下さい。

器楽曲

「バッハ」 ティボー・コーヴァン

参考リンク
クラシック音楽の楽しみ方の一つがアレンジものです。 トランスクリプションなどとも言われるのですが、ある楽曲を別の楽器で演奏するために編曲し直したものがたくさんあります。 この盤もそんな作品の一つで、バッハの名作がクラシックギター用の軽快なアレンジとなって心地よく響きます。 この手の作品は現代のセンスでもってアレンジされるので、入り口としてもとても入りやすいでしょう。

協奏曲

モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第4番, 第3番
マリアンネ・トゥーシェン(ヴァイオリン)/トロンハイム・ソロイスツ

参考リンク
コンチェルトといえばロマン派の情感豊かな楽曲が人気ですが、古典派の明朗快活な音楽性もとても魅力的です。 そんな古典派のモーツァルトの音楽を極上の音質で味わえるのが、高音質録音で定評のある「2L」レーベルからリリースされているこの盤です。  

声楽曲/宗教曲

モーツァルト:レクイエム カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ほか

激しく重めな曲&演奏ですが、現代ではなかなか出会えないパワーが炸裂している名盤です。 普段の楽曲で聴けるような多幸感溢れるモーツァルトとは真逆の悲壮感から始まる冒頭に続いて現れる、光のようなソプラノと重厚なコーラスのハーモニーはまさに唯一無二です。 最近の演奏は、一転して軽やかな演奏が主流ですが、こういった今とは異なる世界観を味わえるのもレコードならではです。

交響曲

チャイコフスキー:交響曲第4,5,6番
エフゲニー・ムラヴィンスキー、レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

参考リンク
クラシックは世界各国の演奏家が文字通り「クラシック」な楽曲を演奏しますので、その演奏の違いを楽しむことも一つの醍醐味です。 当然、その人の解釈やバックボーン、そして、民族性のようなものも演奏へと如実に現れてきます。 そんな意味で、チャイコフスキーというロシアの作曲家の音楽を実に野性味溢れる音楽性で描きあげるのが、同じくロシア圏のムラヴィンスキーだと思います。 餅は餅屋といいますか、非常に説得力がある演奏が、盤を問わず楽しめます。

Words:Saburo Ubukata