Always Listeningの、音や音楽からみる社会。 5月の「アフリカ月間」が再来月ということで、今回は同月間を音楽の動きから振り返ってみたい。 昨年に南アフリカのケープタウンで新しくスタートした、環境活動と新興音楽シーンを掛け合わせた興味深いイベントにも触れていく。

アフリカ出身の才能に光をあてる月

毎年5月は「アフリカ月間」。 第二次世界大戦後、独立したアフリカ諸国が集結してアフリカ機構を結成した5月25日「アフリカの日」に由来するこの月間。 アフリカの統一、連帯と協力を再確認する大切な時期だ。

昨年のテーマは、アフリカ大陸で食糧の持続可能性が議題になっていることから「“栄養”の年:アフリカ大陸における栄養と食糧の回復を強める」だった。 食料安全保障の課題を軽減するうえで役立つ見解の話し合いや、先住民族のレシピを用いた料理のデモンストレーションなどが行われた。

歴史的な重要性を祝いながら、現在のアフリカの芸術や文化への評価や需要を高め、アフリカ諸国間の貿易促進をはかる。 諸外国との繋がりをつくっていくことも重要なミッションとなるなかで、やはり、音楽の催しは毎年人気だ。

現地でも各国からアーティストが集結したコンサートやパネルディスカッションなどが目白押しで、昨年3回目を迎えたYoutube主催*の「Africa Day Concert」はYoutube上でも独占配信され各国から視聴可能なこともあり、特に注目が集まる。 2021年はケニア、2022年はナイジェリアをコンサート開催地として選び、これまでにケニアのゴスペルシンガーBahati(バハティ)や、ナイジェリアのアフロビートシンガーソングライターBella Shmurda(ベラ・シマーダ)、伝統的なアフリカ要素と世界のポップス要素を組み合わせるナイジェリアのシンガーDavido(ダビド)、ラッパーのD’banj(ディバンジ)などが出演してきた。 Youtubeはコンサートのほかにも、アフリカ音楽のいまを伝え考えていくためのパネルディスカッションなどにも力をいれている。

今年のラインナップなどはまだ未発表。 昨年は5月頭あたりに発表されていたので、気になる人はその辺りでチェックしてみて欲しい。

昨年のAfrica Day Conert。 シエラレオネ出身の父、ガーナ出身の母をもつ俳優Idris Elba(イドルス・エルバ)とパートナーシップのもとで主催され、2021年、2022年と彼がメインホストを務めている。

新しい音楽シーン×気候変動

アフリカ月間中、今後継続的に開かれるイベントの発表もあり、そのなかで一つ興味深いものがあった。 南アフリカ・ケープタウンで毎月第一土曜日に行われる音楽イベントで、新興の音楽シーンと気候変動への意識を同時に喚起する、というものだ。 気候変動の解決を促進する目的を掲げた団体 Climate Actions Now(CAN)の音楽部門が主催となる。

ケープタウンの若手ミュージシャンのライブやDJなどをパフォーマンスをしつつ、同時に環境活動のネットワーキングも行うという。 気候変動の問題に変化をもたらしたいと考えている18歳以上の人なら誰でも参加可能で、気候変動に対して積極的に取り組むケープタウンの若者がネットワークを作り、交流するネットワーキングイベントが無料で提供される。 第1回はナイトクラブ「District」で開催され、DJのTease(ティーズ )やダンスミュージックアーティストのTinta Tribe(ティンタ・トライブ)など、南アフリカの音楽シーンで人気のある新進気鋭のDJやヒップホップアーティストが出演していた。

CANの創立者であるRobert Stephenson(ロバート・スティーブンソン)氏はこう話す。 「ケープタウンで新たに出現した音楽シーン、そして気候変動の解決策に対する人々の認識を高めることができます」。
新興音楽シーンへの熱と、気候変動の活動への熱を掛け合わせる発想は、非常に「いま」だ。 そういった新たな土壌のうえに、今年はまたどのような取り組みが生まれていくのか、楽しみに待ちたい。

Eyecatch Graphic: Midori Hongo
Words: Hiroko Aoyama(HEAPS)