「レコードの色は?」と聞かれたら、多くの人が真っ黒な盤面を思い浮かべて「黒」と答えるのではないでしょうか。しかし、なぜレコードは黒いのでしょうか。その理由には、素材としてのヴァイナルの特性と、音づくりの知恵が関係しています。オーディオライターの炭山アキラさんが、黒い盤の秘密と、カラーレコードやピクチャーレコードの特徴について解説します。
レコードが黒い理由と、カラーレコードの存在
レコードを作る素材はヴァイナル、つまり塩化ビニールが用いられています。純粋の塩化ビニールは透明な物質ですが、それではなぜレコードの大半は黒いのでしょうか。
本来の塩化ビニールはレコードのようなしなやかな素材ではなく、固い結晶質なのだそうです。それにさまざまな改質剤を混ぜ込むことで、私たちのよく知るビニール袋や塩ビパイプ、そしてレコードなどに適した物性へ仕立てていくのですね。そんな混ぜ物の中で、大半のレコードには強さとしなやかさを増すために、炭素が混入されます。自動車用タイヤのゴムが黒いのと、原理は同じですね。
しかし、世の中には透明のヴァイナルを使ったレコードや、赤やオレンジ、青などに染色された透明レコードがありますし、ピンクや赤などの不透明なカラーレコードも存在します。これらは強度的に大丈夫なのでしょうか。
カーボンが混入された盤と絶対的な比較をするのは難しいものがありますが、一つの例として、わが所蔵盤に「Made in Occupied Japan」と記された、赤い透明レコードがあります。GHQ占領下の日本で製作されたレコード、という意味です。つまり、LPレコードが発売された1948年から、サンフランシスコ講和条約で日本の占領が解かれた1952年までの4年間に生産されたレコード、ということになりますね。
そのレコードは、かなり傷つき衰えてはいるのですが、70年以上を経た現在でも未だしっかりと音楽(教会の説法と讃美歌でした)を再生することができています。カーボンを含有しないレコードでも、それほど強度や寿命については心配しなくていいようですね。
カラーレコード、ピクチャーレコードの魅力
ごく稀に、レコードの盤面全体が写真やイラストになっている、「ピクチャーレコード」というものへ出合うことがあります。これは、透明ヴァイナルの中心部に写真やイラストをプリントしたシートを入れてプレスした盤です。扱いは一般的なレコードと変わりませんが、アーティストのファンには珍重されるようですね。
カラーレコードやピクチャーレコードは、特にポップス系の音楽なら聴く前から心浮き立つような気分にしてくれる、という副次効果があるように感じます。一方、黒い盤に比べて音溝による光の反射が分かりづらく、曲間へ針を落とすのが結構難しくなったりもしますので、取り扱いの際にはご注意を。
関連記事
Words:Akira Sumiyama

