アクリルを採用した透明感あるデザインと、ノイズを抑えたクリアなサウンドが特徴のレコードプレーヤー『AT-LPA2』。30mm厚のシャーシと20mm厚のプラッターにより安定した回転を実現し、電源を独立させる構造で不要な干渉も低減しています。

本記事(紹介編)では、オーディオライターの炭山アキラさんが、その設計や構造面からAT-LPA2の特徴を解説します。

アクリル筐体と別体電源を採用したAT-LPA2の特徴

オーディオテクニカは、かつて創業60周年記念の限定モデルで、キャビネットもプラッターもアクリルの、ほとんどシースルーというべき美しいプレーヤー『AT-LP2022』を発売しましたが、もう瞬く間に売り切れてしまい、現物を見たことがないという人も少なくないのではないですか。かくいう私も、見たことこそありますが自分の手でじっくりテストすることができないまま姿を消してしまった、実に惜しい存在でした。

そのAT-LP2022を大幅グレードアップし、レギュラーモデルとして発売されたのが『AT-LPA2』です。外観はそっくりですが、プラッターは16mm厚から20mm厚へ変更されています。たった1.25倍の重量増加ですが、プラッターの重量は回転の滑らかさと密接な関係を有しますから、それを考慮してのグレードアップと考えるべきでしょう。また、たったこれだけの違いで、見た目の重厚感が大幅に増していることにも気づきます。

最も大きな違いは、電源です。AT-LP2022は一般的なACアダプターでドライブモーターへ給電されていましたが、AT-LPA2は幅13.3cm、高さ5cm、奥行き22.8cmの立派な制御ユニットが独立して設けられ、電源ケーブルをそのボックスへ挿し、そこで生成された高品位の直流をモーターへ供給しています。

また、電源のON/OFFと33/45rpmの回転数切り替えも制御ユニットで行いますから、AT-LP2022の本体へ装備されていた切り替えツマミがAT-LPA2にはなくなり、アクリルシャーシの美しさがさらに際立つことになっています。

もう一つ、両者の大きな違いは、付属カートリッジです。AT-LP2022にはVM型の『AT-VM95E』が標準で付属し、シバタ針の交換針が同梱されていました。AT-VM95Eは接合の楕円針が装着されたグレードで、『AT-LP8X』と同じようにノブの色がブラックの特別品『AT-VM95E BK』です。シバタの交換針『AT-VMN95SH CL』はさらに特別で、何とクリアの樹脂が用いられたものでした。

一方、AT-LPA2にはMC型の『AT-OC9XEN』が標準装着されています。AT-OC9Xシリーズでは純鉄製のヨークが用いられた弟グレードの製品ですが、後述するように全く侮れない性能を持つ、MCカートリッジの旨味を存分に味わわせてくれるカートリッジです。

また、目立たない項目ですが、ヘッドシェルがアルミダイキャスト製でリード線込み8.5gのAT-LP2022に対し、AT-LPA2のヘッドシェルはアルミニウム削り出しで11gとなっています。トーンアーム先端の重量が増えることは一概に歓迎できることではありませんが、それでも彼我の強度差、カートリッジをどれだけしっかり支えられるかを考え合わせると、これは大幅なグレードアップになると私は考えています。

ちなみに、両者のヘッドシェルは寸法比が全く同一で、『AT-HS4』(仕上げによって末尾に記号が付される場合あり)ヘッドシェルが採用されているオーディオテクニカのプレーヤーには、どれもAT-LPA2のアルミ製ヘッドシェルを装着することが可能です。2.5g重くなっているので、すべて上手くいくとはいい切れませんが、AT-HS4は『AT-LPW50BT RW』をはじめいくつものプレーヤーに用いられていますから、AT-LPA2のシェルを導入してみるのも、一つの実験としては有効でしょう。

トーンアームは、寸法比こそ同一ですが両者でサポートの形状が異なり、AT-LPA2の方がより高度な作りとなっていることが分かります。両者とも、トーンアームは高さ調整が可能になっており、世界のカートリッジをいろいろ楽しむことが可能です。また、AT-LPA2には重量級のカウンターウエイトが標準で付属しており、AT-LP2022が使用範囲11.5~16.5g(ヘッドシェル込み)であるのに対し、AT-LPA2は17.1g~24.9g(同)と大幅に広げられているのが大きな魅力です。

この美しく高度なプレーヤーは、カートリッジがヘッドシェルへあらかじめ取り付けられているし、もちろんアームも装着済みで、高さは純正カートリッジのAT-OC9XENにしっかりと合わせてあります。ターンテーブルシートもいらないし、見た目より遥かにインストールの手間がかからないプレーヤーといってよいでしょう。

レビュー編では、AT-LPA2を実際に試聴し、クラシック、ジャズ、ポップスの再生やカートリッジ交換による音の変化を紹介します。

AT-LPA2

レコードプレーヤー(ベルトドライブターンテーブル)

AT-LPA2

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Words:Akira Sumiyama

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