前回のオーディオライターのレコード講座ではターンテーブルが回転する仕組みをふたつご紹介しましたが、実はそれ以外にもドライブには種類があるのです。 今ではちょっと珍しい駆動方式について、オーディオライターの炭山アキラさんに解説していただきました。

前回の記事はこちら: ターンテーブルの種類 〜オーディオライターのレコード講座〜

「現在のプレーヤーはほとんどベルトドライブ方式かダイレクトドライブ方式に大別されるといってよい状況ですが、以前はもっとさまざまなドライブ方式がありました。 簡単に解説しておきましょうか。 」

アイドラードライブ方式

アイドラードライブ方式

プラッターのリブ裏側に大きめのコロ(アイドラー)を介してモーターから回転を伝える方式をアイドラードライブ、またはリムドライブと呼びます。 かつては米欧の放送局用高級プレーヤーに数多く用いられた方式です。

オーディオテクニカ創業者の故・松下秀雄さんは、天才エンジニアの故・寺垣武氏とタッグを組み、何億円もかけて世界最高を目指すレコードプレーヤーの開発に取り組んだことがあります。 その果実として誕生したプレーヤーは、おそらく世界で最後に開発されたアイドラードライブ方式であったろうと考えられます。

アイドラードライブ方式は、ベルトドライブに比べて回転に曖昧さがなくレコードの頭出しがしやすい点、また原理的に力強い音が出しやすい点が放送局に好まれました。 しかし1970年代に日本が開発したダイレクトドライブ方式は、その利点に加えて業務用として大切なメンテナンスフリー性でもアイドラードライブを圧倒し、この方式は歴史へ消えていきました。 今ではごく簡易なポータブル型プレーヤーの一部で、僅かに採用されています。

リニアモーター方式

プラッターの下部に円周状の薄い出っ張りを設け、そこへ非常に多数のN極とS極を交互にした磁石を埋め込み、それをプレーヤー・キャビネットへあけられた円周状のスリットへ差し込んで、内部で電磁石のN/S極を切り替える動作をすることでプラッターを回す、リニアモーター方式もかつて存在しました。 そう、もうすぐ実現する超高速鉄道リニアモーターカーと同じ動作方式です。

開発にも生産にも大変なコストがかかる方式だったので、あまり普及せずCD時代を迎える前に姿を消したこの方式ですが、ごく近年になってスロベニアの会社がプラッターを中空に数cmも浮揚させるリニアモーター方式を開発し、世界を驚かせました。 2023年現在、それは日本でも購入できます。

Words:Akira Sumiyama