Face Recordsからのおすすめレコードを毎月お届け。2025年4月24日、Face Recordsが福岡・天神に新店舗をオープンしました。
この店は、九州初となるFace Recordsの拠点であり、「福岡天神から九州・アジアを繋ぐ、レコードカルチャーの交差点」というコンセプトのもと、地域に根ざした音楽交流の場を目指しています。今回は、Face Records 藍 隆幸さんに、店舗準備の様子とおすすめの商品レコードをご紹介いただきました。
グランドオープン前のレコード店は何をしてる?
アナログレコード店の立ち上げに立ち会える機会は、そう多くありません。実際に現場では、どのような準備が進められているのでしょうか。
Face Recordsが商業施設に出店するのは、これで5店舗目となります。過去には渋谷のミヤシタパークや札幌のステラプレイス、名古屋の中日ビル、京都の高島屋S.C.T8などに店舗を構えてきました。経験があるとはいえ、出店準備は毎回一筋縄ではいきません。場所ごとに違う特性や環境があり、それに合わせた進め方が必要です。
主な準備項目を挙げると、
- 店舗コンセプトの決定
- システム導入と調整
- コンセプトに合った商品の仕入れ
- 商品データの登録
- オーディオ機材のセッティング
- スタッフ研修 など
どれも時間と手間がかかる作業です。時には、予定していたシステムの導入が遅れて在庫の登録が進まなかったり、音響機器のセッティングで音が出ないトラブルが発生したりと、様々な問題が起こります。それでも、現場のメンバーが力を合わせて一つずつ解決していく、Face Recordsらしいチームワークがオープンを支えています。

今回はそんな準備期間の中で見つけたレコードの中から、いくつか気になったものをご紹介します。
Nick Heyward「The Kick of Love」

イギリスのポップバンド、ヘアカット100(Haircut 100)のヴォーカルだったニック・ヘイワード(Nick Heyward)のファースト・ソロアルバム『North of a Miracle』(1983年)に収録されている曲。
ニック・ヘイワードはルックスやファッションセンスも良くて、『North of a Miracle』のジャケット見開きはファッション誌のようなカッコいい写真のオンパレード。40年以上前にリリースされたレコードですが、そのファッションを含め、色褪せない魅力を持っています。「The Kick of Love」は、このアルバムの中では比較的地味だけれど、ジャージーな雰囲気とグルーヴ感のあるリズムで大人っぽい魅力が感じられます。
Aztec Camera「Walk Out to Winter」

アズテック・カメラ(Aztec Camera)はいわゆるネオアコ、ギターポップを代表するバンド。デビューアルバム『High Land, Hard Rain』(1983年)に収録されているこの曲は小気味いいリズムとギターのカッティングがカッコいい。タイトルにある冬以外の季節でも、この曲を聴くと外へ飛び出したくなります。
The Pale Fountains「Reach」

こちらもネオアコを代表するバンド。『Pacific Street』(1984年)に収録された「Reach」は、冒頭のヴォーカル部分の後に広がる軽やかでメロディアスなサウンドと、60年代風のブラスやコーラスが印象的です。このレコードを手に取るたびに、「パンクバンドかな?」と思わせるジャケットの雰囲気と中の音楽にギャップを感じます。
Echo & The Bunnymen「Rescure」

80年代を代表するポストパンクバンドです。この「Rescure」は『Crocodiles』(1984年)に収録されているキャッチーな1曲。
キャッチーでありながら尖った雰囲気もあり、時代を感じさせながらも今聴いても新鮮です。
福岡の記憶と2枚のレコード
80年代のネオアコ、ニューウェイヴ近辺のデビューアルバムを中心に4曲紹介しましたが、次に個人的な福岡の思い出に関連した2曲をご紹介したいと思います。
Frank Zappa「Twenty Small Cigars」

1985年ごろ、福岡に住んでいた時期がありました。当時からよく中古レコード店を巡っていたのですが、時には佐世保まで足を運ぶことも。外国人が多く集まるバーでソウルやファンクを聴いていたら、突然米軍基地のお客同士が殴り合いの喧嘩を始めて、MP(Military Police)が飛んできたり、文化の違いを感じる出来事にも遭遇しました。
フランク・ザッパ(Frank Zappa)のこの曲が入ったアルバム『Chunga’s Revenge』(1970年)は、その時に佐世保のレコード店で買ったものです。
Chick Corea「Crystal Silence」

単身で福岡に住んでいた当時、洋楽好きな人がまわりに少なく、福岡・親不孝通りの路地裏で偶然見つけたジャズバーが心のよりどころでした。『Return To Forever』(1972年)は当時福岡のレコード店で買っていたものの、住んでいた部屋にオーディオ機器が無かったので、このお店でよく聴かせてもらいました。
「Crystal Silence」はその場にいたお客さんの一人が好きだと言ってよく聴いた1曲です。バーが閉まるまで飲んで、夜明けの白々とした空の下を一人で歩いて帰った思い出とこの曲の記憶が重なります。
アナログレコードがつなぐ人と文化
アナログレコードには、単なる音楽メディアを超えた特別な魅力があります。記憶やその場の空気感は、カルチャーと結びついて残っていくものです。
福岡の天神エリアは、九州の文化・経済の中心地で、アジアとの玄関口として発展を続けています。そして、多くの著名なミュージシャンを輩出し、音楽カルチャーが盛んな街。この新しい店舗が、音楽を通じて人と文化が出会う場として育っていけばと思います。
ぜひFace Records 福岡天神ワンビル店にお立ち寄りください。あなたの音楽の記憶を呼び起こす1枚が、きっと見つかるはずです。


Face Records TENJIN ONE FUKUOKA BLDG.
フェイスレコード 福岡天神 ワンビル店
開業予定日: 2025年4月24日(木)
営業時間: 平日:11:00~20:00 土日祝:10:00~20:00
定休日: 商業施設に準拠
所在地: 福岡県福岡市中央区天神 1-11-1 ONE FUKUOKA BLDG. 2F
オープニングイベント開催
2025年5月3日(土)~5月6日(火)の4日間、福岡店オープンを記念して、須永辰緒と福岡の音楽カルチャーにゆかりのあるスペシャルゲストによるDJライブを開催します。
詳細は特設ページおよび福岡店のSNSをご確認ください。
Face Records
”MUSIC GO ROUND 音楽は巡る” という指針を掲げ、国内外で集めた名盤レコードからコレクターが探しているレアアイテムまで、様々なジャンル/ラインナップをセレクトし、販売/買取展開している中古盤中心のアナログレコード専門店。 1994年に創業し、現在は東京都内に3店舗、札幌、名古屋、京都に各1店舗、ニューヨークに1店舗を展開。 廃棄レコードゼロを目指した買取サービスも行っている。
Words: Takayuki Ai