音楽制作の現場では、基準となる「リファレンスヘッドホン」が欠かせません。それは、アーティストやエンジニアが意図した音を正確に判断するための、いわば「音を聴くための基準点」です。今回ご紹介する『ATH-R70xa』は、まさにその役割を担うために生まれたプロフェッショナルヘッドホン。なぜ、音のプロフェッショナルたちはこの一台に信頼を寄せるのか。その理由を紐解くことは、私たちが音楽をより深く楽しむためのヒントになるかもしれません。

音が生まれる現場の「空気感」まで描き出す、開放型という選択

ヘッドホンには、構造の違いによって大きく二つのタイプがあります。一つは、外部の音を遮断し、音に集中しやすい「密閉型」。もう一つが、ATH-R70xaが採用する「オープンエアー型(開放型)」です。

オープンエアー型の大きな特徴は、まるでヘッドホンをしていないかのような、自然で立体的な音の広がりを感じることができること。ATH-R70xaの側面がハニカム状のメッシュになっているのは、ドライバーから発生する空気の流れをコントロールするためです。多くのプロのエンジニアが「まるでスピーカーで聴いているようだ」と語るのは、この構造がもたらす広大なサウンドステージに理由があります。

音楽制作、特にミキシングやマスタリングといった最終工程では、特定の楽器の音を際立たせたり、全体のバランスを整えたりする繊細な作業が求められます。ここで必要になるのが、低音から高音まで、すべての音域を誇張することなくフラットに再生する「正確性」です。ATH-R70xaは、まさにその正確な音を届けるためのリファレンスとして設計されています。

しかし、どんなに優れた道具でも、長時間の使用に耐えられなければプロの現場では使われません。ATH-R70xaが支持されるもう一つの理由は、約199gという驚くほどの軽さと、頭に優しくフィットする独自の装着機構にあります。プロの厳しい要求に応える音質と、長時間の創作活動を支える快適性。その両立が、このヘッドホンの信頼を支えています。

音楽のプロだけでなく、プロを目指す人や本質を求める音楽ファンがこのヘッドホンを手に入れること。それは、「アーティストが届けたかった音、そのものを聴く」という、最も贅沢な音楽体験への入り口となるでしょう。

ATH-R70xaの詳細を見る

Words: Kosuke Kusano
Photos:Hinano Kimoto

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