アプリ再生画面

どうしても“玄人の音楽”のイメージがつきまとう二大ジャンルといったら、ジャズとクラシック音楽に尽きると思う。特に後者は格式の高さを感じずにはいられず、小中学校の音楽の授業で習ったきり、耳が遠のいている人は筆者だけじゃないと思う。だがこのアプリ全盛期(もうずっとだけど…)、近年続々と登場するクラシック音楽系のアプリが、クラシック音楽とみんなの耳の距離を、優雅に近づけてくれている。

クラシック音楽を「いまの気分」で選ぶ

2016年に米国で誕生した「 Classical Radio(クラシカル・ラジオ)」もそのひとつ。中世から今日までの厳選されたクラシック音楽を、57のチャンネルからストリーミングできる無料アプリだ。アプリではバッハやベートーヴェン、ドビュッシー、リスト、チャイコフスキーといった作曲家ごと、オルガン中心やヴァイオリン中心といった楽器ごとなどからの選曲、またバロック時代(17世紀初めから18世紀中頃までのヨーロッパ音楽を生み出した時代)やルネサンス期(15世紀から16世紀の多くの身近な現代楽器で作曲された時代)、ロマン派、現代音楽といった時代ごとにも選べる。

作曲家の選択画面

チャンネルの設定も秀逸。「ブラームス」や「シューベルト」など作曲家縛りでじっくりブラームス浸け、シューベルト浸けになれるものから、「リラックスできるピアノ音楽」「ノクターン(夜想曲。ロマン派時代に作られたピアノのための小曲)」など、気分で設定できるものも。クラシックのことはよくわからなくても「とりあえず気分で選ぶ」ができるのは、だいぶハードルが下がって聴きやすい。「クラシカルクリスマス」など季節物まである。かつて音楽室で聴いた、バッハやベートーヴェンだけでないクラシック音楽の深淵な世界へするりと誘ってくれる。

AIでなく、クラシック音楽の人がいること

クラシカル・ラジオは、登場から4年で10万件以上ダウンロードされ、クラシック音楽のアプリランキングで第1位に輝いている。その最大の理由の一つは、各チャンネルにプロのキュレーターが在籍しているという本気のキュレーションだ。通常のストリーミングサービスのようにAIが選曲するのではなく、クラシック音楽に精通する生身の人間が一曲一曲丁寧に選りすぐり、リスナーの耳に届けているのだ。
ゆえに、“裏の名曲”に出会えることもある。これにはクラシック素人の耳も玄人の耳もしっかり満足。アプリに寄せられたユーザーの声には「音質がとにかくいい」「クリアなサウンド」と音のクオリティを確証するものから「勉強中や寝る前など、いつでもこのアプリを活用しています」というヘビーユーズ体験まで、評価は高い。

リラックス効果や脳の活性化が期待できるといわれているクラシック音楽。朝一番に、クラシカルラジオを開いて穏やかなメロディーを聴きながら1日を始めるのも悪くない。

Eyecatch Illustration:YOHAKU YOKAI ART
Images:Classical Radio
Words:Yu Takamichi(HEAPS)