ラジオを聴くという文化は世界共通だ。レコードやストリーミング配信など、音楽を聴く手段が増えた今でさえ、ラジオで音楽を聴くことにこだわる音楽好きも多い。ディスクジョッキーのおしゃべりに時々入る雑音もいい。

「このアプリ上では、“国境”は存在しません」とうたうのは世界中のラジオを聴くことができるアプリ「Radio Garden」。世界中の約2万5,000以上のライブラジオ局にチューンインして、耳で世界各国に行った気分になれる。

日本の局からは演歌、ナイジェリアの局からは聞いたことのない言語のおしゃべりが

海外に行った際、地元のレストランやタクシー内で現地のラジオが流れているのを耳にしたことのある人は多いと思う。ラジオから外国語が聞こえてくるたびに、異国に来たのだと改めて思ったりするものだ。あの異国情緒溢れる感じを家にいながら味わせてくれるアプリが、オランダ発、世界中のラジオが聴ける無料アプリ Radio Garden だ。ドイツのラジオプロジェクトTransnational Radio Encountersの研究者とThe Netherlands Institute for Sound and Vision、アムステルダムのデザイン会社MonikerとStudio Puckeyによってデザイン、開発された。

配信中のラジオ地点がわかるRadioGardenの世界地図
(出典:Radio Garden Official Website

世界のラジオを聴くというとなんだか複雑そうに聞こえるが、アプリの使い方はとてもシンプル。アプリをダウンロードして開くと、Google Earthのような地球儀が出現し、この時点でワクワクする。地球儀を回す要領で、画面上の地球儀をスワイプして動かす。地球儀上に散らばっている緑の点がラジオ局だ。好きな国や都市に移動し画面中央にある丸に点をかざせば、そのラジオ局がオンエアしている曲や番組を聴くことができる。気に入った局があったらお気に入り登録もできる。

本当に世界で「今この時」に流れている曲を、自分のアプリから聴けるのだろうか? と、試してみた。まずは、日本に行ってみると、約30局ほどのラジオ局を発見。筆者の故郷・京都のラジオ局「京都リビングFM845」では演歌が流れていた。続いて北上し、ロシアへ。ウラジオストクのラジオ局では、ディスクジョッキーがロシア語でぺらぺらとたのしそうにおしゃべり中。サハリンでは、最近流行りのポップソングが流れていた。

地球儀をぐるっと一周させて南下。メキシコ・メキシコシティのラジオ局では、スペイン語の陽気でエキゾチックなラテン音楽が。そのまま地球儀を右へずっと移動させ、アフリカ大陸へ。ナイジェリアに行ってみると、なにやら聞き覚えのない言語でまくしたてるトーク番組が。
続いてイタリアへ行ってみると、イタリア語のフォークソングっぽいものが流れている。中東はどうだろう? イラクのバアクーバという都市ではアラブ語のEDMが流れ、インドではディスクジョッキーがインド特有の口調で喋っていている。ちなみに、中国の一部地域のラジオ局はアクセス不可能だった。

遠く離れた人々と一緒にいる気分になる

Radio Gardenの醍醐味は、近所を散歩しながら、仕事をしながら、寝る前のベッドの上で世界を旅している気分になって世界のラジオでいま流れている曲を聴くことだ(あとは、以前訪れたことのある国の地元ラジオを聴いてノスタルジーに浸るのも悪くない)。が同時に、名前も聞いたこともない街や全然知らない都市の日常を覗いてしまったかのような感覚になることも、たのしみ方の一つだと発見した。

毎日流れていく世界のさまざまな都市のいつものラジオ。自分の日常に、世界のみんなの日常を流してみよう。

Eyecatch Illustration: YOHAKU YOKAI ART
Words Ayano Mori (HEAPS)