Credit5 〜あの人が「クレジット買い」した5枚のレコード〜
第43回：良彰（ラッキーオールドサン）

今、世界的な再注目の最中にあるアナログ・レコード。デジタルで得られない音質や大きなジャケットなどその魅力は様々あるが、裏面にプロデューサーやバックミュージシャン、レーベル名を記した「クレジット」もその1つと言えるだろう。

「クレジット」――それは、レコードショップに並ぶ無数のレコードから自分が求める一枚を選ぶための重要な道標。「Credit5」と題した本連載では、蓄積した知識が偶然の出会いを必然へと変える「クレジット買い」体験について、アーティストやDJ、文化人たちが語っていく。

今回登場するのは、タイムレスなポップス感覚と確かなリリシズムをインディロックに落とし込む男女デュオ、ラッキーオールドサンの良彰。紹介された5枚のレコードを道標に、新しい音楽の旅を始めてみよう。

良彰が考える「アナログ・レコードの魅力」

自分はコレクターでもないし、さほど詳しい人間でもありませんが、レコードはとても好きなメディアです。飛び出し絵本のような刺激があり、全身体で聴いているような感覚になります。レコードにはレコードの、一枚のジャケット写真やクレジットの地平を越えて想像する、息づく世界がある気がします。

デジタルによって限りなくアナログを模倣できる時代になりましたが、それでもアナログを選びたいときがあります。生身の一人一人の替がきかないように、一枚一枚の出会いを大切にしていこうと思います。

V.A.『The Best Of Beverley’s Records』

レゲエの名門レーベルのオムニバス。ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ（Bob Marley & The Wailers）も入ってるし、間違いないはず……、ロックステディって実はよく知らない……、からの、最高じゃまいか。むしろここからクレジット買いに繋がりそうな出会いの一枚です。

武部行正『ゆふすげびとのうた』

秋冬に聴きたい一枚。クレジットには関西フォーク、ブルースの名だたる顔ぶれが並んでいるのに、なぜか孤愁を感じる。なぞろうと思ってもなぞれない夢みたいな、不思議な歌ばかり。武部行正さんがリリースされているレコードはこの一枚だけで、キャリアもまた謎めいていてほっとけない作品。

GIRLS『ALBUM』

もしかすると、これが初めて買ったレコードだったか。アメリカ旅行の思い出に買った青春の一枚。当時はプレーヤーを持っていなかったので飾っていました。裏ジャケの写真にガラケーが写っていて、スマホが普及し始めた前後くらいの、あの時代の空気感ごとパックされている気がします。

The Morning Benders『Big Echo』

友人にプレゼントしたものの、自分も欲しくなって買い直したくらい好きなレコード。クレジットのスペシャルサンクスにはガールズ（GIRLS）。彼らが繋がっていることに興奮したのを覚えています。自分にとってレコード入門になったのは、ザ・モーニング・ベンダーズ（The Morning Benders）やガールズでした。

Emahoy Tsege Mariam Gebru『Spielt Eigen Kompositionen』

エチオピアの修道女の方のピアノ作品。クレジットがないから逆に買うというのも裏「クレジット買い」なのではないでしょうか。関係が見えない故の強い引力があります。ご本人による手紙のような解説付き。窓を開けたくなるレコード。

Edit：Shoichi Yamamoto