2026年3月17日(火)から 6月7日(日)までの期間、東京都写真美術館で「W. ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代」が開催される。

日本の住宅で「ロフト」というと、天井を高くした部屋の一部を2層式にして作られた空間のことを指すことが多い。一方、アメリカで「ロフト」というと、もともとは工場や倉庫だった建物の広い空間をリノベーションしたアパートやアトリエを指し、特にニューヨークではアーティストやクリエイターの集まる拠点として発展してきた。

1950年代のニューヨークには、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)やマイルス・デイヴィス(Miles Davis)はじめとするジャズミュージシャン、サルバドール・ダリ(Salvador Dalí)や抽象表現主義の画家たち、ロバート・フランク(Robert Frank)やダイアン・アーバス(Diane Arbus)などの写真家まで、同時代を代表する多様な表現者たちが集うロフトがあった。場所は6番街821番地。そこでのアーティストたちの交流の様子を、W. ユージン・スミス(W. Eugene Smith)は写真に収めていた。

W. ユージン・スミス 《セルフ・ポートレイト》 より 1957年頃 ©1957, 2026 The Heirs of W. Eugene Smith、画像提供: Center for Creative Photography, The University of Arizona: W. Eugene Smith Archive
W. ユージン・スミス 《セルフ・ポートレイト》 より 1957年頃 ©1957, 2026 The Heirs of W. Eugene Smith、画像提供: Center for Creative Photography, The University of Arizona: W. Eugene Smith Archive

スミスは、20世紀のドキュメンタリー写真を代表する写真家だ。

母親の影響で幼少期より写真に親しみ、地元紙での活動を経て、1940年代からは報道写真に取り組むようになる。第二次世界大戦中には、写真でニュースを伝えるグラフ誌『LIFE』の特派員として、沖縄やサイパンなどの激戦地を取材。戦後も同誌を中心に、〈カントリー・ドクター〉、〈慈悲の人 シュヴァイツァー〉、〈水俣〉など、人々の生活に密着した作品を次々に発表し、複数の写真と短い解説文を組み合わせて物語を紡ぐ、フォトエッセイの第一人者として確固たる地位を築いた。

1954年に『LIFE』誌を退いたスミスは、ニューヨーク・マンハッタンのロフトへ移り住んだ。(ちなみに、このロフトは1970年に開催された「The Loft」で知られるデヴィッド・マンキューソ(David Mancuso)のロフトとは別の場所である。)そこには、先述したジャズ・ミュージシャンや画家、写真家などのアーティストが集い、頻繁にジャムセッションが行われるなど、社交と創作の場となっていた。スミスはその環境の中で実験的な撮影や新たな表現を追求し、そこでの生活と制作は、彼の写真観を大きく変えることとなった。

W. ユージン・スミス 〈ジャズとフォークのミュージシャンたち〉より 1962年頃 東京都写真美術館 ©1962, 2026 The Heirs of W. Eugene Smith
W. ユージン・スミス 〈ジャズとフォークのミュージシャンたち〉より 1962年頃 東京都写真美術館 ©1962, 2026 The Heirs of W. Eugene Smith
W. ユージン・スミス 〈屋根裏部屋から〉より 1957-58年頃 東京都写真美術館 ©2026 The Heirs of W. Eugene Smith
W. ユージン・スミス 〈屋根裏部屋から〉より 1957-58年頃 東京都写真美術館 ©2026 The Heirs of W. Eugene Smith

東京都写真美術館で開催される「W. ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代」では、報道写真家としてだけでなく、芸術家としてのスミスの姿に光をあて、 “ロフトの時代” とその前後の作品が中心に展示される。

スミス自身の作品のほか、彼が書き残した言葉やスケッチ、新聞の切り抜きが貼りめぐらされていたロフトの壁の再現や、ロフトで撮影された当時のスミスとアーティストたちの映像を、当時その空間で流れていた音楽とともに鑑賞することができる。

会期中は、全3回のシンポジウムやギャラリートークなどの関連イベントも開催される。また、スミスを敬愛するジョニー・デップ(Johnny Depp)が自ら製作、主演を務め、日本でも大きな話題となった映画『MINAMATAーミナマター』が会期中に上映される予定だ。

W. ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代

W. Eugene Smith and New York: The Loft Era

会 期  2026年3月17日(火)〜6月7日(日)
開館時間 10:00 – 18:00(木・金は20:00まで)
会 場  東京都写真美術館 2階展示室(東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内)
Tel 03-3280-0099 

TOP MUSEUM

*会期中の休館日、観覧料など詳細につきましてはHPをご確認ください。

Eyecatch-photo:W. ユージン・スミス 〈私の窓から時々見ると…〉より
1958年 東京都写真美術館蔵 ©1958, 2026 The Heirs of W. Eugene Smith
Edit:May Mochizuki

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