癒しとウェルネスをテーマに、Face Recordsからのおすすめレコードを毎月お届け。 9月のテーマは「台風で気圧変化が辛い時期、気分を上げる手助けになる音楽」。 季節の変わり目で不調になりやすいとき、調子を整える手助けにおすすめの音楽をFace Recordsの藍隆幸さんがご紹介します。
台風の影響で悩むとき、音楽が心の支えに。
台風や気圧変化が影響しているのか分からないけれども、ずっと頭痛持ちで悩んでいます。 ズキズキとかキーンとする痛みじゃなく、後頭部がズーンとする痛みで、身体もだるくなります。 そんなときは、正直音楽を楽しむ気分にはなれなくて、静かに横になって痛みが鎮まるのを待つのみです。
とは言え、そんな辛いときこそ、選ぶ音楽によって気分を少しでも明るくすることができるかもしれません。
特に台風や気圧変化の影響で体調が優れないときには、心地よいメロディやリズム、雰囲気の良い音楽がリラックスや安心感をもたらすことがあります。
Chloe / Cooder
先日、ふと仕事でRy Cooder(ライ・クーダー)の話になり、棚から古いレコードを引っ張り出して以前よく聴いていた曲に針を落としてみました。 Ry Cooderがハワイのスラックキーのギタリスト、Gabby Pahinui(ギャビー・パヒヌイ)と共演した曲ですが、久しぶりに聴いてその心地良さにまた魅了されました。 まるでハワイの風景の中に身を委ねて昼寝しているような感覚になる曲です。
Ry Cooderは、アメリカンルーツミュージックを基盤にしながらも、世界中の音楽要素を取り入れた独自のスタイルが特徴です。 「Chloe」はもともと1927年頃Vocal付きの曲だったのですが、Benny Goodman(ベニー・グッドマン)などにイントゥルメンタルで取り上げられ、Joe Pass(ジョー・パス)なども演奏したジャズのスタンダードの曲です。 こちらはハワイアンのアコースティックギターサウンドとRy Cooderの音楽が見事に調和しています。 この曲を聴くと、まるで低気圧とは無縁の明るくてカラッとした気候を感じられます。 ハワイアンの音楽は、そのアコースティックサウンドで、心を癒す効果が高いのかもしれません。
この曲が入ったアルバム『Chicken Skin Music』で「Chloe」の1曲前にある「Yellow Roses」から通して聴いていただくと、より完璧な世界観が感じられると思います。
そう言えば、だいぶ前にハワイへ行ったとき、レンタルサイクルでホノルル大学の方まで行って、中古レコード店を見つけて一日中レコードを漁ったことがありました。
他の仲間が観光やビーチを楽しむ中、一人だけホコリまみれで中古レコードを探し続けたあの経験は、今となっては楽しい思い出です。
また、雨の音や波の音などの自然のサウンドも、心地よい環境をイメージさせてくれ、気分転換に役立つと言われています。
コロムビア効果音楽ライブラリーシリーズ / 監修 羽仁進、音楽 久石譲
「コロムビア効果音楽ライブラリーシリーズ」は、監修を羽仁進氏、音楽を久石譲氏が手掛けた効果音楽シリーズで、聴く人々に映画やドラマのような臨場感や自然などの心地よい環境を表現した ”効果音楽” が提供されております。
羽仁進氏と久石譲氏は、音楽プロデューサーや作曲家として多くの実績を持つ方々であることは説明するまでもありませんが、このシリーズでは、「自然と風景」や「季節の詩」といったテーマのレコードがあり、気分転換やリラックスに役立つ環境音楽を展開しています。
他にも「アクションと表現」はレアグルーヴ的なアプローチが見られる音楽で密かに人気があります。
残念ながらデジタル化されていないため、気になった方はレコードを見つけて買われることをお勧めします。
気象と創作の関係を考える
さて、台風や気圧変化をテーマにした音楽を調べると、その数は意外にも多く、様々なアーティストがそれぞれの視点で表現しています。
颱風/はっぴいえんど、颱風歌/サディスティック・ミカ・バンド、台風の歌/プリンセスプリンセス、台風/THE BLUE HEARTS、台風/森高千里、熱帯低気圧/堀川まゆみ、低気圧のせい/つしまみれ、高気圧ガール/山下達郎、などがあります。
うる覚えの記憶ですが、前に「実は台風って好きなんですよね。 不謹慎ですみません。 」と言っていたミュージシャンがいらっしゃいました。
非日常感が創作意欲を刺激するのか、確かに台風などの気象現象は、人々の感情や創造力に影響を与えることがあるようです。 天候の変化や気圧の影響は、人々の気分やエネルギーに変化をもたらすのでしょうか。 日常からの逸脱感や非日常的な刺激が生まれ、感覚や風景からインスピレーションを得てクリエイティブなアイデアが湧きやすくなるのでしょうね。
そして、音楽自体も気分を変化させる力を持っています。 聴く人に自然の中にいるような感覚を与え、リラックスや安心感をもたらす曲や非日常的に感情を高揚させたり、異次元の世界に連れて行ってくれる曲もあります。
台風や気圧の変化がもたらす非日常感は、クリエイティビティや音楽制作において、新たな扉を開くキッカケとなることがあります。 そのため、ミュージシャンが台風を好むようなことがあるのも、何か特別な力を感じるからこそでしょう。
台風や気圧変化がもたらす不確定性や非日常感は、音楽の創作過程において新たな可能性を与え、気分を上げる手助けとなるのかもしれません。 リスナーも、そのような音楽を通じて、気分転換や感情の表現を体験することができるでしょう。
そんな、台風、低気圧がタイトルになった曲の中からお勧めできる2曲ご紹介して今回のコラムを締めたいと思います。 台風や気圧の変化と音楽が織り成す不思議な関係を感じてみてください。
低気圧ボーイ / ナツ・サマー&流線形
台風の夜 / 具島直子
Face Records
1994年に横浜でメールオーダーのお店として始まり、1996年に渋谷区宇田川町に第1号店を開店した。 中古盤中心のアナログレコード専門店。 ヨーロッパやアメリカで買い付けたレコードと日本国内で集めたレコードを中心にセレクトしている。 現在は東京都内に3店舗、札幌、名古屋に各1店舗、ニューヨークに1店舗を展開。 廃棄レコードゼロを目指した買取サービスも行っている。
Words: Takayuki Ai