癒しとウェルネスをテーマに、Face Recordsからのおすすめレコードを毎月お届け。 10月のテーマは「ヨガをして身体と心を整えるのにぴったりの音楽」。 気温が下がってきて過ごしやすくなってきた反面、季節の変わり目は気付かぬうちにストレスが溜まりがち。 そんな時は呼吸法を意識してヨガを行ってみてはいかがでしょうか。 心と身体を調和させるのにおすすめの音楽を、Face Recordsの藍隆幸さんがご紹介します。

ヨガの呼吸法を意識できる音楽。

いつかヨガをしたいなと思い立ってから、もう10年以上が経ってしまいましたがいまだに実行できていません。 ですので、まだヨガの体験が無い人が想像力を働かせながら書いたコラムとして寛大な目で読んでいただければ幸いです。

まず、ヨガは呼吸法が大切ですよね。
緊張したりストレスが溜まったりしたままにしておくと、自律神経が失調したり、さまざまな疾患を引き起こす要因となりますが、呼吸法は自律神経の調整にとても役に立つと言われています。
そして、意識的に深い呼吸を行うと、普段よりも多くの酸素を体内に取り込めて血流が良くなります。 血流が良くなると新陳代謝が活発になり、免疫力が向上するといった効果も期待できるようです。

「ヨガの呼吸法で多くの酸素を体内に取り込む」という動作をイメージすると思い出されるのは伝説のフリーダイバー Jacques Mayol(ジャック・マイヨール)氏です。 彼がヨガによる呼吸法を身につけていたことや、水に潜る前に必ずヨガによる腹式呼吸とストレッチを行っていたことは有名です。 そして、彼の自伝をもとに映画『グラン・ブルー』が製作されたことは言うまでもありません。

Le Grand Bleu / Eric Serra

Le Grand Bleu / Eric Serra

映画『グラン・ブルー』のサウンドトラック、オープニング曲「The Big Blue」です。 この曲を聴くと気分は海の底、イルカと泳いでいるイメージ。 曲の雰囲気も心身をリラックスさせた状態で深い呼吸をするのにとても向いています。

ヨガは単なる身体の柔軟性を高めるだけでなく、精神的な平静と内面のバランスをもたらすものですが、このサウンドトラックは映画の印象と共にその体験をより豊かにしてくれます。

The Unaccompanied Cello Suites(無伴奏チェロ組曲) J.S. Bach / Yo-Yo Ma

The Unaccompanied Cello Suites(無伴奏チェロ組曲) J.S. Bach / Yo-Yo Ma

バロック音楽は、穏やかなリズムと美しい旋律が豊かな瞑想体験を提供します。 有名なバッハの無伴奏ですが、これが流れる部屋にはとても優雅な時間が流れると感じます。 チェロという楽器の響きがそう感じさせるのか、聴いているだけで豊かな瞑想体験ができそう。

穏やかで優雅なメロディが、深い呼吸を誘導し、ヨガをより効果的に行えるようサポートしてくれることでしょう。 Pablo Casals(パブロ・カザルス)の名演が有名ですが、今回はYo-Yo Ma(ヨーヨー・マ)版をご紹介しました。

Electric Counterpoint / Steve Reich

Electric Counterpoint / Steve Reich

Steve Reich(スティーヴ・ライヒ)は、ミニマル・ミュージックの先駆者ですが、そのシンプルなビートと穏やかなメロディは、ヨガや瞑想に集中するのに最適です。 彼の楽曲は、意識を外部の刺激から離れさせ、まるで精神的な静けさを探す旅へ導いてくれるようです。

この曲が収められている1989年のアルバム『Different Trains』にはPat Metheny(パット・メセニー)とアメリカ合衆国の弦楽四重奏団のKronos Quartet(クロノス・カルテット)も参加しています。 『Different Trains』はグラミー賞最優秀現代音楽作品賞を受賞しました。

Close Your Eyes / 山下達郎

Close Your Eyes / 山下達郎

「ヨガ」と聞くとこの曲の歌詞を思い出します。

”Close Your Eyes take a deep breath
Open your heart”

まるでヨガ教室に貼りだされているキャッチコピーのような歌詞、そしてとろけるようにスウィートなメロディー、深呼吸する音まで入っています。 リズム&ブルース~ロックンロールの歌手・ソングライターであるChuck Willis(チャック・ウィリス)の1955年の作品で、当時のドゥーワップグループThe Admirals(アドミラルス)やThe Five Keys(ファイブ・キーズ)が歌ってレコードを出しています。
山下達郎版は1980年に発表した一人多重録音のア・カペラ・アルバム『ON THE STREET CORNER』に収録されています。 このアルバムで取り上げられているものは山下達郎氏の審美眼で選ばれた本当に良いものばかりです。

ヨガに音楽を取り入れる。

ヨガのセッションで音楽を楽しむ際、レコード好きの私としてはぜひレコードで聴いて欲しいところではありますが、適切な音楽がセッション全体を通じて流れるようにすることや、個々のヨガスタイルに合わせて音楽を選択して、雰囲気を変えられることを考慮すると、プレイリストを事前に用意できるサブスクでの視聴がお勧めかも知れません。

ヨガは身体と心の健康を促進し、音楽はそれを深化させる手助けとなります。
呼吸法を意識しながらポーズを行う際に心地よい音楽を取り入れることで、ヨガの練習がより充実し、心と身体が調和する貴重な時間になるでしょう。
未体験の方も、音楽とともにヨガの世界に足を踏み入れてはどうでしょうか。
その心地よさが、身体と心を整える新たな道を切り拓いてくれることを祈ります。

Face Records

Face Records

1994年に横浜でメールオーダーのお店として始まり、1996年に渋谷区宇田川町に第1号店を開店した。 中古盤中心のアナログレコード専門店。 ヨーロッパやアメリカで買い付けたレコードと日本国内で集めたレコードを中心にセレクトしている。 現在は東京都内に3店舗、札幌、名古屋に各1店舗、ニューヨークに1店舗を展開。 廃棄レコードゼロを目指した買取サービスも行っている。

HP

Words: Takayuki Ai