ゴールデンウィークも過ぎて暖かくなってくると、いつもよりちょっとだけいい音楽を聴いてみたくなる。日差しがだんだん強くなり、窓を開けると風が気持ちよくて、どこか出かけたくなったり、逆に部屋でのんびり過ごしたくなったり。今回のテーマは「初夏の午後に聴きたくなるレコード」です。
初夏の午後、どこに行こうか、何をしようか悩むのも楽しい時間。そんな日常にちょうどいい距離感で気持ちよく寄り添ってくれそうなレコードを、Face Recordsの藍隆幸さんがご紹介します。
目的もなくレコ―ドを聴く休日
初夏の午後は、時計の針も少しだけゆっくり進んでいるように感じます。どこかに出かけたいと思いながらも、何をするでもなく、部屋の中にいるだけで、どこか満たされた気分になる。そんな時間にふと針を落としたくなるようなレコードたちを気ままに選んでみました。
Lantern Parade「甲州街道はもう夏なのさ」

甲州街道で職務質問されながら「もう夏なんだ」と気付いた自分を歌った曲。京王線、京王井の頭線、JR中央線あたりのカルチャー圏である甲州街道を舞台にしているところが、職務質問されている「自分」へ共感してしまうポイントなのかも知れないと思いながらこの曲を聴きます。Lantern Paradeは清水民尋のソロ・プロジェクトで、この曲は曽我部恵一らによるリズムのグルーヴ感がとても心地よいです。アレンジの違うバージョンもありますが、ここでは2013年にリリースされたシングル盤をご紹介します。
Basia「Promises」

初夏にぴったりのダンサブルなボサノヴァリズムが心地よい曲で1987年にリリースされました。スピード感のあるリズムに乗る間奏のスパニッシュ・ギターがとても爽やかで、この曲を聴きながら休日の昼間にビールが飲みたくなります。バーシア(Basia)はジャズ、ファンクの要素にラテンフレーバーをミックスしたファンカラティーナの流れをくむバンド、マット・ビアンコ(Matt Bianco)の元メンバーです。
Tapioca「Samba Em Kigali」

タピオカ(Tapioca)は、ベルギーを拠点に活動するブラジリアン・フレーバー溢れるポップファンクバンド。2023年リリースの2枚目のアルバム『Samba Em Kigali』は、この曲をはじめ清涼感のある曲が満載で、ドリーミーな初夏の午後を楽しむことができます。
Joey Edwards「How Big Is Big?」

ジョーイ・エドワーズ(Joey Edwards)については詳しい情報があまり見つかりませんが、ニューヨーク出身のシンガーソングライター。1960年代後半には、ジョーイ・レヴァイン(Joey Levine)という名前で作曲やプロデュース活動を行っていたようです。1966年にリリースされたこの曲は、ミディアムテンポでまどろむようなメロディが心地よく、ソフトロックの隠れた名曲と言えます。
The Loch Ness Mouse「Dee C. Lee」

ノルウェーのギターポップバンド、ザ・ロッホ・ネス・マウス(The Loch Ness Mouse)は、うっとりするようなメロディやリズム、そしてハーモニーが魅力で、プリファブ・スプラウト(Prefab Sprout)を思わせる特徴があります。特に1枚目のアルバム『The Loch Ness Mouse』収録の「Warm Circuitry」は特にその特徴が強いです。また、彼らには「The Cherry Blossom in Japan」「Simple Song for a Suzuki」「A Name for 2002 (Komorebi)」といった、日本と関連深いタイトルの楽曲もあり、彼らが相当な親日家であることがうかがえます。
「Dee C. Lee」は、2019年にリリースされた2枚目のアルバム『The Loch Ness MouseⅡ』に収録された一曲。洗練されたポップなメロディと緻密なアレンジが心地よく、疲れを癒して元気が出る仕上がりです。
Pat Metheny Group「(Cross The)Heartland」

パット・メセニー・グループ(Pat Metheny Group)が1979年リリースした名作。筆者の記憶では、1980年頃、マヨネーズかサラダドレッシングのTV CMでこの曲が使われていたように思います。そのCMはこの曲が収録されているアルバム『American Garage』のジャケットと同じように、アメリカのキャンピングカーAirstreamが停まっているオートキャンプ場の映像が使われていたのですが、この曲のイントロとぴったりで、毎年5月頃になるとこの曲を思い出します。
アトランダムにレコードをターンテーブルに乗せて楽しむ初夏の休日
今回ご紹介したレコードは、レコード棚の手前にあったものの中から、「なんとなく初夏っぽいな」と思ったものを気ままに選んでみました。アトランダムに選んだぶん、ジャンルも時代も国もバラバラですが、どれも “音が気持ちいい” という共通点を持っています。
「これ、なんか今の気分に合いそう」という直感を信じて、レコードを手に取る時間は楽しいものです。気温も気分も軽くなるこの季節、ぜひFace Recordsの店頭にもふらっと立ち寄ってみてください。棚の中に、あなたにとっての音が気持ちいい初夏のレコードが眠っているかもしれません。
Face Records
”MUSIC GO ROUND 音楽は巡る” という指針を掲げ、国内外で集めた名盤レコードからコレクターが探しているレアアイテムまで、様々なジャンル/ラインナップをセレクトし、販売/買取展開している中古盤中心のアナログレコード専門店。 1994年に創業し、現在は東京都内に3店舗、札幌、名古屋、京都に各1店舗、ニューヨークに1店舗を展開。 廃棄レコードゼロを目指した買取サービスも行っている。
Words: Takayuki Ai