完全にシャットダウンした2020年を経て、昨年からライブ会場やフェス会場の扉が開きつつあるいま。このタイミングで改めて確認しておきたいのは、身の安全を確保しながら音楽ライフを楽しむ方法と心構え。

コンサートやライブ、音楽フェス業界は二つの課題への対応を急いでいる。1つはポスト・パンデミックの「衛生面」。もう一つは「安全性」。2021年11月に行われた米テキサス州での人気ラッパーTravis Scott主催の音楽フェスで起きた悲劇的な事故* から安全面の管理強化が必要だとされ、また、オーディエンス一人ひとりの自己管理や自己防衛の意識換気・注意喚起の声があがる。

再開していく音楽ライフで気をつけたいこと。

公で助言する専門家たちの声や、アーティストとしての経験からティップスをシェアするティックトッカーの話などをまとめたチェックリストでなぞってみよう。音楽ライフのウェルビーイングは、一人ひとりが自分の身を守ることから。

*2021年11月に米テキサス州ヒューストンでおこなわれた米人気ラッパーTravis Scott主催の音楽フェスAstroworld Festivalで、観客がステージに殺到し、9歳から27歳の10人が死亡する悲劇的な事故が起きた。パンデミック後の開催でチケットが適切な人数以上に販売され人数制限がなされておらず、避けられた事故との声も。

ライブ会場でのウェルビーイングな服装をチェック

70年代からコンサートでの安全性を専門にするコンサルタントによると、コンサート前の“ファッションチェック”が重要とのこと。

☑︎スニーカーやスポーツシューズ、ハイトップ(足首を保護できるようになっているデザイン)のシューズを履こう。

滑りにくい、かつ、激混みの会場を移動する際・緊急時に速やかに動く際にも、安定した足元を保つことができるため。筆者の経験からいうと、踏まれても痛くないように「素材がかためのブーツを履く」もあり。靴の紐がとけないようにしっかりと二重結びすることもリストに加えよう。

☑︎高価なジュエリーや紛失を心配するアイテムは、身につけないこと。

身動きが取れないほどの立ち見フロアで物を落とし、それを探すためにフロアにしゃがみこむことで押しつぶされたりケガをしたりする可能性も。リスクのある状況を自ら作らない。

☑︎ジーンズなどのパンツスタイルなら、スマホやお金などの貴重品はフロントポケットに入れよう。

☑︎身分証や持病がある場合は薬の処方箋も忘れずに入れよう。

できればなるべく両手があいている状況にしておこう。専門家も、緊急時に避難する際に片手にスマホを持ちながらの移動は危険だと指摘している。

次は「コンディション」をチェック

ファッションチェックが終わったら、コンディションをチェックしよう。以前よりTikTokにてライブでの安全アドバイスを共有するアーティストの助言がこちら。

☑︎きちんとご飯を食べてから行こう。水分補給も忘れずに。

極力トイレに行かないように…と飲食を控えている人も多いと思うが、それではダメらしい。「ライブに行く前に、体を元気でヘルシーな状態にしておくこと」。

☑︎携帯の充電がフルチャージされているかを確認。

コンサートプロダクション/ナイトライフ業界で働く知人の助言。非常時にはスマホを「懐中電灯」として使う必要があるなど、さまざまなツールに。

ライブ会場に着いたらビール…の前に

ライブがはじまる前の高揚感は独特だ。ざわついた会場に、ウォームアップとして会場に流れる音楽(DJが生でかけていることも)、場所取り、交代で行くトイレにビール…。そんな“前”も醍醐味だが、専門家は「会場の空気を読もう」とコメント。「自分の周りの状況を確認する」ということ。

☑︎アヤしい人とは距離をとろう。

オールスタンディングのライブの際、フロアでの定位置を決める前にまずは人間観察を。たとえばすでにだいぶアルコールが入っている、など。不安だったら避けよう。

☑︎モッシュ・ピットは避けよう。

ポストパンデミックの管理・運営(人数制限やセキュリティの配置など)が当たり前になるまでは避けるのが懸命。またモッシュ・ピットの外縁も足がもつれたオーディエンスがなだれ込んでくるので避けたいところ。

☑︎自分の周りの環境に注意を払えなくなるほど、お酒を飲みすぎないこと。

☑︎緊急時にそなえて、出口がどこにあるのかを知っておくこと。

ただし、出口付近は人が殺到し危険にもなり得るため、こちらも。

☑︎すべての出口をちゃんと把握しておこう。緊急時には、なるべく人が殺到していない出口を選ぶこと。

友だちなど複数人で来ている場合は、

☑︎6メートル先に行くにも、必ず友だちと連れだって行こう。バディ・システム(相互援助または安全性のために、2人以上と一緒にペアを組むこと)は、あらゆるマイナスのことを回避できる。

「緊急時に離ればなれになった際にどこで落ち合うか」などを事前に決めておくことも大切。

ライブ中に自分の身を守るためのチェックリスト

ライブ中の自衛も見ておこう。11月に起きたTravis Scottのフェスでの事故は、モッシュピットで起こったわけではなく、観客のなだれ込みだった(犠牲者の死因は圧迫による窒息死)。

☑︎密集地帯に入ってしまったら、頭を守り、足は地面につけておくこと。ボクサーのファイティングポーズのように腕を上げ、心臓や肺の部分を圧迫の危険から守る。

☑︎所持品を落としても、むやみに拾おうとしないこと。

地面にしゃがむことで潰される危険があるから。人波のなかに飲みこまれてしまったら、

☑︎酸素を確保すること。そのため、怒鳴ったり、叫んだりしないこと。エネルギーも貯めておくこと。人波に対して立ちむかおうとはせず、波の流れにしたがって動く。

それでも、人波の圧力に負けて倒れてしまったら、なにをすべき?

☑︎胎児のように膝をかかえ、心臓と肺を守るために体の左側を地面につけるようにする。頭を守るために、腕や手を使う。

できるだけの対策をして、音楽ライフを楽しもう

最後に「コロナへの対策」も忘れずに。専門家が勧める対策は、当たり前だが慣れてしまえば怠りがちな「ハンドサニタイザー」と「マスク」。特に屋外の会場では手洗いができる場所が確約されていないので、いつでも手を清潔にできるハンドサニタイザーは必須。
久しぶりの音楽ライフは、いつもより気を引き締めて、自分の身を守りながら楽しもう。

Eye catch image: Yu Takamichi(HEAPS)
Words: Risa Akita(HEAPS)