LP、EP、SPにシングル盤。 「レコード」の種類はさまざまです。 そしてその違いは見た目の大きさのみならず収録時間、さらには音質にまで影響があります。 円盤ごとの特徴や楽しみ方について、オーディオライターの炭山アキラさんに解説していただきました。

「一口にレコードといっても、いろいろな種類のものがあります。 今回は主立った種類を挙げ、整理していきましょうか。 」

SP盤とLP盤の特徴と違い

最も一般的でよく流通しているのはLPでしょうね。 LPというのはLONG PLAYの略で、1949年のLP登場までのレコードを改めてSTANDARD PLAY=SP*と呼ぶこととし、それに比べて数倍の長さを収録することが可能なレコードという意味で名付けられたものです。

LPは直径約30cm(12インチ)の円盤で、材質は塩化ビニールです。 回転数は33 1/3回転で、それまでのSPは78回転でしたから、それと比べると半分以下の速度で回っていることになります。 それでもSPに比べるとノイズが激減し、再生できる周波数も大きく伸びました。 これは、昔のレコードプレーヤーではよく使われていた鉄針によるアコースティック再生も可能な音溝の太いSPに対し、LPはダイヤモンドかサファイアの針を使って電気再生に特化したことが大きな要因です。

また、天然樹脂のシェラックを主成分とするSPよりも合成樹脂の塩化ビニールはずっと柔らかくしなやかで、より細い溝の中に精密な音楽信号を収めることができたから、ということもいえるでしょう。

収録できる時間は、30cmのSP盤が片面5分弱程度だったのに対し、LPはその気になれば30分ほども収めることができます。 ただし、あまり収録時間を伸ばそうとすると音質に悪影響が出てしまうので、一般的には15~20分くらいのレコードが多いようですね。

なお、昔は25cm(10インチ)LPというものもよく販売されていましたが、今はもうほとんど見かけません。 SPレコードの時代はというと、特に歌謡曲や浪曲などは25cm盤が主流でした。 片面3分程度なので、1曲を収録するのにちょうどよかったからです。

シングル盤

レコードのもうひとつの主流というと、シングル盤が挙げられます。 直径17cm(7インチ)で45回転のものです。 材質はLPと同じ塩化ビニールです。 センター穴が38mm径と大きいことから、ドーナツ盤とも呼ばれます。 ちなみに、SPとLPのセンター穴は7mm径です。

シングル盤というのは、片面にポピュラー曲を1曲収められるように開発されました。 前述の25cmSP盤と同じ用途ですね。 とはいっても5分くらいは余裕で収められるようです。 大きなセンター穴は、ジュークボックスで使いやすいように採用された、という説が一般的です。

LPに比べるとずいぶんちっぽけで収録時間も短いシングル盤ですが、45回転で収録されているので、意外といっては失礼ですが結構いい音で収録された盤が多いものです。 また、何十年にもわたるヒットチャートの歴史をさかのぼりながら、当時のヒット曲をコレクションしていくという楽しみもありますよ。

EP盤とコンパクト盤

シングル盤とよく似た存在ですが、EP盤というものも存在します。 シングル盤と同じ器に、ポップスや映画の主題歌などを片面2~3曲収めたものです。 1曲だけのシングル盤と比べると、収録時間を伸ばさなければならないので、LPの項でも少し述べましたが、どうしても音質的に限界があり、LPが普及するに連れて徐々に存在感を薄くしていきました。

もう一つ、シングル盤と同じ17cm口径でコンパクト盤というものもあります。 これはセンター穴がLPと同じ7mmで、回転数も33 1/3回転とすることによって収録時間を伸ばし、ちょっと尺の長めな映画音楽やクラシックの序曲などを収めたり、ポップスのアルバムから何曲か抄録したものが発売されたりしていたものです。 特に後者はミニLPと呼ばれることがありました。

コンパクト盤はLPと同じ回転数で小さな17cm盤へ音楽を収録するものですから、LPの内周(外周よりも1周当たりの距離が短い)と同等になり、音質的にはもう一つというものが多かったように記憶しています。

12インチ・シングル、ソノシート

一方、シングルはシングルでも12インチ・シングルというものもあります。 つまり30cmのLPと同じ器に45回転で音溝を刻んだ盤です。 概してポップスのヒット曲を片面1曲だけ収めた盤が多いものですが、同じ曲で聴き比べると、LPに収録されたものも17cmシングル盤も音質的には全く太刀打ちできません。 普通に入手できるレコードで最高音質のものといってよいでしょう。
あと、ペラペラの透明樹脂に音溝を刻んだソノシートというものもあります。 例外はあると思いますが、17cm口径でセンター穴は7mm、33 1/3回転のものが主流だったように記憶しています。

これまでの個人的な体験では、ソノシートであまり良い音を聴いたことがないのですが、かつて製盤工場のエンジニアさんに伺ったところでは、ちゃんと作ればソノシートでもしっかりした音を楽しむことができるとか。 現代の技術を使って本気で作ったソノシートを、一度聴いてみたいものですね。

様々な種類のレコ―ド

レコードのフォーマットとしては、大体これで出尽くしたかと思います。 いろいろなレコードを買って、いざ音を楽しむ際には、まず回転数の確認をお忘れなく。 30cmだって45回転が結構あるし、コンパクト盤は17cmでも33 1/3回転ですからね。

皆さんもレコードの特徴をしっかり理解して、大いに音楽を楽しみましょう。 レコードって、本当に楽しいものですね。

Words:Akira Sumiyama