ベルトドライブ方式とダイレクトドライブ方式。 フルオート式とセミオート式、そしてマニュアル式。 ”ターンテーブル” にはいくつかの種類があります。 今回はその仕組みや機能の種類について、オーディオライターの炭山アキラさんに解説していただきました。

「レコードを聴くために必要なものといえば、第一にプレーヤーといってよいでしょう。 しかし、一口にレコードプレーヤーといっても、いろいろな形式・方式が存在します。 名称も含めて、今回はそのあたりを少し整理していきましょうか。 」

レコードプレーヤー?ターンテーブル?

その昔、オーディオの世界で「プレーヤー」といえばレコードプレーヤーのことでした。 ところが、1982年にコンパクトディスク(CD)が登場します。 CDを再生するプレーヤーをそのものズバリCDプレーヤーと呼ぶようになったのに対して、CDはデジタルですからそれとは違うアナログ信号を再生するためのプレーヤーということで、アナログプレーヤーという呼び方も一般化していきます。

一方1970年代にアメリカで勃興した、レコードプレーヤーから再生する音を加工して音楽を作り出していく、いわゆるDJたちの間では、プレーヤーは「ターンテーブル」と呼ばれるようになります。

そもそもターンテーブルというのは文字通り回転する台ですから、いわゆるプラッターとモーターを合わせた部分を総称する言葉です。 DJたちがプレーヤーをそう呼ぶようになったのは、ラフなDJプレイにも耐え、実直に回転し続けるターンテーブルこそ自分たちの音楽の源だ、という意識があったからだという説があります。 なるほどと思わせますね。

では、その違いとは

それでは、リスニング用のプレーヤーとDJ用のターンテーブルとでは、どんな違いがあるのでしょうか。 実もフタもない言い方をすれば、その両者に明確な線引きというものはありません。 というか、最初からDJプレイを想定して2台セットになったような商品を除けば、ほとんどのDJ用プレーヤーはリスニングにも問題なく使えます。

それでもDJ用のプレーヤーが厳然と存在するのはなぜかというと、リスニング用には必要のない機能が装備されているからです。 具体的には回転速度の変化や正逆回転、回転速度を素早く理解するためにプラッターの縁へ設けられた「ストロボスコープ」と呼ばれるギザギザ、そしてプラッターとは関係なく手でスルスルと正逆にレコードを回して、スクラッチ・プレイができるようにする「スリップマット」などです。

オーディオテクニカの製品でいえば、AT-LP120XBT-USBはスリップマットを除くDJ機能がすべて付属しています。 結構本格的なDJプレイにも対応したプレーヤーなんですよ。 でも、よほど特殊な音楽の聴き方をしている人を除けば、レコードを聴く際にDJ用の装備が必要になる人はほとんどおられないことでしょう。

AT-LP120XBT-USB

AT-LP120XBT-USB

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実際に、正逆回転機能をOFFにするとレコードの音はずっと滑らかで自然な質感になりますし、スリップマットはただレコードを聴くだけなら低音方向の支えが頼りなく、決してお薦めできるものではありません。 それでAT-LP120XBT-USBも、DJに使える仕様ではあるものの、リスニング用のターンテーブルシートを標準装着しているのです。

それらいろいろを考え合わせて、DJ用とリスニング用プレーヤーの違いを簡潔に述べるなら、DJ用プレーヤーは基本的に音楽鑑賞用にも使えるけれどそれには過剰な装備もが投入されており、リスニング用プレーヤーはそれらの必要がない分だけ低コストで音質向上へ振った製品作りができる、といったところですかね。

ターンテーブルの駆動方式

ターンテーブルを説明する際に、プラッターとモーターを合わせた部分という解説をしましたが、プラッターへモーターの動力をどうやって伝えているかによって、プレーヤーはいくつかの方式に分けられます。

ベルトドライブ方式

ベルトドライブ方式

プラッターそのものか、あるいはその下に設けられた小径のサブ・プラッターの脇へモーターを配し、ゴム製のベルトを介して動力を伝える方式を「ベルトドライブ」と呼びます。 オーディオテクニカのプレーヤーでは、AT-LP120XBT-USBを除くすべてのプレーヤーが、この方式を採用しています。

モーターは、1回転する間に必ず何度かトルク(物体を回す力)が変動します。 それがブルブルという振動となって針先に伝わると、音楽に大きな悪影響を与えてしまいます。 ベルトドライブ方式は、ゴムのベルトでモーターの回転をプラッターへ伝えるので、その振動がベルトに吸収されて伝わりにくくなり、ピュアな音楽再生を得られやすいという傾向があります。

オーディオテクニカ製品でもそうですが、世界中の現行プレーヤーを見回しても、圧倒的な多数がベルトドライブ方式を採用しているのは、やはりこの音楽再生力の高さを多くのメーカーが支持している、ということなのでしょうね。

ダイレクトドライブ方式

ダイレクトドライブ方式

一方、AT-LP120XBT-USBをはじめとするDJ用プレーヤーには、私の知る限り例外なくダイレクトドライブ方式が採用されています。 プラッターの軸そのものがモーターとなっている駆動方式で、多くの場合プラッターも含めて回転数を制御しているものですから、モーターとプラッターを含めて「フォノモーター」という言い方をすることもあります。

ダイレクトドライブは、他の世界中のモーターでも例を見ないくらい低速で、しかもギリギリまでノイズレスかつ精度の高い回転をしなければなりません。 ということは、ダイレクトドライブのモーターは専用開発せざるを得ず、膨大な数を出荷することができなければひどく割高な回転方式とならざるを得ません。

CDの登場前、日本のレコードプレーヤーは世界中で売れに売れ、おかげでダイレクトドライブ方式が圧倒的な主流でした。 翻って現在、この方式が相対的に割合を減らしているのは、やはり1990~2010年頃までにレコードプレーヤーの出荷台数が激減してしまったから、という要素もあると思います。

それではなぜDJ用にはダイレクトドライブのプレーヤーが適しているのか。 それは、とにかく回転が安定しているからです。 ベルトドライブはどうしてもモーターとプラッターの間にゴムベルトが介在している関係上、プラッターを手で押さえて回転数を下げたり、回転を止めたり、またスイッチ1つで瞬間的に逆回転させたり、などということは難しいものです。

それではリスニング用プレーヤーにダイレクトドライブ方式は不向きなのかというと、そういうわけではありません。 同方式の高級プレーヤーは、原理的にゴムベルトなどの介在物がないことに加え、モーターのトルクが極めて大きくまたプラッターもずっしり重いものが採用されていることで、曖昧さがなく力強い再生音を聴かせてくれる製品が多いものです。

自動?手動?トーンアームはどう動かす?

自動?手動?トーンアームはどう動かす?

プレーヤーにはフルオート式とセミオート式、そしてマニュアル式のものがあります。 フルオートというのは、プラッターへレコードを載せたらあとはスイッチ1つで演奏が始まり、片面の演奏が終わると針が自動的に上がってアームレストへ格納されるプレーヤーを指します。 オーディオテクニカならAT-LP60XBT GBKやAT-LP3XBT BKなどがそれに当たります。

セミオート式というのは、レコードに盤を載せてトーンアームをアームレストから盤面へ載せようとしたら、自動的にプラッターが回り始めますが針先を盤面へ載せるまでは自分の手で行い、片面演奏が終わったら自動的に回転が停まってトーンアームも格納される、という製品のことを指します。
マニュアル式のプレーヤーは、モーターのスイッチをONにしてプラッターを回転させ、トーンアームを手で盤面へ載せて演奏を始め、聴き終わったら自分でアームを元へ戻して回転を止める、そういうプレーヤーです。

ただし、大半のマニュアル式プレーヤーにもアームのリフターは装備されており、針先を所定の位置へ合わせたらリフターのレバーを下ろして針先を盤へ接触させることが可能です。 なぜそういう機構が必要かというと、手で落とすよりも針先が盤面へソフトに当たり、「ボツッ」というノイズが小さくなりやすいからです。

例えば、カートリッジの針圧を調整したり、トーンアームの高さを変えたりといった調整をする場合は、マニュアル式の方が何かと扱いやすいことが多いものです。 そのせいもあってか、高級機になるほどマニュアル式が増えてくる傾向がありますね。

いろいろなプレーヤーの方式を解説してきましたが、実はどんなプレーヤーでも「どう使うか」によって全然違う音にもなり得ますよ。

Words:Akira Sumiyama