みなさんが「オーディオ」と聞いて思い浮かべるのはどんなイメージでしょうか。 モノとしてのオーディオ機器を愛でたり、オーディオ機器の性能を追求したりといった、いわゆる「オーディオ趣味」の世界でしょうか。 勿論、そのような側面もあります。

しかしながら、「オーディオ」というものは何も特別なものではなく、普段我々がスマホやテレビなどを通して音楽に接しているように、日常生活に欠かすことができないものでもあります。

言い方を変えれば、日々の生活をより豊かなものにする音楽を、さらに深く楽しむためのツールが「オーディオ」であると言えます。 例えば、食べ物でいえば、こだわりの食材であったり、調味料であったりと、少し素材にこだわるだけで料理や食事がグッと美味しくなりますよね。 それと一緒で、「オーディオ」も、その接し方に少しこだわるだけで、いつもの音楽から得られる喜びは大きく倍増するでしょう。

きっとこのページを訪れてくださった皆さんは、音楽が好きな方たちだと思います。 多くの皆さんは、サブスクをイヤホンやヘッドホンなどで楽しんでいらっしゃると思いますが、手始めに、エアー、つまりスピーカーから音を出して楽しんでみませんか?

スピーカーといっても、大きなスピーカーを使ったり、大きな音を出す必要もありません。 スピーカーは、それ自体が振動して音を出すことによって、部屋の空気を震わせます。 それによって、再び実空間へと音楽が「再生」されるのです。 きっと、お気に入りの音楽が別モノとなって甦ることでしょう。

スピーカー(音が伝わる)の原理

そもそもスピーカーとは、「電気」を「空気の震え(疎密)」に変換するものです。 モーターが回る仕組みなどを理解する際に、「フレミングの左手の法則」というものを耳にしたことがあるかと思いますが、スピーカーもまさにその原理で動いています。

一般的なスピーカーには、音が出る丸い部品がついていると思います。 それを「スピーカーユニット」と呼びます。 その内側には、磁石とコイルが入っています。 表面には「振動板」と呼ばれるものが見えており、その裏側にコイル(ボイスコイル)と呼ばれるものが繋がっています。 ケーブルを伝ってスピーカーユニットに電気信号が流れることで、磁石のそばに置かれたコイルが動きます。 そして、そこにくっついている振動板が動くことで空気を動かして、「音」になるのです。

スピーカーユニットのイメージ

音の仕組みについては、こちらの記事でも解説しています:オーディオの音の仕組み〜オーディオライターのレコード講座〜

ヘッドホンやイヤホンは、耳の中のごく限られた空気だけを振動させて鼓膜を震わせますが、スピーカーの場合は、我々を取り巻くその場の空気全体を振動させます。

さらにいうと、部屋の響きが伴ったり、スピーカーから出た音が左の耳と右の耳とに異なる過程で届くことによって複雑な響きとなって、実際の音楽を聴く体験に近くなるわけです。 それらによって、スピーカー再生ならではの、独特の臨場感や一体感が生み出されます。 映画館やライブハウス、そして、野外コンサートなどのスピーカーを使った音楽イベントは、生音や生音だけとは違った臨場感がありますが、それもスピーカー再生ならではのものだと私は思います。

とても低い音になると服が震えたりお腹の中に響くような感覚が起きたり、逆に、非常に高い音は皮膚に感じるような感覚が得られたりと、まさに体全体で感じることができるのが、その場の空気を震わせるスピーカー再生ならではの醍醐味なのです。

パッシブ型とアクティブ型

そんなスピーカーですが、大きく分けると2種類に分けられます。 アンプ無しをパッシブ型、アンプ内蔵のものをアクティブ型と呼び、さらに、アクティブ型には、デジタル回路を内蔵しているものがあり、テレビやパソコン、そして、BluetoothやWi-Fi、ネットワーク入力が可能な複合タイプもあります。

パッシブ型は、アンプやストリーミング機能は入っていないので、別途、スピーカー用のアンプやプレーヤーなどが必要になってきます。 揃えるものも多いですが、その分、自分の好きなものを組み合わせていく楽しさがあります。

一方のアクティブ型は、最近よく見かけるいわゆる「Bluetoothスピーカー」が、アクティブ型かつ複合型の代表選手ですね。 より本格的なものになると、ステレオの左右チャンネルが独立した、左右2つのスピーカーがペアになったものになります。 音楽制作の現場では、このような左右独立型のアクティブスピーカーが使われますし、最近は家庭用のスピーカーでもこのタイプが増えてきました。 それ単体でストリーミング再生ができるものもあり、大変便利です。

まずはこのような複合型のアクティブスピーカーから、スピーカー再生を始めてみては如何でしょうか。 スマホ一台でスタート可能ですので、とても簡単です。 ぜひ楽しんでみてください。

Words:Saburo Ubukata