「マイクアームって本当に必要?」「種類がいろいろあって、どれを選べばいいのかわからない……」
そんな悩みを解決すべく、オーディオテクニカの社員に直撃インタビュー。マイク開発に携わり、自身もゲーム好きな山本と、ゲーム配信や弾き語り配信を日頃から楽しむ解(かい)が、マイクアームの役割や選び方のポイント、設置時の注意点、さらにはおすすめのマイクとの組み合わせまで、実体験を交えて詳しく解説します。
マイクを愛する二人が語る「快適マイク環境」の秘訣とは?あなたにぴったりの一本がきっと見つかるはず!
ゲームも配信も、まずは“音”から見直そう

山本:私は主に、デスクトップPCでゲームをする時のボイスチャットですね。Discordというアプリで友人とほぼ常時接続して話しているので、マイクは欠かせません。
Discordでのコミュニケーションにも、やはり専用のマイクは重要ですか?
山本:そうですね。ヘッドセット内蔵のマイクも使いますが、単体のマイクだと音質が格段に良くなります。相手からも「声が聞き取りやすいね」と言われることが多いです。
解:音質が良いと、「もしかして配信されてる方ですか?」って言われたりしますよね(笑)。
山本:それ、ありますね(笑)。
解:昔、あまり性能の良くないヘッドセットを使っていたときは何も言われなかったのに、ちゃんとしたマイクに変えた途端、「声がきれいですね」って褒められたりして。それがきっかけで、チーム全体のモチベーションが上がったこともありました。
解さんは配信もされているとのことですが。
解:はい、ゲーム配信とギターの弾き語り配信を趣味でやっています。弾き語りではオーディオテクニカのマイク『AT2020』や『AT2040』を、最近のゲーム配信では『AT2040』を愛用しています。
マイクアームが必要な理由と、導入前に確認すべきポイント
お二人の普段のマイク活用シーンを伺うと、やはり「音質」へのこだわりが感じられますね。より良い音で、そして快適にマイクを使うために、マイクアームはどのような役割を果たすのでしょうか?
山本:マイクは基本的に、できるだけ口元に近い位置にセットするのが理想です。マイクを使う上では、目的の音と周囲の雑音との比が重要になります。口元に近づけてセットし、声をより大きく入力することで、周囲の雑音が相対的に小さくなり、より明瞭な音声を届けることが出来ます。
USBマイクなどにはスタンドが付属している製品もありますが、机の上に置いて距離のある状態で話すよりも、アームを使ってマイクを口元に持ってくる方が、マイク本来の性能を最大限に引き出すことができるんです。
解:スタンドだと机の上のスペースを占有してしまいますし、マウス操作やキーボードの移動時に手が当たってしまい、それがノイズとして入ってしまう可能性もありますからね。

マイクアームを導入する前に、確認しておくべきことはありますか?
解:まずは机の縁の形状です。斜めにカットされているデザインだと、クランプがしっかり固定できないことがあります。あとは、机の天板の厚みと、クランプを差し込む部分の奥行きです。この奥行きが短いと、クランプが天板を十分に挟み込めず、アームが不安定になってしまいます。私自身、過去に机を購入してから「あれ、これだと付けられない!」と後悔した経験があるので、これはぜひ事前に確認してほしいポイントですね。

山本:私も古い勉強机を使っていた際に経験があるのですが、天板の下に引き出しが付いていたり、縁が丸みを帯びていたり、あるいは机の左右が板で完全に塞がれているような構造だと、クランプの取り付けが難しいことがあります。
それと、机を壁にぴったりとくっつけて配置している場合はクランプ自体が壁に干渉してしまうこともあるので、設置を考えている場所の裏側にも少しスペースがあるか確認しておくと安心ですね。無理に取り付けようとすると、壁を傷つけてしまうこともあります。
AT8705 × ゲーム配信、AT8700J × 弾き語り。おすすめの活用スタイル例
オーディオテクニカには形状の異なるマイクアームがありますが、それぞれの特徴と、どのようなユーザーに向いているか教えてください。
解:『AT8705』は、使わない時にコンパクトに収納できるのが魅力です。アームをさっと押し込むだけで邪魔にならない位置に収められるので、机の上のスペースを有効活用できます。ケーブルもアームの溝にきれいに収められるので、見た目もスッキリしますよ。


山本:水平方向の動きが非常にスムーズですよね。ただ、アーム自体が長めなので、回転させる際にはある程度のスペースが必要になります。例えばゲームのように、一度セッティングしたらあまりマイク位置を動かさないという用途であれば、最初の位置決めさえしっかり行えば非常に便利に使えます。
解:あとは、自分の視界を遮らないというのも大きな利点です。ゲーム画面の隅に表示されるHPゲージや、配信中に確認したいチャットボックスがマイクで隠れてしまうと困りますからね。ゲーム配信にはAT8705がとても向いていると思います。
山本:デュアルモニター環境で作業される方にもおすすめです。従来型のアームだとモニターに干渉してしまうことがありますが、AT8705はモニターへの干渉が少なく、快適な作業環境を構築しやすいです。延長パーツで高さも調整できるので、ご自身のデスク環境に合わせて柔軟にカスタマイズできるのも魅力です。
カメラを使って顔出し配信をする場合も、横からマイクを配置できるので、顔にマイクがかぶってしまう心配が軽減され、カメラへの映り込みを気にする必要がありません。

次に、『AT8700J』の特徴はいかがでしょうか?
解:AT8700Jは、特に高さ方向の調整が非常にしやすいのが特徴です。私は弾き語り配信の時に愛用していますが、ギターを弾いていると微妙に姿勢を変えることが多く、その度にマイクの位置も調整したくなります。AT8700Jは、各部のノブを操作しなくても、片手でスムーズにマイクを引き寄せて位置調整ができるので、とても便利なんです。


選ぶ際の決め手としては、やはり「用途」が重要になってくるのでしょうか?
山本:はい、その通りです。今回ご紹介したのはあくまで一例ですが、「どのような用途で使いたいか」を明確にして、それに合わせてアームの形状や機能を選ぶことが大切です。例えば、頻繁にマイク位置を調整したいのか、収納性を重視するのか、視界を確保したいのか、といった点を考慮すると良いです。
マイクアームとマイク、相性の良い組み合わせは?
マイクアームとマイクの組み合わせについて、おすすめはありますか?
山本:基本的には、どのアームにどのマイクを組み合わせていただいても、快適にお使いいただけるように設計されています。耐荷重やマイクホルダーのネジサイズは確認が必要ですが、他社製品とも自由に組み合わせて使うこともできるんですよ。ですので、アームとマイクの相性というよりは、「用途に合わせたアーム選び」と「用途に合わせたマイク選び」がそれぞれ重要になってくると思います。
解:例えば、弾き語りであれば、感度が高く多少頭が動いても音量の変化が少ないコンデンサーマイクのAT2020と、スムーズに位置調整ができるAT8700Jの組み合わせはおすすめです。


一方、ゲーム配信であれば、周囲のノイズを拾いにくいダイナミックマイクのAT2040と、視界を遮らずコンパクトに収納できるAT8705の組み合わせなどが考えられます。


山本:もちろん、AT8705にコンデンサーマイクを組み合わせるのも全く問題ありません。最終的には、お使いになる方の好みや、タイピング音やエアコンの音など、環境音をどれだけ気にするかといった点も考慮して選ぶと良いと思います。
オーディオテクニカのマイクアームの強みはどのような点にあるのでしょうか?
山本:まず、耐久性と安定性ですね。マイクアームって、設置したときの位置をきちんと保てるかどうかが使いやすさに大きく関わってきますよね。AT8705とAT8700Jは、どちらも一度決めた位置からずれにくく、長時間の使用でも安心感があります。
解:以前使っていた安価なアームではネジがゆるんできて、だんだんマイクが下がってしまうことがあったのですが、AT8700Jはノブを調整しなくても片手でスッと動かせて、そのまましっかり止まってくれる。配信中でも無理なく調整できるのがありがたいです。あと、どちらも耐荷重が大きいので、重いマイクでも対応できるのも魅力です。
山本:見た目についても、全体がすっきりとしたデザインで、金属のバネがむき出しになっていないので、机まわりにもしっくり馴染むと思います。それと、やはりオーディオテクニカは長年マイクを作ってきたメーカーなので、「音響機器メーカーが作るマイクアーム」として、マイクを快適に使っていただくためのノウハウやこだわりが細部に詰められています。ぜひお気に入りの一本として、長く愛用していただけたら嬉しいです。
最後に、これから初めてマイクアームを導入しようと考えている方へメッセージをお願いします。

山本:マイクアームを選ぶとき、まずは見た目やデザインに惹かれる方も多いと思います。でも実は、一番大切なのは「どう使いたいか」という “用途” の部分です。弊社のウェブサイトでは、さまざまな使用例の写真も掲載しているので、ご自身のデスク環境をイメージしながら、「どんな使い方をしたいのか」「どれくらいのスペースがあるのか」をしっかり確認していただくのがおすすめです。用途と環境に合った製品を選ぶことで、導入後の満足度もグッと高くなると思います。
解:そうですね。検討するときは、まず「何のために使うのか」、次に「自分の机や部屋に設置できるか」、そして最後に「好みのデザインかどうか」という順番で考えるのが良いと思います。見た目だけで選んでしまうと、実際に使ったときに「思っていたのと違った……」ということにもなりかねません。実用性をしっかり確認しておくことが、失敗しない選び方のコツです。
Words & Edit:Tom Tanaka
Photos:Fumihito Morioka