1976年の創業以来、日本のセレクトショップの指標であり続けてきたBEAMS。その新たな発信拠点である「BEAMS CULTUART TAKANAWA(以下、ビームス カルチャート 高輪)」では、ファッションやアートと並び、アナログレコードが欠かせないピースとして展開されている。

「レコードショップは少し敷居が高い」と感じる初心者に向けて、もっと自由に、もっと直感的に音楽を楽しむためのヒントとは? 同店でレコードのセールスを担当する傍ら、DJとしても活動する山崎 将さんに、話を伺った。

高輪のムードに溶け込む、ジャンルレスなセレクト

ビームス カルチャート 高輪は、非常に明るく開放的な空間が印象的です。このショップの空気感や客層に合わせた、レコードセレクトのこだわりを教えてください。

ここはレコード専門店ではないので、あえて特定のジャンルに固執しない「自由さ」を大切にしています。ニュウマン高輪のインショップであることから、他のお店での買い物ついでにふらっと立ち寄られるお客様も非常に多く、そういった方々が「あ、これ知ってる」「いいデザインだな」と直感的に手に取れるよう、あえて間口は広く設定しています。最近ではJ-POPも強化していて、藤井風さんやあいみょんさん、あるいはアニソンといった、今の空気感を纏った「手に取りやすい盤」も積極的にラインナップしています。

一方で、高輪周辺にはレコードショップが少ないため、昔からのファンの方にも刺さるようなジャズやヒップホップ、ブラックミュージックなどのディープな中古盤も厚く揃えています。原宿のBEAMS RECORDSは新譜がメインですが、中古レコードのみを扱うというのは、BEAMSとしては初めての試みなんです。トレンドの最先端を追う新譜とはまた違う、時代やジャンルを飛び越えた「一期一会の出会い」が混ざり合っているのが、ビームス カルチャート 高輪ならではのセレクトだと思います。

かなり幅広く扱われているのですね。山崎さんご自身もDJとして活動されていますが、今の現場の空気感はどう感じていますか?

これまではヒップホップが主流でしたが、最近はDJシーン全体でハウスやテクノといった「四つ打ち」への回帰を感じます。面白いのは、デジタルでDJを始めた若い世代が、今あえてアナログに移行している動きがあること。僕自身も普段はデジタルですが、昨年末に一式機材を揃え直して、今年からはアナログで回していこうと準備しているところです。

山崎 将さん。ビームス カルチャート 高輪のスタッフとして働く傍らDJとしても活動中。

ルーツは金沢のスケートカルチャー。「先輩から譲り受けたターンテーブル」

山崎さんがレコードという文化に深くのめり込んだきっかけは何だったのでしょうか。

出身は石川県の金沢で、高校生の頃にスケートボードに明け暮れていて。その時の地元の先輩の影響が一番大きいですね。ある日、その先輩の家に遊びに行ったら「これ今日持って帰っていいよ」って、ターンテーブルとミキサー、そして数枚のレコードを貸してくれて。

その時の一枚が、フージーズ(The Fugees)の「Ready Or Not」の12インチでした。それが、音楽を能動的に “聴く” ようになった最初の原体験です。先輩のスケートスタイルがかっこよくて、高校生ながらスキンヘッドで、足元はNikeのダンク・ローを履きこなすような、90年代のオールドスクールな佇まいに強く憧れていました。その先輩が教えてくれた盤だったからこそ、一気に音楽の深みにはまり、自分なりにレコードを通して音の仕組みや背景を調べるようになったんです。

金沢はファッションや音楽のコミュニティが非常に熱い街だという印象があります。

そうですね。金沢は独特のカルチャーが根付いている街で、ローカルの繋がりがとても強いんです。今、東京でDJとして一緒に活動している仲間も金沢時代から交友があり、僕も一緒に主催のイベントを開催したりと、DJシーンで活躍しています。先輩から後輩へ、カルチャーに対してリスペクトを持ち、コミュニティにお金を落として文化を守る。そんな土壌があったからこそ、今の自分があるのだと思います。

知識よりも「TPO」。レコードとの幸福な出会い方

「レコードに興味はあるけれど、専門店へ行くのは少し勇気がいる」と感じている初心者の方も多いと思います。そんな方が、ビームス カルチャート 高輪で自分だけの一枚を見つけるための「入り口」や、スタッフさんへの上手な頼り方はありますか?

音楽知識の深さを追求するのであれば、専門店という選択肢があると思います。でも、BEAMSに足を運んでくださる方の多くは、純粋に「服が好き」「カルチャーが好き」というお客様。ですから、まずは直感的に「ジャケットのデザインが好きだな」「自分の部屋に飾ったら格好いいだろうな」といった、視覚的な入り口から始めていいと思うんです。

もし迷ったら、スタッフに「最近よく聴いている曲」を教えてほしいです。僕たちがそこから、その方が好きそうな曲やアーティストをご紹介することも可能です。

山崎さん自身が、アートワークに惹かれて手にした一枚はありますか?

私物になりますが、2020年にリリースされたディナー・パーティー(Dinner Party)の「DESSERT」です。テラス・マーティン(Terrace Martin)、ロバート・グラスパー(Robert Glasper)、カマシ・ワシントン(Kamasi Washington)、ナインス・ワンダー(9th Wonder)という豪華布陣によるデビュー作を、さらにアップデートした7インチ。スヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)をはじめ客演陣も凄まじく豪華で、僕自身も自宅に飾っています。ジャズ系のヒップホップという音楽性も含め、アートワークと内容のトータルバランスにおいて最高の一枚ですね。

Dinner Party『DESSERT』(2020)

最近はサブスクリプションで手軽に音楽を聴ける時代ですが、あえて「アナログ」を選ぶ良さはどこにあると感じますか?

サブスクは本当に便利ですよね。「あなたへのおすすめ」プレイリストも優秀。でも、便利すぎて一曲に対する重みが薄れてしまう側面もある気がします。

アナログレコードはわざわざ足を運んで、形あるものを買い、自分で針を落とす。そのプロセスがあるからこそ、歌詞を全部覚えてしまうくらい一曲を大切に聴き込むようになる。それが音楽の本来あるべき姿なのかな、とも思うんです。

それに、サブスクのAIが提案する「好きなはずの曲」だけで固められた生活は、冒険がなくて少しもったいない。ジャケ買いをしてみて、「あ、思ってたのと違う」という失敗も含めて、自分の意図しない音楽に出会う。その「偶然の出会い」は、フィジカルなレコードの方が圧倒的に多い気がします。

「効率」や「正解」だけではない出会いが大切なのですね。

そう思います。また、僕が音楽を選ぶ時に何より大切にしているのは「シチュエーション」です。朝起きてコーヒーを飲む時に聴きたいのか、家を出る前に気分を上げたいのか、あるいは今の季節に浸りたいのか。そんなTPOや季節感にフィットする音楽を見つけることができたら最高ですよね。

知識の有無にかかわらず、僕らとの対話を通じて一緒に新しい音楽を探していく。そんな能動的な体験こそが、ショップでレコードを買う一番の醍醐味だと思っています。

BEAMS CULTUART TAKANAWA Selection:日常を彩る5枚のレコード

ビームス カルチャート 高輪でセレクトされている膨大なアーカイブの中から、山崎さんが直感で選んだ、日常のシチュエーションに寄り添う名盤を紹介します。

1. PUSHIM「Feel It」 (2015)

レゲエアーティストのPUSHIMさんによる、DJ MUROさんのプロデュース作。パワフルなレゲエでありながら、ハウスに近いテンポ感がある一曲です。理屈抜きにノリで聴けるので、レコードで音楽を聴く楽しさを知る第一歩としておすすめです。

2. MISIA「BELIEVE」 (2000)

まずはこのジャケットの美しさ。MISIAさんはいつの時代も素晴らしいですが、この曲は超名曲ですよね。オーバーグラウンドな知名度がありつつ、アンダーグラウンドのR&Bやソウルの匂いもしっかりと感じさせる。テンションを上げたい時にぜひ聴いてほしい一枚です。

3. Björk「Bachelorette」(1997)

ビョーク(Björk)はファッションアイコンとしても不変の人気がありますよね。昨年BEAMSで彼女のTシャツを展開しましたが、やはり大人気でした。このロゴもY2Kの雰囲気があって、今このデザインがリリースされても話題になるはず。先を見据えていた彼女のオルタナティブな感覚をアナログの質感で体感して欲しいです。

4. Dimlite「This is Embracing」 (2006)

ヒップホップベースのビートに、エレクトロやジャズの要素がミックスされた浮遊感のあるサウンドです。ビームス カルチャート 高輪は晴れた日の日差しがすごく気持ちいいのですが、そんな時にリリックのない音楽を店内で流すと、心地よい時間が流れるんです。ゆったりとした一日のBGMに最適です。

5. V.A.『URBAN CLASSICS』 (1987)

ジャクソン・シスターズ(Jackson Sisters)やロイ・エアーズ(Roy Ayers)の名曲が網羅されたコンピレーションアルバムです。今作を選んだ理由は、ジャケットが今開発中の『高輪ゲートウェイ』周辺の景色に似ていたから(笑)。もちろん、内容は間違いありません。初心者の方はまずこういうコンピで好きなアーティストを見つけて、そこからさらに掘り下げていく楽しみ方もとてもオススメです。

BEAMS CULTUART TAKANAWA

住所:東京都港区高輪2-21-1 ニュウマン高輪 North 4F
電話番号:03-6721-6421
営業時間:11:00 – 20:00、不定休

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「meet the MIX」

アナログレコードの魅力を五感で楽しむDJイベント。プレイは一貫してレコードオンリー。会場に流れる音に身を委ねながら、ショップ内でレコードを手に取り、その場で購入も可能。実際に耳にした音から、次なる一枚との「一期一会の出会い」を体感する。

場所:ビームス カルチャート 高輪
不定期開催・入場無料

Photos:Cho Ongo
Words & Edit:Mizuki Kanno

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