2019年、坂本龍一、鎮座DOPENESS、環ROY、そしてU-zhaanによって生まれた「エナジー風呂」。あの異色のコラボレーションが、4月26日(よい風呂の日)にアナログレコードとして再びリリースされる。

「50年近く生きてきて、今がいちばん風呂好き」

そう語るU-zhaanは、ツアー先で温泉を探し、都内では足繁く銭湯に通う。風呂は日常であり、仲間との交流の場でもあるという。

なぜ風呂に魅了されるのか。その源泉を探ってみた。

「エナジー風呂」再リリースのきっかけ

お風呂がお好きだそうですね?

好きです。銭湯も、今年だけですでに10か所以上は行ってますね。いつも1月2月はインドにいることが多いですが、今年は久しぶりに日本にいたんですよ。そうしたら、冬場の自分の家がすごく寒いことに気づきました。ことあるごとに風呂に入らないと、もう寒くて動けない。入浴しすぎで手のひらとか足の裏とかカサカサになってます。50年近く生きてきた中で、今が一番風呂好きかもしれません。

その理由は?

まあ、年齢が大きいでしょうね。子どもの頃は家族と銭湯や温泉に行っても、両親や祖父母ほど楽しんでいなかったと思うんです。子どもって体温も高いし、長湯は苦手じゃないですか。でも大人になって、というか老境に近づくにつれて、温まることの大事さがわかるようになってきたというか。体が冷えちゃってると、しばらく入っていないと芯まで温まらないとか、そういう感覚も味わえるようになったのは歳を重ねたよさだと思ってます。

去年の秋くらいに東北をツアーしていたのですが、福島県の会津から東京へ戻るときに、小学生の頃に親が連れてきてくれた温泉宿をたまたま通りかかったんです。調べてみたら日帰り入浴もやっていたので、ちょっと立ち寄って温泉に入ってみたんですよ。そしたら、とんでもなく気持ちよくて。こんなに素晴らしいところに連れてきてくれていたんだとびっくりしました。「大川荘」というところなんですけど、露天風呂が棚田みたいになっていて、お湯もよくて最高でした。

よく覚えていましたね。

宿泊したのは40年近く前なんですけど、その頃はファミコンが異常に流行っていて。その大川荘では当時、宿泊客同士で競うファミコン大会が開催されてて、僕もなんとなく出場してみたら優勝しちゃったんですよね。それもあって妙に記憶に残っていました。

「エナジー風呂」を再びリリースすることになったきっかけは?

1番の理由は、市場に流通してないからですね。オークションサイト等でとんでもない高値で取引されているのを見て、なんだか悔しいからもう一度リリースしようと(笑)。せっかく出すなら装いも新たにしたいと思い、もともと収録されていた「エナジー風呂」と「energy flow – rework」に加えて新曲も収録します。

教授のピアノ演奏にラップとタブラを乗せた「天然エナジー風呂」と、教授と僕が以前ふたりで収録した「Technopolis」の音源を編集してラップを加えた「テクノポリス」という2曲です。

そもそも「エナジー風呂」というワードはどこから?

2018年に坂本龍一さんと「energy flow – rework」を発表したのですが、その年の年末に、ラップを入れてラジオで演奏しようということになって。まずは環ROY、鎮座DOPENESSと集まって “energy flow” に韻を踏んだ言葉をいろいろ考えてたんです。「毛蟹食おう」とか(笑)。

最終的に “flow” と “風呂” をダジャレ的に引っ掛けて膨らませようと決めて、現在の形になりました。

ツアーミュージシャンたちから教わった風呂の魅力

ツアー先で温泉や銭湯に立ち寄ることは?

ものすごく多いです。そうなったのは、一緒にツアーに行っていたミュージシャンたちの影響だと思いますね。鎮座DOPENESSを始め、勝井祐二さんや新井孝弘くんとか、温泉好きの人がいっぱいいて。彼らに感化されてどんどん好きになっていったところがあります。

昔は「わざわざ行かなくても、夜になればホテルで風呂に入れるじゃん」とか思ってたんですけど、最近は自分が率先して温泉を探してます。車移動のツアーだと「今日はこの温泉に行きたいから、こっちの道にしよう」みたいに、温泉を中心に経路を組んだりして。

Xでは、青森の銭湯でのエピソードもシェアされていましたね。

あー、そんなことありましたね。鎮座DOPENESSってすごく目立つみたいで、一緒に歩いてるとやたらに声をかけられるんですよ。風呂の中でも、きっと存在感があったんでしょうね。鎮座さんの人気のおかげで、間違えてシャンプーを使ったことを許してもらえました。

このときの場所ですか? 国際芸術センター青森の近くの、「あすなろ温泉」ってとこだったと思います。泉質もよかったし、水風呂もキリッとしてて最高でした。

他にもツアー先のお風呂で印象的だったエピソードはありますか?

ある先輩ミュージシャンに、彼が気に入っているという温泉に連れてってもらったことがあるんです。「お湯もいいけど、休憩部屋もすごく居心地がいいんだ。コタツがあってお茶も用意されてて、本当にくつろげる」っておっしゃってて。

で、風呂から出たあとにその休憩施設へ行こうとして階段を上りかけたら、女将さんから「あ、そっちは私の住居なんで入らないでください」と声をかけられました。どうやらその先輩は、以前そこで入浴したときに間違えて他人の家で勝手にお茶を入れて飲んじゃってたらしいんですよ。

え、そんなことあります……?

ないように気をつけたいですよね。でもそこの階段は、たしかにうっかり上ってしまってもおかしくない感じの場所にあったので、情状酌量の余地は大いにあります。

温泉好きのミュージシャン仲間が本当に多いんですね。

いっぱいいますよ。ハナレグミ、Caravan、蓮沼執太……。蓮沼執太とはこの前、一緒に秩父へ温泉旅行にいきましたからね。元々は親を連れて行こうとしていたんですけど、ちょっと予定が合わなくなってしまって。宿をキャンセルするのもあれだなと思って執太を誘ったら、軽やかにOKしてくれました。

ちなみに坂本龍一さんと一緒にお風呂に入ったことは?

教授とはないですね。でも教授も温泉が好きだったみたいで、正月はいつもお気に入りの温泉宿で過ごしていると聞いたことがあります。場所がどこだかは教えてもらってないですけど。知られたくなかったのかな(笑)。

あと、僕に水風呂のよさを教えてくれたのはレキシの池ちゃん(池田貴史)。彼は風呂好きというよりも、サウナ好きなのかな。サウナと水風呂だけでも全然いい、と言ってました。

U-zhaanさんもサウナ好きですか?

そうでもないですね。サウナが別料金の場合は、間違いなく入らないです。僕はやっぱり風呂のほうが好きかな。サウナって、平気で80度とかになるじゃないですか。そんなところに何分も座っているのは、なんだかちょっと怖い気がしちゃう。

昔は、水風呂も好きじゃなかったんですよね。なんでせっかく温まったのに冷たい水に入らなきゃならないんだ、と思ってましたけど、池ちゃんの教えに従って何度か繰り返していたら気持ちよさがわかりました。でも、あまりにも冷たすぎるのは好きじゃないかも。個人的には、水温20°Cくらいあると嬉しいです。 ただ、フィンランドでサウナに入ったあと、猛烈に冷たいバルト海へ飛び込んだときは謎の爽快感がありましたけど(笑)。

U-zhaanさんのいい風呂の条件は?

やっぱり、泉質がいいと嬉しいです。肌当たりがなめらかだったり、逆にピリッとした気持ちよさがあったり。いろんなタイプの温泉があって、それぞれによさがありますよね。

お湯が違うってこういうことか、と初めて知ったのは長野県にある渋温泉という温泉街です。2009年に出演した「音泉温楽」というフェスが、その温泉街で開催されていて。

「金具屋」って旅館に宿泊したんですけど、その宿の中だけでも4つ源泉があって、3つの異なった泉質が楽しめて。それぞれのお湯がまったく違うんです。温泉街には9つの共同浴場があり、それを巡るのも楽しい。「ひとつひとつ、こんなに違うものなんだ」って、温泉の見方がガラッと変わりました。あまりによかったので、数年後に両親を連れて泊まりに行ったりもしましたね。

そのフェスは今も毎年開催されてるはずなんですが、僕は2009年の初出演を最後に一度も出てないです。たぶん今年ぐらいに声がかかるんじゃないかな(笑)。

銭湯の音をプロデュースするなら

都内では銭湯にもよく行かれるそうですが、その音の魅力って?

浴槽に湯が注がれる音、桶が床に当たる音など、いろいろな要素が混ざって構成されてますよね。お爺さんがお湯に浸かったときに漏らす「うー」みたいな声も、子どもの泣き声も、全部含めて銭湯の音だなと感じる。魅力的なサウンドだと思いますよ。

ただ、スーパー銭湯とかでたまに流れてる、謎のヒーリングミュージックみたいなのはちょっと気になるときがありますね。オルゴールサウンドで演奏されるJ-POPとか。なんとなく流す音楽が快適さを損なわせる原因になってることって、世の中には意外にいっぱいあると思います。

もしU-zhaanさんが銭湯で流す音楽をプロデュースできるとしたら?

うーん、蓮沼執太に作ってもらおうかな(笑)。

では、どんなオーダーを?

「自然音を入れないで作ってみてほしい」って言うかもしれないですね。鳥の声とか水が流れる音とかを使わずに、その場の音に溶け込んでいく音楽。まあ、彼なら何も注文しなくてもそういうものを作るだろうと思います。

そういえば2015年に開催された別府の芸術祭で、ある温泉浴場で流す音楽を執太とふたりで作ったこともありますね。アルバム『2 Tone』に収録した「Mixed Bathing World」って曲なんですけど。

理想の銭湯を作るなら?

39°C~40°Cくらいのぬる湯、43°Cくらいの熱い湯、それに20°C前後の水風呂。この3つがあればとっても嬉しい。あとはもし可能なら、打たせ湯が欲しいです。別府の「ひょうたん温泉」ってところの打たせ湯が大好きなんですよね。あれくらい迫力のある水圧が出せたらいいな。

貸しタオルは無料にするかも。ミニタオルでもいいから無料で貸し出しをしてくれたら、ふとしたタイミングでとっても入りやすくなると思う。もっとみんな気軽に銭湯へ行ったらいいですよね。身近な銭湯にふらっと入るのって、実はとっても楽しいから。

U-zhaan

タブラ奏者。1977年、埼玉県生まれ。
北インドの打楽器「タブラ」をオニンド・チャタルジー、ザキール・フセインの両氏に師事。インド古典音楽にとどまらず、ポップス、ヒップホップ、電子音楽など多様なジャンルの音楽家とコラボレーションしている。2025年には坂本龍一、Conelius、ハナレグミなどをゲストに迎えたアルバム『Tabla Dhi, Tabla Dha』を発表。その他、料理レシピ本やレトルトカレーの監修など幅広く活動する。

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Words Edit:Kozue Matsuyama
Photo: Soichi Isida

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