オーディオ機器の接続でよく目にする「RCA(アンバランス)」と「XLR(バランス)」。一般的に「バランス接続の方が優れている」とされがちですが、実はそう単純な話ではありません。
端子の構造や「方向性」について解説した前編に続き、後編となる今回は「音質」と「使い分け」に迫ります。プロがXLRを選ぶ理由や、RCAならではのメリットとは。そのメカニズムから、実際にケーブル交換で自分好みの音を見つける楽しみ方まで、オーディオライターの炭山アキラさんが詳しく解説します。
なぜ複雑でコストもかかるXLR接続が使われているのか?
実のところ、アンバランスのRCA接続でも音楽信号の伝達そのものは、十分ハイクオリティに行えています。なのになぜ、複雑でコストもかかるXLR接続を行うのでしょうか。一つには、バランス伝送が外来ノイズに強いということが挙げられます。
前述した通り、RCAもXLRも一般的なケーブルは、外来ノイズに対して厳重なシールド(遮断)が施されていますが、それでも飛び込んでくるノイズを完璧に避けることはできません。RCAでは、それが僅かでも音楽信号の純度を損なってしまうのですね。
それがXLRでは、プラスとマイナスにそれぞれ増幅回路が入っており、しかもそれが相互に逆相となっているせいで、同じノイズが侵入してきてもプラスとマイナスでキャンセルされてしまい、音楽信号の純度を損ねることがないということがあるのです。それでバランス伝送はまず、長いケーブルを引き回さなければならない現場が多く、またノイズ環境としても家庭内とは比べ物にならないくらい過酷な、録音やライブ拡声などのプロフェッショナル用途で普及していきました。そしてその素性を生かすために、コストに余裕のある高級オーディオ機器から装備され始めた、という道筋のようですね。
「アースが浮く」とはどういう状態?
もう一つ、XLR接続がプロフェッショナルに愛される要因があります。といっても、これはXLRキャノン端子にまつわる話となります。RCAプラグは、プラス側の中心導体がマイナス側のスリーブよりも前へ出っ張っています。おかげでジャックへ挿しやすいといった使い勝手の良さはあるのですが、そのせいで通電したままケーブルを抜き差しすると、マイナス側が先に増幅回路から離れて、俗にいう「アースが浮く」という状態になり、大きなノイズが発生してしまいます。
一方XLR端子は、ホット、コールド、アースの3ピンがすべて同じ長さと高さでそろっており、通電している間に抜き差ししても、ノイズは最小限に抑えられています。素早い接続の切り替えが時に要求され、しかもそこへノイズを乗せることが厳しく戒められるプロの現場では、そういうところも頼りにされているのですね。
それでは私たちホームオーディオのユーザーも、やっぱりXLR接続にしないとノイズの発生が避けられないのかというと、別にそんなことはありません。一瞬を争うプロの現場と違って私たちには時間がありますから、RCAであれXLRであれケーブルを抜き差しする時には、必ずアンプの電源を落とすかセレクターを切り替えて、抜き差しするケーブルに通電していないことを確認してから行いましょう。
XLRとRCA、どちらが良い?それぞれが選ばれる理由
ならば、RCA接続よりもXLR接続の方が絶対的に優れているのかというと、必ずしもそうとはいい切れないのがオーディオの怖いところでもあり、また面白いところでもあります。一部のハイエンドオーディオメーカーでは、XLR伝送の利点を最大限生かすために、例えばバランス出力ではないパワーアンプでも、出力段の直前までバランス伝送回路にしている社がありますし、そういう製品群では明らかにXLR接続の方が好結果が得られます。
しかし特に中級製品くらいまでは、XLR端子が装備されていても内部の回路はアンバランス構成となっていることが多いものです。それでもバランス伝送のノイズ耐性など、XLRの美点が失われるわけではありませんが、バランス回路内を音楽信号がずっと進み続ける状態に比べると、XLR接続の旨味は減ずるように感じざるを得ません。
内部回路がアンバランス構成のアンプなどでは、時にRCAとXLRの評価が逆転することがあります。XLRのプラグはRCAに比べて導体以外の金属部分が大きく、それが余分な音を招き寄せたり、本来の音色をほんの若干ながら変容させてしまったりすることがあります。これはRCAプラグでも起こっている現象なのですが、大ぶりな分だけXLRの方がその度合いが大きくなりがちだ、ということです。
そうなると、ノイズ耐性などの美点までトータルに考えたとしても、XLRよりRCAの方が音楽が素直に鳴り響く、ということが往々にして起こります。そのせいかどうかは断言できませんが、ハイエンド・オーディオ機器を愛用なさる人の中にも、RCAケーブルを愛用している人はそう珍しくありません。
手頃なケーブルから始める音質向上。自分好みの音を探す楽しみ
もし、あなたがお使いのオーディオ装置にRCAジャックしか装備されていなくても、それで音質的に損をしているということはない、と考えてよいでしょう。むしろ、ちょっと上級のRCAケーブルをお使いになることで、音楽の再現性がグッと向上するだろうと思います。
あなたがお使いのディスクプレーヤーやネットワークプレーヤーなどとアンプの両方にXLR端子が付いていれば、一度XLRケーブルで接続してみられるのもいい実験になるのではないですか。XLRケーブルにはあまり廉価なものが多くないのは残念ですが、例えばオーディオテクニカの『FLUAT(フリュエット)』500シリーズなら、RCAケーブルが2万4,200円、XLRケーブルが2万7,500円(ともに0.7m)*とそう変わりませんから、初めてのXLR接続として、試しやすいのではないかと思います。
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ケーブルというのは接続する機器や再生する音楽のジャンル、そしてユーザー自身の音の好みによって相性は千差万別ですから、いい製品を買ってつなげば必ず音が良くなるというものではありません。そういう意味では一筋縄でいかないジャンルの製品群なのですが、それだけにいくらでも遊べる、楽しめるテーマでもあると私は感じています。
特に、普及クラス機器の付属ケーブルをお使いになっている人は、廉価なRCAケーブルだとオーディオテクニカなら『AT-MI64』あたりに取り替えると、「あれっ!?」というくらいに音楽の抜けが良くなり、これまで聴こえてこなかった音が耳へ届くようになることでしょう。
RCA/XLRの方式違いだけでなく、ケーブルは音楽をより自分好みに近づけるための、非常に有効な手段です。上を見るとキリがない世界でもありますが、比較的手頃な製品にも結構いろいろな音質傾向のものがありますから、皆さんも大いに活用して下さることを祈っています。
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Words:Akira Sumiyama





