イベントや貸出のためにカートリッジの準備をしていると、残念ながら針が曲がっていたり、折れてしまっているカートリッジがときどき出てきます。 オーディオテクニカでは針交換の修理サービスがありますが、実際に折れてしまった針たちのその後が気になり調べていると、「針供養」というものがあるそうです。

今回はそんな針供養について、オーディオ機器のレビュワーやレコーディングエンジニア、そして音大講師を務める生形三郎さんに詳しく聞いてみました。

音楽寺で針供養を。

夏といえばお盆、そして、お盆といえばお盆供養ですが、今回はそんな供養にまつわるお話です。

筆者はレコーディングエンジニアの仕事もしているのですが、ある日、自然豊かな「秩父ミューズパーク」内の音楽ホールでのレコーディング帰りに、気になるお寺を見つけました。 そのお寺の名前は、なんと「音楽寺」。 はじめはビックリして思わず見間違いかと思いましたが、なんとそこはれっきとした由緒あるお寺。 しかも、レコードカートリッジの「針供養」なる行事を毎年行っているというからこれまた驚きました。

針供養とは、折れて使えなくなってしまった針や消耗して使えなくなってしまった針を、感謝とともにお焚き上げする行事で、老舗カートリッジメーカーでアナログ・アクセサリーブランドの「ナガオカ」で知られる株式会社ナガオカトレーディングスが「レコード針の日」である3月9日に実施しているものです。

かつて同社が実施してイベントが、2020年の同社創立80周年記念のタイミングで復活。 毎年、折れてしまった針や消耗した交換針を同社が全国より募集し、代表して音楽寺にて供養してもらうそうです。

日頃、良い音、思い出の音を奏でてくれる針に感謝するというのは、なんとも素敵な行ないですね。 日本ならでは、なおかつ、まさにAnalog的な発想です。 針もそうですし、スピーカーやプレーヤー、それを作ってくれた方々にも感謝を忘れずにいたいです。 そして何よりも、素晴らしい音楽を作ってくださる音楽家に心より感謝です!

音楽寺で針供養を。 カートリッジ色々
音楽寺で針供養を。 カートリッジ分解

Words:Saburo Ubukata