Face Recordsからのおすすめレコードを毎月お届け。
今回はアメリカでビートルズ(The Beatles)の人気が爆発してから60年が経った今、改めてその魅力を確認してみたいと思います。

ビートルズの音楽を知らない人には新鮮な魅力が、知っている人には違った側面の魅力が発見できそうなおすすめの音楽を、Face Recordsの藍隆幸さんがご紹介します。

ビートルズの魅力ってなに?

街の中やラジオなどで偶然に流れてきた音楽をビートルズだと意識することなく聞いたことも少なくないと思います。 ビートルズの曲が日常に溶け込んでいて、ビートルズ以降大きく多様化した今日の音楽シーンを知っている私たちにとって、当時の人が受けたビートルズの衝撃や魅力をそのまま体験することは難しいのではないでしょうか。

一度、当時の人と同じ感動を味わってみたいと思い、試しにビートルズ以前のロックやポップス、エルビス・プレスリー(Elvis Presley)、ニール・セダカ(Neil Sedaka)、フランク・シナトラ(Frank Sinatra)、ディーン・マーティン(Dean Martin)などを2時間くらい聴いてからビートルズを流してみたことがあります。
当たり前だと思っていたビートルズの曲のスピード感、シンプルに凝縮されたストレートでキャッチーなメロディ、革新的なアレンジ、時には文学的な歌詞、はビートルズが出てくる以前は存在しない世界だったんだ、ということに気付いてかなり衝撃を受けました。
「あ、当時の人が衝撃を受けたビートルズの魅力ってこれなんだ!」という発見を感じると思いますので、もし機会があったら試してみると面白いと思います。

時代ごとに違った魅力を持つビートルズの音楽の中でも一番ビートルズらしかった前期のコアな時代は、創造性の頂点に至るまでの様々なアイデアやエネルギーが凝縮されていたと感じます。 誰もが知っている特に超有名な曲は避けて、コアな時代の中からビートルズビギナーの方でも新鮮に楽しめそうな曲をご紹介します。

アルバム『A Hard Day’s Night(ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!)』より

アルバム『A Hard Day's Night(ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!)』より

If I Fell (1964年2月27日 レコーディング)

ビートルズの初期作品においての作曲はジョン・レノン(John Lennon)が主導することが多く、特にこの「If I Fell」が収録されている『ヤァ!ヤァ!ヤァ!』の楽曲の大半はジョン・レノンが作曲しています。

ポール・マッカートニー(Paul McCartney)の作曲はメロディが先に浮かんでそこにコードを付けていくスタイルであるのに対して、ジョン・レノンはコードが先に浮かんでその和音の中からメロディを手探りで紡ぎ出すというやり方をしていると言われています。 このIf I Fellはジョン・レノンの作曲の中でも特にそのコード進行が楽しめる1曲です。 メロディの中にはなぜこの音程を選んだんだろう?と感じる音があったりしますが、面白いと思ったコード進行を最初に作って、後からメロディでコードをつないでいくという作曲だからこそ形にできた魅力を感じさせます。 ロマンティックで複雑なハーモニーの循環は、永遠に続いたとしてもきっと飽きません!

I’ll Be Back (1964年6月1日レコーディング)

メロディの良さはもちろんですが、アコースティックギターが刻むリズムがとても魅力的です。 ところどころに入るフラメンコギターのような3連符の遊びがリズムの魅力に幅を与えています。 ビートルズの曲はどれも多くのアーティストにカバーされていますが、この曲はロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ(Roger Nichols & The Small Circle Of Friends)がカバーしたおしゃれさを感じるバージョンも有名です。

Things We Said Today (1964年6月2日レコーディング)

この曲はポール・マッカートニーが作曲したもの。 「I’ll Be Back」に続いて軽快なアコースティックギターのストロークが印象的な作品。 当時の日本のポップスにはこのようなオフビートのノリが楽しめるメロディは少なかったので、さぞ新鮮な衝撃を感じただろうと思います。

アルバム『Beatles For Sale(ビートルズ ’65)』より

アルバム『Beatles For Sale(ビートルズ '65)』より

No Reply (1964年9月30日レコーディング)

ボサ・ノヴァのリズムから始まるけれど、カフェやラウンジで流れるようなボサ・ノヴァの印象に留まらない、しっかりロックテイストで攻めてくる、この頃のジョン・レノンの作品の中でも特にビートルズのパワーに溢れた一曲。

ビートルズの曲がポピュラーになるよりも前、イントロが無い曲が珍しかった時代の音楽に慣れていた人達にとって、いきなりキャッチーな歌い出しで始まるビートルズの曲はかなり衝撃だったと思います。

I’ll Follow The Sun (1964年10月18日レコーディング)

1960年の夏、ビートルズがデビューするよりも前にポール・マッカートニーが作曲した作品。 ポールの創造性は早い時代から花開いていたことが分かります。

アルバム『Rubber Soul(ラバー・ソウル)』より

アルバム『Rubber Soul(ラバー・ソウル)』より

You Won’t See Me (1965年11月11日レコーディング)

曲全体のグルーヴ感とリズムを引き立てるハーモニー。 現代にいるわたしたちが聴いてもこの曲のノリは十分通用すると感じます。

If I Needed Someone (1965年10月16日/18日レコーディング)

ビートルズの中でのジョージ・ハリスン(George Harrison)の活躍はこの頃から顕著になって、『Rubber Soul』では2曲が、次のアルバム『Revolver』では3曲がジョージ・ハリスンの作品となっています。

その後は思想的な面でもグループ全体に影響を与える存在になったことは有名です。
イントロから始まるギターのフレーズはバーズ(The Byrds)の曲「The Bells of Rhymney」にインスパイアされていると言われています。
いずれにしても初期のジョージ・ハリスンの名曲です。

Nowhere Man (1965年10月21日/22日レコーディング)

この曲を聴くと真っ先に思い出すのは、1980年ジョン・レノンが凶弾に倒れた日、ニューヨークのダコタハウスを取り囲んで追悼するファンの中の一人が掲げた手作りのプラカードに書いてあった「Goodbye Nowhere Man」というお別れのメッセージです。 これが作曲された1965年ごろ、ジョン・レノンが精神的な居場所を探してもがいていた彼自身を反映させた曲だと言われています。 それほどまでにジョン・レノンを象徴した曲だと感じます。

いまビートルズの魅力を語ることの意味

今回は8曲をご紹介しましたが、選んだ後でイントロが無い曲が3曲(「If I Fell」、「No Reply」、「Nowhere Man」)含まれていることに気づきました。 もし、はじめてビートルズの曲を聴いてみたいと思った方には、最初は初期の作品で特にイントロの無い曲をお勧めします。
今回ご紹介した曲の他にも、「All My Loving」なんて特に破壊力があって衝撃を受けますよ。

詳しく調べたことはありませんが、恐らくパンクでもオルタナティブロックでもメタルのアーティストでも、その多くが潜在意識のどこかでビートルズの影響は受けているのではないかと思います。 それほどまでのレジェンドで20世紀を代表するロックバンドを今更 ”偉大” だと紹介するのも気恥ずかしくなりますが、やはり良いと感じたものはちゃんとその魅力について発信するべきだと思いました。

もちろんビートルズだけに限ったことではありませんが、アナログレコードを「文化を継承していくためのツール」ととらえ、過去の価値ある音楽と文化を将来に渡って継承していくこと、ホンモノが生き続ける時代をつくることが使命であると捉えているFace Recordsにとってとても大切なことだと感じています。

Face Records

Face Records

”MUSIC GO ROUND 音楽は巡る”という指針を掲げ、国内外で集めた名盤レコードからコレクターが探しているレアアイテムまで、様々なジャンル/ラインナップをセレクトし、販売/買取展開している中古盤中心のアナログレコード専門店。 1994年に創業し、現在は東京都内に3店舗、札幌、名古屋、京都に各1店舗、ニューヨークに1店舗を展開。 廃棄レコードゼロを目指した買取サービスも行っている。

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2024年4月23日(火) Face Records 名古屋中日ビル店 が開業します。
5月6日(月・祝)、今回ご紹介した曲が収められているアルバム『Beatles For Sale(ビートルズ ’65)』『A Hard Day’s Night(ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!)』『Rubber Soul(ラバー・ソウル)』などの当時の貴重な帯付き国内盤を販売します。 特に『Beatles For Sale(ビートルズ ’65)』は ”幻” の茶帯盤を出品予定です!稀少な ”ギガレア盤” のためトークイベントと共に入札販売会を行います。

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Words: Takayuki Ai