たとえばレコードプレーヤーを購入されたら、引っ越しや修理依頼の際に製品を安全に運搬できるように、オーディオテクニカは梱包箱一式は捨てずに保管しておくことを推奨しています。しかし、お部屋の収納には限りがあるし、どうしても大きな箱の保管は難しい場合もありますよね。

捨てるという選択をされる皆さまには、きちんと分別をして、資源として活用できるものはリサイクルへと回していただきたい——そこで今回は、「ゴミ清掃員芸人」という肩書きで活動するお笑い芸人、マシンガンズの滝沢秀一さんに、実際に製品を開封しながら分別の基本をイチから教えていただきました。

まずは『AT-LP60XBT WW』の開封から。ホワイトモデルは公式オンラインストア限定カラーです。
まずは『AT-LP60XBT WW』の開封から。ホワイトモデルは公式オンラインストア限定カラーです。

※本記事で紹介するごみ分別の方法は一例であり、2025年5月時点の法律・条例に基づくものです。分別の呼称や区分、出し方は各地で異なりますので、必ずお住まいの地域・自治体のルールをご確認ください。

レコードプレーヤーの箱、開封したらどうする?

オーディオテクニカのECサイトでレコードプレーヤーを購入すると、ダンボールに梱包された状態で配送されます。早速ですが、開封しつつ分別について教えてください。

よろしくお願いします。まずはダンボールですね。これは〈資源〉になります。

ハサミやカッターで開封するとダンボールにガムテープが残ると思うのですが、テープが付いたままでも回収はできるんですか?

剥がせるのであれば剥がしていただくのが望ましいですが、多少付いている分には大丈夫です。剥がしたビニールテープは、〈可燃ごみ〉になります。

剥がしたビニールテープって、ビニールだけど可燃ごみになるんですね?

自治体によってはプラスチック資源として出しても大丈夫な場合もありますが、容器包装プラスチック資源という分別を行っている自治体もあって、そこでは魚や肉のトレーのといった容器や包装用のプラスチック以外は出せないので、可燃ごみになります。

ちなみに、たとえば果物など中身が重いものを入れるダンボールには金具がついている場合がありますが、その金具も外した方がいいんですか?

あれは外さずに回収に出して大丈夫ですよ。ダンボール以外でいうと、書類を留めているホチキスなんかも取らなくて大丈夫です。もちろん外してあった方がいいですが、雑誌のような外せない書籍もありますよね。それは「分離機」という異物を取る機械で取り除くことができるので、そのままでも問題ありません。

ただ、ビニールテープがぐるぐるに巻かれたダンボールは、資源ではなく〈可燃ごみ〉で出してください。ダンボールは「溶解処理」といってドロドロに溶かして資源にするんですけど、ビニールテープは溶けないので分離機に貼り付いてしまうんです。

その場合、テープを全部剥がせれば資源に出せるんですか?

そうすれば古紙として出せますけど、大変ですよね(笑)。なので可燃ごみとして出して大丈夫ですよ。

なるほど!では次は、レコードプレーヤーのパッケージの開封をお願いします。

この外箱もダンボールなので、〈資源〉になりますね。説明書はとっておきます。

レコードプレーヤーの本体が箱の中で動かないように、緩衝材として発泡スチロールが使われています。

これは〈プラスチック資源〉になりますね。発泡スチロールを回収に出すときは、できるだけ袋に入れて出してください。収集車はごみを押しつぶして圧縮しながら回収していくのですが、そのときに剥き出しのままだと、粉々に割れて飛んでいっちゃうんですよ。これはごみが周囲に散らかって街を汚してしまうということだし、マイクロプラスチックは問題になるので。

小さい梱包資材についてはいかがでしょうか?

ケーブルやパーツを入れているビニール袋は〈プラスチック資源〉ですね。この(レコードマットの下に敷かれている)丸い板ダンボールのように、箱の形をしていなくても汚れていないダンボールであれば〈資源〉です。この(パーツが入っている)ボール紙の箱の断面にはナミナミがないので、〈雑紙〉です。お菓子の箱やカレンダー、メモ帳なんかと一緒に紙袋にまとめて入れて、古紙回収の日に出せます。

同じ箱でも、ダンボールとは違いますね。

ダンボールは断面が波形になっているんですよ。このナミナミがダンボールの証拠。あと、色が茶色いものはだいたいダンボールですね。

ケーブルをまとめている、ケーブルタイはどうでしょうか?

中に針金が入っているので〈不燃ごみ〉でも出せますが、この程度の大きさであれば〈可燃ごみ〉でも大丈夫です。

金属の針金が入っていても、可燃ごみで出せるんですね。

たとえば、革のベルトの金具や洋服のスナップボタンは燃えないじゃないですか?9割ルールのようなものがあって、可能な限り取り外して不燃ごみに出すのが望ましいですが、外すのが難しいものは可燃ごみで出してもいいんですよ。靴やバッグも、金具がついているけど基本的には可燃ごみです。

今回は含まれていませんが、コードをまとめるのに使われる結束バンド(PPバンド)はどう分別するのでしょうか?

先ほどのテープの話と同じで、容器包装プラスチック資源としてプラスチックを回収をしている地域では、これは容器でも包装でもないので可燃ごみに入れた方がいいです。そういう自治体ではプラ資源として出すと「違反資源」になってしまうので、作業員が手で取り除いています。

ただ、今は法律*によって変わっている段階で、プラスチック製のおもちゃやバケツ、あとはこのレコードプレーヤーのカバーなんかも、自治体によっては容器包装以外の製品をプラスチック資源として回収している自治体もあります。

*令和4年4月1日、環境省により「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行され、多くの自治体でプラスチックの分別回収方法が見直されてきている。

プラスチックは燃やすと有毒ガスのダイオキシンが発生する、と昔は言われていた記憶があるのですが、燃やしても大丈夫なんですね。

昔は不燃ごみとして回収していたんですけど、プラスチックって、ものすごい量じゃないですか?可燃ごみを焼却した後に出てくる灰や、不燃ごみを細かく砕いたものを埋める「最終処分場」がすぐにいっぱいになってしまうんですよ。現在は焼却炉の技術も上がって、ダイオキシンも800°以上で燃やすと出にくいので、可燃ごみとして処理ができるんです。

カートリッジ、ワイヤレスイヤホン、ヘッドホンのパッケージはどう分別する?

では続いて、小さめの製品についても開封しながらパッケージの分別を教えていただきます。まずはカートリッジをお願いします。

カートリッジ?

レコードの音を出すパーツです。先端に細い針がついていて、その針でレコードの溝をなぞると音が再生される仕組みになってます。

へぇー、そうなんだ!では、開けていきますね。

カートリッジはAT-VM95シリーズを開封していく。
カートリッジはAT-VM95シリーズを開封していく。

ちなみに、この製品は先端のパーツを取り外して交換できるようになっているんです。例えば何かにぶつけて針先が折れてしまうと使えなくなってしまうので、キャップが付いています。あと、本体の配線も取り外して交換することができます。

なるほど。まず、パッケージは〈雑紙〉。針先とキャップは先ほどの結束バンドの話と同じで、〈可燃ごみ〉に入れて大丈夫です。本体と配線は〈不燃ごみ〉ですね。

配線といえば、延長コードやスマホの充電コードなんかは可燃ごみとして捨てられていることもありますが、基本的には不燃ごみです。ただ、ケーブルの配線にはレアメタルが入っているので、清掃事務所や自治体によっては持っていくと資源として回収してくれます。あとは家電量販店とか。希少な資源なので、不燃ごみで捨てずにリサイクルしてほしいですね。

では次に、イヤホンをお願いします。

イヤホンは『ATH-TWX7』を開封。
イヤホンは『ATH-TWX7』を開封。

この外側は〈雑紙〉ですね。こっちの茶色い箱はダンボールなので〈資源〉。小さくても断面にナミナミがあればダンボールになります。

この(イヤホンチップの入っている)袋は紙製なので〈雑紙〉ですね。

ちなみに、ワイヤレスイヤホンのように充電したら何回でも使える製品には「リチウムイオン電池」が使われているんですが、地域によっては捨てられないんです。最近はちょっとずつ回収してくれるところも増えてきたけど、一番問題になっていますので、必ず自治体の回収方法にしたがってください。

どのような問題になっているのでしょうか?

小さいからって可燃ごみに入れられてしまうことがあるんですが、気付かずに回収車に入ってしまうと火事になってしまう危険があります。不燃ごみで出す人もいるんですけど、それもダメなんです。不燃ごみって水気がないじゃないですか?だから皮肉なことに、発火するとすぐに燃え広がってしまうんですよ。

そうすると、自治体で回収してもらうか、メーカーで受け付けているならメーカーに回収してもらうか、ということになるんでしょうか?

そうですね。それか、JBRCっていう団体が量販店に回収ボックスを設置しているので、そこに出せば国内のメーカーのものであれば大抵は回収してもらえます。ただ、たとえば海外製のものなどJBRCが提携していないメーカーのものは回収していないので、入れちゃダメなんですよ。だから、買えるけど捨てられないものって結構あるんですよね。

そうなると、ずっと保管するしかないのでしょうか?

それも難しいんですよね。この前も芸人仲間のスギちゃんに「これどうしたらいい?」ってパンパンに膨れたモバイルバッテリーの捨て方を相談されたんですよ。家の中に置いておいても発火して火事になってしまうことがあるので、本当に危ない。だから、できるだけJBRCと提携しているメーカーや、自社で回収しているメーカーから買うのがおすすめですね。

オーディオテクニカでは、内蔵充電式電池を搭載した製品の回収を行っております。
詳しくは、こちらのリンクをご覧ください。

詳細はこちら

*回収はオーディオテクニカ製品のみを対象としております。

最後にヘッドホンの開封、お願いします。

はい、開けていきましょう。

開開封したヘッドホンは『ATH-M50xBT2』。封したヘッドホンは『ATH-M50xBT2』。
開封したヘッドホンは『ATH-M50xBT2』。

外側はダンボールだから〈資源〉で、中に使われているのはモールドですね。

モールド?

たとえばりんごの梱包なんかでよく使われています。自治体によって、〈可燃ごみ〉で回収しているところと、〈古紙〉として回収しているところがあるんですよね。これに関していえば、紙製なので古紙回収の雑紙で出せますが、同じ紙製でもたとえば緑のモールドは着色されていてリサイクルできないので、可燃ごみになったりします。

それと気をつけてほしいのが「紙マーク」。ここにも付いていますね。これは素材の割合の多い方をマークとして書いているので、紙と書かれているからといって、 ”リサイクルできます” という意味じゃないんですよ。

あと、古紙回収は大きさには決まりがある場合があって、自治体によってはハガキよりも小さいものは出せないところもありますね。たとえばシュレッダーにかけた紙とか。これはどうしてかというと、回収した古紙はリサイクル処理をする工場に運ぶためにプレスして固める必要があるんですが、細かいと逃げちゃって固められないんですよ。そういう理由から、札幌とか一部の地域を除いて、シュレッダーにかけられた紙は細かいから古紙ではなく、可燃ごみになります。

出されているごみは拾っていいの?

ではここからは、ごみに関する質問をいくつかお伺いしたいと思います。

はい、どうぞ。

たとえば音楽好きでいうと、レアなレコードや高級な機材が捨てられていたら ”おっ…!” って思うことも正直あると思うんですが、ごみの集積所に出されているものは拾ってもいいものなのでしょうか?

ごみは出されたら自治体のものになるので、拾ってはダメですね。清掃事務所に収集してもらうことを前提に集積所に集められているものなので、捨てられているからといって拾っていいわけではないんです。ペットボトルや空き缶、新聞紙なんかもそう。自治体が回収するために出されているものなので、泥棒になっちゃいます。

音楽好きな清掃員にとっては、レコードが集積所に積み上げられているとたまったもんじゃないみたいですけどね。

壊れていても、いわゆるレア盤や銘機と呼ばれる音響機器だったら価値がありますからね。

それでいうと、ゴミ屋敷の片付けをしている後輩がいるんですけど、とある家で海外製のスピーカーを処分することになったから持ち主の了承をもらって引き取って、フリマサイトに出したら結構いい金額になったそうなんですよ。金属ごみとして出すところだったらしいんですけど、見る人が見ればわかるんですね。

1日にどのくらいの量のごみが回収されているんですか?

何トンなのかは正確にはわからないですが、回収にまわるルートは曜日ごとに決められていて、収集車の満杯まで集めたら清掃工場まで運ぶんです。ルートの途中で満杯になったら一旦工場に戻って、空にしてからまたルートに戻る…っていうのを繰り返します。出社が朝の6時半なんですけど、例えば年末年始や夏場のペットボトルはごみの量が増えるので、その場合は18時くらいまでかかることもあります。

そうなると、往復が増えて大変ですね。

ごみは1家庭につき45リットルのごみ袋で3〜4袋までという決まりがあるんですけどね。

こういうルールって、知らない人も多そう。

それを知ってもらうために、SNSとか本とか、いろんな形で広める活動をしています。

他にも何か知っておくべきことがあれば、ぜひ教えてください。

ごみはあと25年ほどで埋められなくなること、とかですかね。都道府県にはそれぞれ「最終処分場」があって、東京や大阪であれば50年程度は大丈夫だとも言われているんですが、全国で平均するとだいたい25年で満杯になってしまうんです。現在はごみを焼却して、灰にしてから最終処分場で埋め立てていますが、スペースをあけるために昔のごみを掘り返すのには時間とお金がかかるし、新しい堆積場を設けるにもお金がかかります。

その灰を再利用することはできないのでしょうか?

たとえば木炭の灰は、木を燃やしているわけだから何が入っているかわかりますよね。ごみから出る焼却灰の場合は、色々なものが入ってしまっているので、その灰に何が含まれているかわからないし、有害な可能性もあります。

灰を1300°以上で熱して「溶融スラグ」という物質に変えてしまえば、無毒にできて建設資材として使うことができるようになりますが、そうするにはエネルギーを使うし費用もかかるので、全ての灰を処理することはできないんです。あとはごみを焼却してセメントに変えて、灰を出さないようにする技術もありますが、その施設を建てるのにもお金がかかるので簡単にはいきません。ごみを出したその後のことも、考えないといけないですね。

滝沢秀一

1976年生まれ。1998年に西堀亮とお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。2012年より芸人の傍ら、ごみ収集会社で清掃員として勤務。現在、ごみ収集時に見えてくる「社会世相」「食品ロス問題」「環境問題」などを自身の体験をもとにSNSや執筆、講演会などで発信している。著書に『このゴミは収集できません』(白夜書房)、マンガ『ゴミ清掃員の日常』(講談社)、『ごみ育 日本一楽しいごみ分別の本』(太田出版)がある。

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Photos:Soichi Ishida
Words & Edit:May Mochizuki

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